がちゃがちゃと鞄が背中で揺れる。はやくはやくはやくっ……! 慣れた道を早歩きで進む。いつもなら家まであっという間なのに、今日はとても長く感じた。
嫌な感覚がじんわりと広がって、体がぶるっと震えた。お腹がずっしり重くて、足を動かす度に体の中でたぷんと揺れるのがわかる。
ああ、やばい、おしっこしたいっ、トイレ、トイレ、トイレっ……! こうなるなら、学校を出る前にちゃんと済ませてこれば良かった。帰り道を急ぎながら、後悔ばかりが浮かんでいた。
角を曲がると、やっと家が見えた。ゴールまであと少しだと安心した瞬間、体に悪寒がぶわっと広がった。尿意が一気に大きくなって、おしっこが出口に向かって押し寄せてくる。
思わず背筋が伸びた。立ち止まって、両足をぴたりと寄せる。その場でくねくね身体を捩りながら、周りを見る。運良く誰もいなかったので、ズボンの上から手でぎゅううっと出口を押さえた。
ああ、だめ、おしっこ、おしっこしたいっ……! 強い波が押し寄せて、小さな子供みたいに手で押さえていないと今にも漏らしてしまいそうだった。
そうやって道の真ん中で必死に我慢を続けて、波が少し落ち着いた瞬間、最後の気力を振り絞って足を動かした。手は離せなくて、ぎゅうぎゅうズボンの前を押さえながら、家に向かって必死に走る。すぐそこに見えているのに、とても長い距離のように感じた。
玄関に辿り着いて、扉を思いっきり引っ張る。鍵が開いていたので、すぐに家に入ることができた。
「……ただいまっ!」
もう手は離せない。ぎゅうぎゅう押さえたまま、足だけで靴を脱ぐ。トイレに行けると思ったからか、気が緩んでしまって、全身に鳥肌が広がった。あ、あっ、やばいっ、でる、トイレ、おしっこっ!!
奥からお母さんの声が聞こえたけれど、返事は出来なかった。頭の中は真っ白で、おしっこのことしか考えられない。
ズボンの前を握ったまま、速足にトイレに向かう。電気のスイッチを押す時間すら勿体なかった。背中に鞄を背負ったまま、扉を引っ張り開けて中へ飛び込んだ。
目の前には待ち望んだトイレがある。それを見た瞬間、出口がひくひく疼いて、じゅわっとおしっこが広がった。あ、あ、あ、だめ、おしっこ、おしっこでる、おしっこっ、おしっこっ……!
片手は出口を押さえたまま、反対の手でチャックを下ろす。足踏みが止められない。ゆらゆら体が揺れる。だめ、でる、でるでるでる、おしっこでる、あ、あっ……!
また、じゅわあっと熱いおしっこが噴き出す。泣きそうになりながら、震える手で何とか先端を引っ張り出して、便器へ向けた。
「っ、あ……!」
外の空気に触れた瞬間、出口はぷくりと膨らんで、ぶじゅうう、と熱いおしっこが噴き出した。
あ、あ、良かった、ま、間に合ったぁ……。おもらし寸前まで我慢したおしっこはとても気持ち良くて、背中がぞくぞくした。安心したのと気持ち良いのとで頭が真っ白になって、大きな溜息が漏れた。
おしっこは便器の中の水溜まりへ落ちて、じょぼじょぼと大きな音を立てていた。自分でもびっくりするくらい溜まっていたみたいで、なかなか終わらない。
薄暗いトイレの中で水音を聞きながら、鞄を下ろしていないことに気が付いた。そう言えば玄関の鍵も掛けてないし、靴も揃えてない。お母さんにまた怒られるだろうなあと思いながら、おしっこはまだじゅうじゅうと出続けていて、もう一度溜息を吐いた。
たっぷり時間を掛けて、最後の一滴まで出しつくすと、体は驚くくらい軽くなった。ああ、すっきりした。気持ち良かった。余韻で体がぶるりと震える。はー、と長い息を吐いた。
トイレから出ると、お母さんは玄関にいた。案の定、ちょっと怒った顔をしていた。
「鍵、開けっ放し」
「……ごめん」
「靴も散らかしたまま。いい加減トイレくらい学校で済ませてきなさい。間に合わなかったらどうするの」
「う、うるさいなあっ! 間に合ってるから良いだろ!」
いつもの小言を聞きながら自分の部屋に向かう。体はすっきり爽快だけれど、さっきのお母さんの言葉に心臓がどきどきしていた。
確かに今日は少し危なかったけれど、ちゃんと間に合ったんだから良いじゃないか。
もう小さい子供とは違う。おもらしなんてするはずないだろう。そんなに心配しなくたって全然大丈夫だ。
+++
早歩きでひたすら進む。肩から下げた鞄が重い。ずれてきた紐を元の位置に戻すために、担ぎ直す。顔を上げると目の前の信号が点滅していて、咄嗟に急いでみたけれど間に合わなかった。
左右に走り抜ける車を見ながら、体が揺れてしまう。両足をさり気なく擦り合わせて、小さく息を吐いた。
服の内側で悪寒が広がる。嫌な感覚が纏わりついて、落ち着かない。うう、と情けなく漏れた声は走る車の音に紛れて消えた。
はやく、はやく、はやく。赤信号を見つめながら、さり気なくおへそのあたりに触れる。そこはぽこりと膨らんでいて、ずっしりと重くなっていた。
トイレ、済ませておけば良かった。そんな後悔をしながらも、でも仕方なかったと言い訳を重ねてしまう。
ホームルーム終了後、友達と話しながら校門に向かったので、トイレを言い出すタイミングが無かった。友達と話している間はまだ平気だったけれど、一人になった瞬間、尿意は一気に大きくなって、体が震えた。
学校を出るときはちょっと催していたくらいなのに、まさかこんなに行きたくなるとは思わなかった。こんなことなら、友達に待ってもらってでもトイレを済ませれば良かった。後悔先に立たずの意味を今、嫌になる程に実感していた。
はやく、はやく、はやく。トイレのことを考えながら落ち着きなく体を揺らしていると、信号はやっと色を変える。慌てて足を動かして、前へ進んだ。地面を踏みしめる毎に、お腹の中で重たい塊がたぷんと揺れた。
早歩きなのに、息が上がってくる。全身が熱くて、額に汗が伝った。あの角を曲がれば家はすぐそこだ。もう少し、あとちょっと、我慢、我慢。もうちょっとだけ。そう思った瞬間、体がぶるりと震えた。
はち切れそうな程に膨らんだお腹が中身を押し出そうと縮む。ぞくぞくと悪寒が全身に纏わりついて、思わず足が止まった。
あ、あ、あ、だめ、おしっこっ……! 膝ががくがくする。子供のように前を押さえたくなるのをぐっと堪えて、靴の中で爪先に力を込める。全身に力が籠って、ぶるぶると小さく震えていた。
そうやって必死に我慢しているのに、衝動は全然収まらない。熱いおしっこがじわじわと出口へ向かって満たされていくのがわかった。
「あ、ぁっ……!」
思わず声が漏れる。じゅわっと出口のあたりに熱さが広がって、咄嗟に手でズボンの前を握った。ぎゅうぎゅう出口を押さえながら、その場で固まる。ちょっとでも身動きするとその瞬間に出てしまいそうで、呼吸をすることしかできない。
視線だけで辺りを見回す。誰もいない。それなら、その辺でしてしまおうかと一瞬だけ考えてしまった。
けれど、周りには家が並んでいて、隠れられる場所なんてない。もし、道端で立ちションしているところを近所の誰かに見られたら。考えるだけで全身が熱くなった。
いっそ羞恥なんて振り切って生理現象に身を任せられたら楽だったのに、僅かに残った理性が待ったを掛けてしまって、体は動いてくれなかった。
やばい、漏れる、むり、もう、でそう、トイレトイレトイレ……おしっこっ! ぶわっと出口が再び熱くなるのを感じて、無理やり足を動かした。このままじっとしていると、本当に漏らしてしまうと思った。
歩きながら、押さえる手を静かに離してみるけれど、すぐにおしっこが押し寄せて、また握った。結局、ズボンの前をぎゅうぎゅうと押さえたまま、家へと向かって必死に進んだ。
は、は、と千切れた呼吸を繰り返す。上手く息が吸えなくて苦しい。じわりと涙が浮かぶ。叫び出したいくらい、おしっこでいっぱいだった。他の事なんて欠片も考えられなかった。角を曲がって、自宅が見えた瞬間、大きな波が体を走り抜けた。
あ、あ、だめ、でる、おしっこ、おしっこっ……! しゃがみたいのを頑張って堪えて、震える足をとにかく動かすことだけに集中する。右、左、右、と交互に地面を踏む度に、お腹の中で重たい水の塊がずしんと揺れる。
で、る、でるでるでる、ああ、おしっこ、おしっこ、としっこっ……! 手は落ち着きなく出口を揉んで、激しい尿意を誤魔化す。そうやって必死に我慢しながら、何とか玄関まで辿り着いた。
片手で出口を押さえたまま、反対の手で鞄の中から鍵を取り出す。その僅かな時間すらじっとしていられず、もじもじと足踏みを繰り返していた。
中へ飛び込み、まず重い鞄を投げ出した。口からはただ苦しい息が漏れ出るだけだった。片手はズボンの前からもう離せない。
足だけで靴を脱ぎ捨てて、そのまま廊下をばたばたと進んだ。あとちょっと、もう少し、もうむり、おしっこでる、もれる、おしっこ、おしっこ、おしっこっ……!
ぶわっと体に大きな波が走り抜ける。お腹がきゅうきゅう疼くのを、最後の気力を振り絞って必死に堪えた。だめ、むり、もう出る、本当に出る。短い呼吸を繰り返しながら、何とかトイレへと辿り着いた。思いっきり扉を引っ張ったけれど、手には固い感触がした。
「あら、帰ってきたの? おかえりなさい」
開くはずの扉は少し揺れただけ。行く手を塞ぐ扉に突撃しそうになって、慌てて踏み止まった。中からは母さんののんびりした声が聞こえた。
今すぐにトイレが使えると思っていたのに、まさかの延長を強いられて、ぶるりと体が震えた。あ、あ、あ、ああっ……! 体が震える。おしっこが暴れる。押さえているのに、出口が疼いて、熱い雫が溢れ出す。じゅわあっと熱さが広がって、その感触に鳥肌が立った
「か、母さんっ、トイレまだっ!?」
「もう出るわよ。なに、また我慢してるの?」
母さんの声は聞こえていたけれど、何の返事も出来なかった。
で、る。でるでるでる。おしっこ、おしっこ、もうむり、でる、おしっこ、おしっこっ……! じっとしていられず、その場でばたばたと足踏みを繰り返す。
本当に限界寸前で、おしっこがしたくてたまらない。一刻でも早く出せるように、もぞもぞとズボンのボタンを外していると、中から水の流れる音が聞こえた。
「いい加減、学校で済ませてきなさいな」
扉が開いて、母さんが小言を言いながら出てくる。返事をする余裕なんてなかった。その隣を通り抜けて、震える足で中へと飛び込んだ。
片手でズボンと下着を一緒に引きずりおろし、反対の手を中へ突っ込む。押さえを失った出口はじゅ、じゅうと熱い雫を既に零していて、震える手でその先を便器へ向けた。
「っ、あ、あぁっ……!」
じゅううう、と大きな水音が響き渡り、大きく体が震えた。露わになった出口からは、勢いよくおしっこが噴き出して、便器の中へ注がれる。じょぼぼぼ、と煩い程の水音が響いて、胸の底から熱い息が漏れた。
あ、ああ、良かった、間に合った。危なかった……。安堵と開放感にぽかりと口が開いてしまう。頭が真っ白になって、何も考えられなかった。ただ、気持ち良くて、薄く目を閉じていた。
我慢に我慢を重ねたおしっこはとても気持ちが良くて、体の芯がぞくぞくした。焼けるように熱いおしっこがどんどん体から排出されて、体温が下がっていく。苦しかった呼吸も落ち着いて、肺いっぱいに空気を吸い込んでは大きく吐き出した。
我慢しすぎたのか、張り詰めたお腹はなかなかすっきりしない。勢いこそ落ち着いたものの、しゅうしゅうと出続ける。自分でも呆れるくらいの時間を掛けて、何とかおしっこを出し切ることが出来た。
最後の一滴がぽたりと落ちる。荒れ狂う波は消え去って、全身が爽快感に包まれていた。余韻に酔って、少しの間ぼんやりしていたけれど、我に返って水を流す。勢いの良い水流を見ながら服装を正した。
濡れた下着が肌に張り付いて、気持ち悪さに身震いする。ちょっとだけ、間に合わなかったみたいだ。天にも昇りそうな心地良さから一転、沈み込むものを感じながら、もしかしてとズボンに触れる。そちらは濡れてなくて、少し安心した。
トイレから出ると、母さんが奥から声を掛けた。
「ちゃんと間に合った?」
「ま、間に合った! 当たり前だろ!」
下着を濡らしたことはとても言えなかった。お風呂の時にこっそり洗おうと思いながら、玄関に鞄を取りに戻る。
「お風呂の準備できてるから、入りたかったら先に入って良いわよ」
その言葉に顔が熱くなる。自室へ鞄を持って行ってから、こっそり廊下に戻る。今日は体育があったから汗をかいた。だから、はやくお風呂に入りたいだけだ。言い訳をしながら、静かにお風呂へと向かった。
+++
いつもの交差点は工事中で、回り道を強いられた。自転車の進行方向を替えながら、背中に汗が伝うのを感じた。
いつもの道なら家まであっという間な上に、途中にコンビニもあるのに。あまり通ったことのない方向へ進みながら、不安が込み上げる。サドルの上で少しお尻が揺れた。
こちらの道でも流石にコンビニくらいあるだろうと、僅かな希望に期待する。下腹部はずっしり重くなっていて、嫌な疼きを感じていた。
こんなことなら、トイレに行っておくんだった。後悔したところで、ここから学校へ引き返す方が時間が掛かる。今は家に向かって進むしかない。
最後の授業前に行っておくべきだったのに、後回しにしたのが間違いだった。放課後はトイレ掃除が始まるので、しばらく使えなくなると知っていたはずなのに。
授業が終わる頃にはそれなりに催していて、そわそわしながらトイレに向かったけれど、案の定、掃除は始まっていた。使わせてくれと言うことはできず、仕方なくそのまま駐輪場に向かった。
それでも家まで我慢すれば良いと思っていた。それが厳しくても、途中のコンビニに寄れば良い。自転車で前に進みながら、下腹部の重みはどんどん増していて、後悔が頭の中で渦巻いていた。
お腹の中で重い塊がたぷんと揺れる。下腹部は大きく膨らんでいて、苦しいくらいだ。は、は、と呼吸を繰り返しながらペダルを漕いでいく。慣れない道では速度が出しづらくて、気持ちだけが前へと進んでいく。
トイレ、トイレいきたい、トイレ。さっきから頭の中にはトイレの事しかない。ぞくぞくと悪寒が体に広がる。手が汗でびっしょりと濡れていた。とにかく前に進むしかないと思いながらも、トイレを求めて辺りを見回してしまう。
そわそわしながら暫く走って、途中で曲がる。次の角をもう一度曲がれば、いつも通る道に出られるだろう。そんなに速度を出していないのに、心臓の鼓動は速くなっていて、ハンドルを握る手は小さく震えていた。
ああ、やばい、トイレ行きたい、おしっこしたいっ……! お腹ははち切れそうな程に膨らんでいて、ずきずきと痛みすら感じる。時折、段差で自転車が大きく揺れると、重たい塊も体の内側で大きく跳ねる。その衝撃に、小さく声が漏れてしまう。
少し先に見える信号は点滅していた。このまま突っ切ってしまおうと少し速度を上げたけれど、ぎりぎり間に合わず、仕方なくブレーキを掛けた。
籠に乗せた鞄を見つめたまま、両足がもじもじと動く。サドルの上でお尻を動かして、嫌な衝動を誤魔化す。ああ、トイレ、おしっこっ……! 頭の中には他の事なんて欠片もない。
辺りを見回したけれど、トイレが借りられそうな店は無い。信号はまだ赤で、前には進めない。前に進んでいる間は誤魔化されていた感覚が、じっとしていると膨らんでいく。
ああ、おしっこしたい、トイレ、おしっこっ……! 足が震える。出口がひくひく疼く。これ以上ない程に膨らんだ膀胱が、中身を出そうと暴れている。鈍くて重い嫌な感触が腰のあたりに纏わりつく。
ああ、と吐き出す息に声が混じる。顔を上げると、信号がちょうど変わったところだった。震える足で何とかペダルを踏んで、再び走り出した。
全身が熱くて、吹き付ける風が体を冷やしていく。その温度差にぶるりと体が震えて、お腹がきゅうと疼く。熱い液体が押し出されて、出口に向かって満たされていく。奥歯を噛みしめて、ひくひく疼く出口を必死に引き締める。
次の角に差し掛かって、とにかく曲がった。するとやっと見慣れた景色が広がった。ここまで来れば、家まであと少しだ。安心する反面、この先にコンビニが無いことも知っていた。
ああ、トイレ、おしっこ、おしっこっ。頭の中にあるのはそれだけ。ただトイレを求めて、おしっこが出来る場所を求めて、とにかく自転車を走らせる。
お腹が苦しくて、息が上手く出来ない。は、は、と浅い呼吸を繰り返していると、ぞわりと悪寒が体に広がった。頭のてっぺんから足の爪先まで大きな波が走り抜けて、下腹部の水風船を悪戯に揺らしていく。
「っ、あ、あぁ……!」
体がひとりでに震える。お腹がきゅうと縮んで、中身を押し出す。出口に向かって、熱いおしっこが満たされていくのがわかる。咄嗟に足を止めて、サドルにお尻を擦り付ける。それでも尿意は収まらず、右手でズボンの上から出口をぎゅうぎゅうと握り締めた。
で、る。でるでるでる、おしっこ、おしっこでる。は、は、と浅い呼吸を繰り返す。頭がぼんやりする。ぎゅうぎゅうと出口を揉んで、荒れ狂う尿意を必死に誤魔化す。自転車に跨ったまま、膨らんだお腹を抱えるように前かがみになっていた。
トイレ、トイレどこか、何でも良いからトイレ、おしっこっ……! 公衆トイレを求めて辺りを見回すけれど、無いことは誰より自分がわかっている。家までもう少しだ。あと少し頑張れば、トイレに行ける。頭ではわかるけれど、もう本当に我慢の限界だった。手を離したらその瞬間に出てしまいそうだった。
家に辿り着くしかない。片手で出口をぎゅうぎゅう揉んで感覚を誤魔化す。自転車に跨ったまま、爪先で地面を蹴って、少しだけ前に進む。
おしっこ、おしっこおしっこおしっこっ! おしっこがしたくてたまらない。他の事なんて全く考えられない。ああ、むり、出る、ほんとに出る、おしっこ、おしっこしたい、おしっこ、おしっこっ……!
もう一度地面を蹴って、少しだけ前に進んだところで、また大きな波が押し寄せた。全身が大きく震えて、押さえる手に力が籠る。あ、あ、だめ、おしっこ、おしっこっ……!
ぐにぐに揉んで、嵐のような尿意を必死に堪えようとするけれど、全然収まらない。押し寄せた熱い液体が指先を抉じ開けて、溢れ出す。ぶじゅ、とくぐもった水音がして、途端に出口の付近が熱く濡れた。
熱いはずなのに、寒気がする。鳥肌が広がる。咄嗟に手に力が籠って、痛い程に強く出口を塞ぐ。がくがくと体が震えていた。
あ、あ、あっ、むり、おしっこ、おしっこもれる、でる、おしっこっ……! 救いを求めて周りを見渡す。電柱が一本、少し先で伸びているのが目に入った。
震える足を必死に動かした。お腹を刺激しないようにそろそろと自転車から降りる。両足が地面に付いた瞬間、自転車から手を離して、電柱へ向かって駆け出した。スタンドを立てる余裕なんてなく、がしゃんと自転車が倒れる音が後ろで聞こえた。
おしっこが押し寄せて、じゅわっと熱い雫が溢れ出す。泣き出しそうになりながら、道の端で静かに佇む電柱へと小走りに駆け寄った。
足を踏み出しながら、片手でズボンの前と下着を一気に引きずりおろす。そして、反対の手を中へ突っ込んで、堪え切れずにおしっこを零し始めている出口を外へと引っ張る。雫を撒き散らしながら、ぶるんっと飛び出した先端を、電信柱へと向けた。
「……、あ、ぁっ……!」
じゅいいいい、と静かな住宅街に太い水音が響いた。先端からは勢いよくおしっこが噴き出して、電柱の根元へとぶつかり、ぴちゃぴちゃと雫を撒き散らす。灰色の電柱が濡れて色を変えていく。
「はぁぁっ……」
我慢に我慢を重ねたおしっこは途轍もない勢いで噴き出していく。その気持ち良さにぽかんと口が開いていて、溶けた声が零れ出した。
やっと深い呼吸が出来て、胸が上下する。頭が真っ白になって、何も考えられなかった。ただ気持ちが良くて、体の芯がじいんと痺れる。ぞくぞくと快感が押し寄せて、流されないように立っているのがやっとだった。
じゅうじゅうと野太く噴き出すおしっこは全然止まらない。破裂寸前まで膨らんだ膀胱には信じられないくらいおしっこが入っていたようで、電柱の根元に広がった水溜まりはどんどん面積を広げていく。自分の足元も濡れそうになって、一歩後ろへ下がった。
少しずつ余裕を取り戻すにつれて、羞恥がじわじわと込み上げてくる。今、立ちション、してしまっている。いつ誰が通りかかるかわからない道の端で。しかも、家の近所だ。
早く終わってほしいと思うのに、我慢しすぎたのか、全然止まらない。俯いた顔が熱くなるのがわかる。深い呼吸を繰り返しながら、視線の先で水溜りが広がるのを眺めることしかできなかった。
嫌になる程に時間を掛けて、最後の一滴まで出し終えて、息を付いた。快感の余韻に浸りたかったけれど、慌てて服装を正して、電柱から離れた。
体は驚くほど軽くなっていて、爽快感と解放感に満たされていたが、恥ずかしくてたまらなかった。立ちションしている間、誰一人通らなかったのは本当に運が良かったと思う。
自転車は道の端で横倒しになっていた。鞄も籠から投げ出されていて、まるで事故にあったかのような光景だ。慌てて自転車を起こし、鞄を乗せてから跨る。サドルにお尻を付けると、少し濡れた下着がぴたりと肌に張り付くのがよく分かった。その気持ち悪さに肌が粟立ったが、耐える以外にできることは無かった。
ペダルを漕ぎ出そうとして、つい視線が電柱へ向く。外はまだ明るく、驚くほど大きな水溜まりが広がっているのがはっきりと見えた。たくさん出たとは思ったけれど、こうして目に見える形で突きつけられると、その量の多さに恥ずかしくなった。
羞恥に身を焼かれながら、ゆっくりとペダルを漕ぎ始める。羞恥で火照った頬を吹き抜ける風が冷やしてくれた。
このサイト上にある画像・文章の複製・転載はご遠慮ください。
初出:2023年11月18日(pixiv・サイト同時掲載)
掲載:2023年11月18日