観覧車にて

 既に日も傾きかけている中、目の前には人の列が続いている。並びだした頃からすると、随分前に進んだとは思うけれど。
 隣の彼女は鞄からミネラルウォーターの入ったペットボトルを取り出して口をつけた。三分の一ほど飲んでから俺に差し出す。俺も喉は渇いていたけれど、今水分を取ることにはためらいを感じてしまう。手を伸ばそうかどうしようか悩んでいると、彼女は俺の手をとってペットボトルを握らせた。
「飲まないと体壊すよ?」
「いや、でも……」
「大丈夫、多分後三十分くらいだから。ね?」
 正直に言うならば、その三十分すらも辛くてしょうがない。出来ることならば今すぐこの列を抜け出して、途中で見つけたトイレに駆け込みたい。何時間も我慢を続けた膀胱はずきずきと痛んでいて、今にも溜まった水分を吐き出そうとしている。こうしてじっと立っていることも辛くて、意識していないと足踏みをしたり、手で性器をぎゅうと握り締めてしまいそうだった。

 ペットボトルを握り締めたまま、飲むか飲まないかを悩んでいると列がまた前に進んだ。
「ほら、また進んだ。もう少しだよ」
 もう少しと言っても、この列のたどり着く先は決してトイレでは無い。何がもう少しなのか。
 やけになって、ペットボトルに口をつける。これ以上トイレに行きたくなるのは避けたかったので、昼あたりから水分は取らないようにしていたので、喉は非常に乾いていた。水分は自然と体に吸い込まれていく。時間がたっていたのでミネラルウォーターの冷たさは失われていたけれど、凄く美味しく感じた。気付くと、ペットボトルの中身は空っぽになっていた。
「喉渇いてた? もう一本買ってこようか?」
 空のペットボトルを鞄にしまいながら、彼女は言う。
「いや、いい……」
「そう? 喉渇いたら言ってね」
 また列が進む。ぞくりと体に悪寒が走った。絶対に今、水分を取るべきではなかった。じっとしているとそれだけで辛くて、体重を掛けなおすふりをして体を揺らす。今すぐトイレに駆け込みたい。もうトイレではなくてもいい。人目の無いところだったらもう立ちションでもいい。何でもいいからすぐに楽になりたい。
 じわじわと列が進む。気付くと俺達の前にいるのは二、三組。あと少し。あと少しとはいえ、その先に待つのは俺が心の底から望んでいるトイレではない。
「もうすぐだね。楽しみ」
 彼女はパンフレットを見ながらニコニコしている。横からそっと覗き見ると、真ん中に大きく描かれている観覧車が目に入る。そっと視線を上げると、パンフレットと同じものがそこにも存在していた。この遊園地の目玉とも言える観覧車に彼女は乗りたかったらしい。乗るだけなら幾らでも付き合うけれど、あろうことか観覧車に行くまでトイレに行くのは禁止だと言い出した。
 また一組が観覧車に乗り込んでいく。俺たちの前には後一組。もう少し。あとほんのもう少し。でも、もう少し耐えたからといってどうなるというのか。

 ぶるっとまた体に悪寒が走る。その瞬間、じわりと下着に雫が溢れ出した。思わず体が強張る。必死に耐えているはずなのにじわ、じわと先端から雫が零れ続けてしまう。やばい、本当にもう限界だ。ポケットに手を入れて、その手で性器の先端を外から押さえつける。もうこうしていないと本当に漏れてしまう。はあ、と熱い息を吐き出して、また体を少し揺らす。本当に辛くて、足が静かに震えていた。
 前の一組が観覧車に乗り込む。前には人がいなくなり、次は俺たちが乗り込む番になる。はやく、はやくしてくれ。もう何でもいいから、早くして欲しい。観覧車に乗り込んだからといってどうにかなるわけではないけれど、とにかく人目を避けたかった。このまま、じっと立ち続けているのは辛すぎる。

「お待たせしましたー! お次の方、どうぞー!」
 明るい声にはっとして顔を上げる。驚いて、またじゅわ、と下着が濡れた。とうとう俺たちの番になったようで、ゴンドラの扉が開いていた。楽しそうな彼女と一緒にゴンドラに乗り込むと、係りの人が笑顔で扉を閉めてくれた。彼女と二人だけの空間になった瞬間、俺はもう耐え切れなかった。また性器の先からじわりと雫が零れた瞬間、俺は両手で股間を握り締めてしまった。もうじっとしていることも辛く、意識しなくても腰が揺れてしまう。
「どうしたの? そんな恥ずかしい格好して」
「ごめん、もう我慢できない……!」
「ここゴンドラだよ?」
「でも、もう……おしっこ、漏れそうで……!」
「んー、そうだなあ……」
 自然と息が荒くなって、両手で股間を揉んでしまう。そうしていても、またじゅわ、とおしっこが漏れ出して下着をぬらしてしまう。下着はもう股間の部分がしっかりと濡れていて、本当に、もう我慢できない。我慢のしすぎてお腹が痛い。辛くて、情けないことに泣き出しそうになっていた。

 ゴンドラの席に座ることなく立ち尽くしたままの俺の前で、彼女は席に座り、鞄に手を入れていた。
「お願い、おしっこ、も、本当に……!」
「それじゃあ、どっちが良い?」
 彼女は両手をそれぞれ掲げて俺の方を見た。その顔はにっこりと微笑んでいる。
 右手には先程俺と彼女で飲み干したペットボトル。そして左手には折りたたまれた白い何かを持っていた。折りたたまれてはいたものの、それが何か、俺は一瞬で理解する。血の気が引いた気がした。
「ペットボトルにおしっこするか、おむつに履き替えるか。どっちが良い?」
「ちょ、ちょっと待って、おむつって……」
「だって我慢できないんでしょ?」
「そ、そうだけど、でも……!」
「おむつの方がいいと私は思うけどな。ペットボトルじゃ足りないかもしれないでしょ?」
 ごくりと唾を飲む。究極の二択。彼女がどうしておむつなんか持っているのか、そんなことを考えている場合ではないと俺の体が言っている。少しでも早くおしっこがしたい。出したい。楽になりたい。
 またじわりと下着が濡れる。必死に股間を握りしめ、足踏みを繰り返して必死に我慢を繰り返す。もう一度唾を飲み込んで、俺は震える声で言った。

「お、おむつ……」
「おむつで良いの?」
「良い……。もう、出ちゃいそうだから、早く……!」
「じゃあ、ズボンとパンツ脱げる?」
 腰の引けた体勢で股間を握り締めたまま、俺はもう動けなかった。泣き出しそうになりながら首を振ると、彼女はそっと俺のベルトに手をかけた。ベルトを緩められ、チャックを下ろされて、ズボンを少し脱がされる。
「あーあ、もういっぱい漏らしちゃったね」
 彼女の言葉に羞恥を感じる余裕すらもう無かった。早く出したい。何でもいいから楽になりたかった。
「少しだけ手、離せる? じゃないと脱がせられないよ」
「だ、だめ、離すと出る……」
「少しだけだから、ね」
 宥められる様に頭を撫ぜられる。はあ、はあと息を荒くしながら、震える手をゆっくりと離す。その瞬間、一気に溢れそうになるおしっこを何とか押さえ込むと、全身にぞくぞくとした寒気が走った。
 一気にズボンと下着が彼女の手によって下ろされ、性器が外気に晒される。ゴンドラという個室の中とは言え、もしかしたら順番待ちの行列から見えているかもしれない。
「まだ駄目だよ。これ、履くタイプだから全部脱がないと履けないからね」
「は、はやく……、出る、出ちゃうから……」
 ズボンと下着を一緒に足元まで下ろされて、彼女が俺の右足を持ち上げてズボンから抜いていく。その瞬間またおしっこが漏れそうになり、思わず両手で性器を直接押さえ込む。荒い息が収まらない。大きく息を吐き出して何とか尿意に耐える。そうしている間に反対の足もズボンと下着から抜かれて、俺は下半身裸になる。ゴンドラの窓はぎりぎり腰の位置辺りまでなので見えていないとは思うけれど、もしかしたら上のゴンドラにいる人が覗き込めば見えてしまうかもしれない。

「ほら、あともう少し。頑張って」
 彼女は折りたたんでいたおむつを広げると、先程のように俺に片足ずつ履かせていく。両足が通ったところで、するすると膝の辺りまでおむつを持ち上げた。
「手、離して? 大丈夫、もう出しても大丈夫だから」
 べそをかいた顔でそっと彼女を見つめると、また頭を撫ぜられる。そろそろと手を離すと、じゅわっと一瞬おしっこが溢れ出す。まだ駄目だと必死の思いで溢れ出るおしっこを止めた。もう足は一目見てわかるほど、がくがくと震えていた。
 彼女の手がおむつを持ち上げていき、かさかさという紙の擦れる音と共に俺の股間は尻の方まですっぽりとおむつに包まれた。
「よく我慢したね。もう大丈夫だよ」
 彼女の手に促されるがまま、ゆっくりとゴンドラの椅子に腰を降ろしていく。裸の太ももが椅子に触れたことで背中にぞくっと寒気が走った。その瞬間、じゅわっとおしっこが溢れ出した。
「あ、ああっ、出る、出ちゃう……」
「良いよ。おしっこして良いよ」
「ああ、おしっこっ、あぁあ……!」
 溢れ出したおしっこは止まらず、勢いを増しておむつの中に叩きつけられていく。隣に座った彼女の手を握り締めて、求め続けた開放感に酔いしれた。本当に気持ちが良い。おしっこをするだけでこんなにも快感を得たのは初めてかもしれない。
 我慢を続けたおしっこは凄い量が溜め込まれていたようで、放尿は中々終わらない。じゅう、じゅうぅとおしっこが排出され、体を開放感という名の快感が駆け巡る。いつの間にかうわ言のように声が漏れ出していた。
「はあぁあぁ……」
「気持ち良い?」
「ん、気持ち良い……。おしっこ、いっぱい出てる……」
「凄いね。隣にいても聞こえるよ」
 しゅうぅうぅぅぅ……とおしっこの出る音は静かなゴンドラの中ではよく聞こえていた。羞恥に顔を伏せると、隣にいる彼女がまた頭を撫ぜる。あからさまな子ども扱いだったけれど、今は素直に甘えてしまう。顔を伏せたまま彼女の柔らかな胸に体を寄せると、彼女は背中を抱くように手を回した。
「いっぱい我慢してたね。ペットボトルだったら溢れてたかも」
 たっぷり一分以上放出し続け、おしっこの勢いはようやく収まり始めた。ちょろちょろと勢いのなくなったおしっこはすぐに止まり、最後に数度雫を吐き出して、我慢に我慢を重ねたおしっこは終わった。

 荒くなった息を落ち着かせながら、そっと自分の股間を見る。股間を包み込む白いおむつは外から見てもうっすらと黄色く染まっているように見えた。体を少し動かすと、濡れたおむつがぐちゅぐちゅと音を立てて、気持ち悪さを感じた。
「終わった?」
「ん、終わった……」
「どうしよう、下着に履き替える? いっぱいお漏らししちゃったみたいだけど」
 彼女は足元に脱ぎ散らかされた俺の下着を持ち上げて両手で広げた。灰色のボクサーブリーフは中心の辺りが真っ黒に濡れている。反射的に彼女の手からひったくるように下着を取り返した。
「漏らしてない、よ……」
「そんなに濡れてるのに?」
「ち、ちびっただけ! もう、苛めないでよ……」
「ごめんごめん。だって反応が可愛いから」
 からかわれているものの、彼女の言うことは正論で、この下着をもう一度履くのは勇気がいる。かといってぐちょぐちょに濡れたおむつをこのままずっと履き続けているのも嫌だ。
「観覧車降りたら帰る予定だし、遊園地でたらどこかで下着買おうか。それまではそのおむつ履いておくか、嫌だったらズボンだけ履くか……」
「おむつで我慢、します……」
「おむつだからってまたお漏らししちゃだめだよ? さっきあれだけ出してたら、多分溢れちゃうから」
「もう漏らさないよ! そもそも誰のせいだと……!」
「『わかった。でも人前で漏らしても嫌いにならないで』って言ったのは誰?」
 それを言われてしまうと、俺はもうなんとも言えなかった。そう言ったのは事実だったし、正直、気持ちよかったから。おしっこがあんなに気持ちよかったのは初めてかもしれない。
「またしようね」
 俺には頷く以外の返事をすることは出来なかった。

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初出:2013年8月16日(pixiv) 掲載:2022年7月30日

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成人済の時々物書きです。 スカ、女攻め萌え。BLよりはNLやGLが好きです。
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