ソファに座った俺の隣に腰掛け、彼女は俺の頬に自分の白くしなやかな手を滑らせる。その手を握りたいけれど、俺の腕は背中側でしっかりと拘束されていてそうすることは叶わない。
俺の頬を優しく撫ぜているその手と、数時間前に俺の腕をしっかりと拘束した手が、全く同じものだなんて。
はあ、と熱い息を大きく吐き出して、先程から俺を襲い続けている欲求を押さえつける。物理的に外から押さえつけたいけれど、手はしっかりと拘束されていてどんなに動かしても外れない。
自分の欲求を訴えかけるように彼女を見つめると、彼女の手は俺の頬から下腹部の方へ伸びていった。ふっくらと膨らんだ膀胱の辺りをまるで羽が撫ぜているかのような力加減で触れられ、思わず全身に寒気が走った。口からは喘ぎ声にも似た声が勝手に漏れ出してしまう。
「はぁっ……、あっ……んぁ、はぁっ……」
「凄いぱんぱんだね。ここに何が入っているの?」
「あ、あぁ……お、お嬢様っ……」
彼女の指先に少し力が込められる。その力で押し出されるように溢れた雫が下着がじわりと濡れた。何とか耐えようとして、体を捩って息を荒げる。それでも雫は溢れ続け、じわり、じわりと徐々に下着をしっかりと濡らしていく。
「あ、あっ……、お嬢様っ……もっ、俺……あぁ、あっ……」
彼女の手は服の上からするすると俺の腹のふくらみを撫ぜ続ける。じわじわと溢れる雫は段々とその間隔が短くなっていく。じゅ、じゅうぅ、じゅじゅ、と下着が更に濡れていく。体の欲求を押さえつけようとして、まるで空気を求める金魚のようにぱくぱくと口が勝手に動く。少しでも楽になりたくて、腕を力いっぱい動かすけれど、しっかりと拘束されていてただ手首が痛むだけだった。
彼女の触れている部分に取った水分が全て溜め込まれている。口から体内に取り込まれた水分は体を巡って、膀胱に何と言う名前で溜め込まれているのか。彼女はきっとその名称を俺に言わせたいのだ。大人、しかも大の男が口にすることは無い言葉を。
「どうしたの? ちゃんと言わないとわからないよ?」
「ぁあっ、あ……、お嬢様……、も、お願いですっ……」
「何のお願い? 私をどうしたらいい?」
「……ぉ、おしっこがっ……! おしっこが……我慢、できないですっ……」
搾り出すように発した言葉はひどく震えていた。幼子のような言葉を使って尿意を訴える。この歳になって子供のような言葉を発することに羞恥を覚えないわけが無く、顔がかあっと熱くなるのを感じた。
「おしっこしたいんだ。じゃあ、私はどうしたら良い?」
彼女の手がまた俺の腹部をなぞる。その瞬間、また下着がじわりと湿る。もう下着はこれ以上ないほどに濡れていて、ズボンにまで染み出していても不思議ではない。
彼女にどうして欲しいのか。彼女の言葉によって真っ先に頭を過ぎった映像に、思わず言葉を飲み込んだ。
真っ先に望むのは腕の拘束を外してもらうことのはずなのに。腕さえ自由になれば、これほどまで切羽詰っていたとしても、トイレに駆け込んで無事に用を足すことも出来るはずだ。
それなのに、口から飛び出そうとする言葉は全然違うものだった。
お腹を撫ぜながら、彼女の眼は俺の眼を覗き込む。ビー玉のような眼は俺の全てを見透かしているようで、ほんの少しだけ恐怖を感じてしまう。
きっと彼女は全てを見透かしているに違いない。俺が言いよどんでいる言葉も、ズボンで隠れている下着が既にしっかりと濡れている事も、もう数分も耐えることが出来ないほど我慢の限界にいることも。
口が空気を求めてぱくぱくと勝手に動く。吐き出したいという欲求で体の震えが止まらない。吐き出したいのは喉につっかえた言葉か、彼女の触れている腹部に溜め込まれたものか。
「お嬢様っ……」
苦しい。苦しくて仕方ない。おしっこが出したい。喉につっかえた言葉が出したい。全てを開放してしまいたい。
「頑張って我慢したご褒美をあげる。私が全部叶えてあげる」
「ぁっ、本当……です、かっ……?」
彼女はこくりと頷き、そのまま俺の喉に口付けた。
「言ってごらん? 受け止めてあげる」
「あぁ……、あっ、お嬢様っ……」
彼女の口付けた部分からじんわりと彼女の熱が伝わってくる。もう、我慢できなかった。
「ぉ……おしっこをさせてくださいっ……。もっ、本当にっ……我慢できません……」
言葉を発したと同時に涙が零れた。色々な欲求が混ざり合って、もうどうしたらいいのか自分でもわからない。体も頭も心も、全てが苦しい。俺の全てを受け止めて楽にしてほしい。
「泣かないで。よく頑張ったね」
目尻にそっと口付けられ、零れた涙を彼女の唇が受け止める。
「トイレまで歩ける?」
「だめ、もっ、おしっこ、出る……!」
渋っていた言葉がするすると口から出てくる。言動だけではなく、今の俺は全てが幼子のようで、泣きじゃくりながらふるふると首を振って否定を示していた。我慢の限界で膝ががくがくと震えていて、もう立ち上がることすら出来そうになかった。手が縛られてさえいなければ両手で股間を握り締めて、それこそ子供のおしっこ我慢のポーズをとっていたに違いない。
「仕方ないなあ。それじゃあ、これにしようか」
彼女の手が引き寄せたのはゴミ箱だった。中には何も入っていないようで、ゴミ箱は軽い音を立てて俺の足元に置かれる。ゴミ箱を置いた彼女の手はそのまま俺のズボンに伸び、ボタンを外してチャックを下ろした。開いたチャックの間から覗いた下着はしっかりと濡れて色を変えている。
「少し漏らしちゃったね。後でちゃんと着替えないとね」
白い手は俺の下着を引き下げ、性器を露出させる。外気に晒させた瞬間、先端からじわりじわりと雫が零れだす。雫は性器を伝い、彼女の手を汚す。
「す、みませ……、お嬢様っ……!」
「いっぱい我慢したもんね」
彼女の手が性器の先をゴミ箱の中に向ける。じわりじわりと零れる雫がゴミ箱の中に落ちていく。涙で濡れた視界を彼女に向けると、彼女はまた俺の目尻にそっと口付けて涙を拭った。
「もう出ちゃう?」
「あぁ、あっ……ぉ、おじょうさまっ……! も、出る……おしっこ、ああぁっ、あっ……!」
うわ言のように言葉が飛び出すとほぼ同時に、性器の先端からおしっこが勢いよく溢れ出した。じゅううぅううぅと激しい水流の音が部屋に響いた後に、ばたばたばたと水流がゴミ箱の底を叩く音がした。
「あぁっ……、あっ、はぁ、あっ……あぁ……」
目を閉じて体を駆け抜ける快感に純粋に酔いしれる。体から力が抜けて、ソファに浅く座った形で背もたれに体を預ける。排泄がこんなに気持ち良いとは知らなかった。感じたことの無い開放感にため息が勝手に漏れた。
涙が溜まった視界の先を自分の股間に向ける。じょぼじょぼとおしっこを垂れ流す俺の性器を彼女の白い手が支えている。変態じみている光景だけれど、そんなことまでもが俺の快感に繋がっている。
彼女の視線は俺の放物線の先に向けられている。俺からは見えないゴミ箱の中はどれほどのおしっこが溜まっているのだろうか。じょぼじょぼと放出され続けるおしっこはまだ収まる様子を見せない。どれだけの量が俺の腹部には溜まっていたのか。
「気持ち良い?」
彼女は視線をこちらに向け、そう訊ねた。言葉も無く頷いて返事をすると、苦痛と羞恥と快感とが混ざった涙が頬を伝っていった。
長い時間をかけた後、部屋はようやく静かになった。彼女の手が放尿を終えた性器をぐっしょりと濡れた下着の中にしまった。
「凄い、いっぱい出たね」
ゴミ箱の中を覗き込みながら彼女は言った。荒い息を整えながら、ソファの背もたれに預けていた体を起こして同じように俺も覗き込む。小さなゴミ箱とはいえ、おしっこはゴミ箱の八割程まで溜まっていた。
彼女の手がするりと俺の下腹部を撫ぜる。先程までふっくらとしていた部分は平らになっている。想像できないが、あれだけの量がつい数分前まで俺の膀胱に溜め込まれていたのだ。
「その、お嬢様……」
「どうしたの?」
彼女は俺の下腹部からするすると手を進めていき、下着の上から俺の性器をそっと撫ぜた。性器を包む下着はぐっしょりと湿っていて気持ちが悪い。
「下着が、気持ち悪い……です」
「それじゃあ着替えないとね」
「脱がせてください。全て脱がせて、着替えさせてください」
「仕方ないなあ」
彼女はそう言いながら、溜まった涙を救うように俺の目尻に口付けた。
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初出:2013年9月5日(pixiv) 掲載:2022年7月30日