コンビニのトイレに駆け込んでいく亜子ちゃんを見送って、ほんの少し羨ましく感じました。良いな、私も、おトイレ行きたいな。でも今日の私は魔法少女りぃむちゃん。魔法少女はおトイレに行かないのです。どこかの誰かが言っていたのです。
でも、こんなことになるのなら、魔法少女モードは別の日にしておけば良かったと後悔していました。まさかりぃむちゃん状態で出かけるなんて思ってなかったから出発前におトイレを済ませられませんでした。喫茶店ではたくさんお水を飲んでしまったし、映画館でもたくさん飲んでしまいました。その上、喫茶店も映画館も冷房が良く効いていて、薄着の私にとっては寒いくらいで。
映画が始まったときには結構おトイレに行きたい状態でした。でも、今日の私は魔法少女だから。魔法少女はおトイレには行かないし、今日は亜子ちゃんのお願いを叶えるために魔法少女になったのです。
映画はしっかりと見ることが出来ました。エンドロールまでちゃんと集中していられました。でも、エンドロールが終わって立ち上がった瞬間、ものすごくおトイレに行きたくなりました。今まで忘れていた分、いえ見ないように押しのけていた分、反動をつけて襲い掛かってきたようでした。
早くお家へ帰って、魔法少女から普通の多恵に戻らないと。そうしたらおトイレを済ませて、駅前で買ったチョコレートケーキを亜子ちゃんのところに持っていって、約束を忘れていたお詫びをしよう。
駅に向かって歩きながらそんなことを考えていると、亜子ちゃんが言いました。
「ごめん、そこのコンビニ寄ってもいい?」
亜子ちゃんはそわそわと落ち着きがなく見えました。うん、と答えながら、そんな亜子ちゃんをかつて見たことがあることを思い出しました。もしかして。
「うん、良いけど、亜子ちゃん大丈夫?」
「ちょっとその、トイレ行きたくて。ごめんね」
恥ずかしそうに亜子ちゃんは言うと、速足でコンビニに向かって歩き始めました。やっぱり亜子ちゃん、おトイレ我慢してたんだ。映画の前にも行っていたのに大丈夫かな。
コンビニに入ると、亜子ちゃんは店員さんに声を掛けていました。そして速足でお手洗いの方へ歩いていき、そのまま扉の向こうへ飛び込んでいきました。
亜子ちゃん、慌ててたな。結構我慢してたのかも。その様子に、幼い頃の思い出が蘇りました。
亜子ちゃんは小さい頃おトイレが近くて、お出かけ中によくおトイレに駆け込んでいました。
いつか、亜子ちゃんの家族と私の家族でハイキングに出かけたことがありました。私と亜子ちゃんは大人とは別に、二人だけでハイキングコースを歩いていました。
初めはお喋りをしていましたが、だんだん亜子ちゃんの口数が減っていきます。疲れたのかと思いましたが、すぐにその理由はわかりました。口数が減った分、亜子ちゃんはそわそわと落ち着きがなくなっていました。そんな状態の亜子ちゃんは何度か見たことがあります。
おトイレ、行きたくなっちゃったんだ。でも、次の休憩場所まではまだ距離がありました。亜子ちゃん、大丈夫かな。心配しながら隣を歩いていると、亜子ちゃんは突然立ち止まります。
『た、たえちゃんっ、ど、どうしよぉ……』
『ど、どうしたの? あこちゃん』
慌てている亜子ちゃんに、私も内心慌てていました。どうしたのかは聞かなくてもすぐにわかってしまいます。でも、私も動揺していて、咄嗟に聞いてしまったのです。
『あ、あたし、おしっこっ……!』
亜子ちゃんは泣き出しそうな声で言いました。ズボンの前をぎゅっと押さえて、もじもじと恥ずかしそうに身を捩る様子は間違いなくおしっこ我慢のポーズです。そんな亜子ちゃんがおトイレへ走っていく様子を私は何度も見たことがありました。
『どうしようっ……おしっこでちゃうっ……』
どうしようどうしよう。おしっこを我慢して慌てる亜子ちゃんの横で、私も慌てていました。亜子ちゃんが困っている、私が何とかしてあげないと。
でも、ここにはおトイレはありません。もっと進むか、それとも戻るか。どっちも結構な時間がかかります。
『でちゃう、でちゃうよぉ……』
『わ、わかったっ! だいじょぶ、だいじょぶだよ、あこちゃん』
もうこれしかないと思い、私は亜子ちゃんの手を引いて、コースの横に広がる林の中へ進みました。亜子ちゃんはズボンの前をぎゅうと押さえたままついてきます。
道から少し奥に入ったところで、私は止まりました。草や木が生い茂っていて、私たちみたいな子供ならしゃがんでしまえば道からは見えなくなりそうです。
亜子ちゃんはズボンの前をぎゅうぎゅうと押さえたまま、落ち着きなく足踏みを繰り返していました。不安そうに、泣き出しそうな顔で、私をじっと見ています。
『あこちゃん、ここでこっそりおしっこしちゃおう』
『えっ、でもっ、といれじゃないよっ……』
『ここでこっそりしたらわかんないよ。だから、ね』
『でも、でもっ……!』
亜子ちゃんは足踏みをしながら、まだ思い切れないようでした。でも我慢は限界のようで、足踏みが止まることはなく、手がズボンの上からぎゅっぎゅっとおしっこの出口を押さえています。
このままだと本当に亜子ちゃんがおもらししてしまいます。何とかしてあげないと。
『だ、だいじょぶだよっ。わたしもおしっこするから、いっしょにしよ?』
亜子ちゃんに背中を向けて、ズボンと下着を下ろしてしゃがみ込みます。恥ずかしいけれど、亜子ちゃんのためなら出来ました。でもさっきの休憩でおしっこしたところだし、緊張もしていて、全然おしっこがしたくありません。
お腹に力を入れると、ぴゅ、とおしっこが少しだけ出ました。ほら、亜子ちゃん、大丈夫だから。おしっこを終わらせて、下着とズボンを履きながら亜子ちゃんに声を掛けようとしましたが、その前に亜子ちゃんが私を呼びました。
『た、たえちゃぁんっ……!!』
その声はもう泣き声でした。もしかして間に合わなかった? 慌てて亜子ちゃんの方を向くと、亜子ちゃんは前屈みになって、バタバタと足踏みを繰り返していました。両手でズボンの前をぎゅうぎゅうと押さえていて、まだおもらしはしていないようでしたが、もう本当に我慢の限界だという感じでした。
『たえちゃんっ、おしっこ、おしっこっ……!』
『ほら、はやくしちゃおうっ。だいじょぶだから』
『でも、でもっ……はなしたら、おしっこでちゃうぅっ……!!』
どうしようどうしようと亜子ちゃんは私に助けを求めます。何とかしてあげないと。でも、どうしてあげたら良いのか。早くしてあげないと亜子ちゃんがおもらししてしまいます。
『わ、わかったっ。わたしが脱がせてあげるから、ちょっとだけ手、はなしてみて?』
『はなしたらでちゃうよぉ……!!』
『だいじょぶ、ちゃんとすぐに脱がしてあげるからっ。だから、いち、に、さんで、ちょっとだけ手はなそう?』
亜子ちゃんはこくこくと頷きます。前屈みでおしっこの出口をぎゅうぎゅうと押さえている状態で脱がせるのは難しそうですが、しないわけにはいきません。
じたばたする亜子ちゃんのズボンのボタンを外し、チャックを下ろせるだけ下ろします。一刻たりともじっとしていられない様子は、もうおしっこがしたくてしたくてたまらないと、痛いほどわかりました。
『い、いくよっ。いち、にの、さんっ!』
亜子ちゃんが手を離した瞬間、私は亜子ちゃんのズボンと下着を一気にひっぱりました。亜子ちゃんのおしっこの出口が見えた瞬間、じゅ、じゅうぅ、とおしっこが零れました。出ちゃったおしっこは膝の下にひっぱられた下着とズボンを濡らします。
『あ、あ、あ、あ、あっ……』
『あこちゃん、しゃがんでしゃがんでっ』
じゅ、じゅうぅ、とおしっこを零しながら、亜子ちゃんはその場にしゃがみ込みました。和式トイレでおしっこをするときと同じ格好。膝下にズボンと下着を引っ掛けて、亜子ちゃんのおしっこの出口はちゃんと地面を向いています。そこに何の邪魔もありませんでした。
『あ、ああ、あっ、あ、あああ、っっ……!!』
それを確認してなのか、それとももう我慢の限界だったのか。多分どっちもだったのでしょう。じゅ、じゅじゅ、じゅうぅ、とおしっこが少しずつ出たかと思うと、じゅおおぉーっと激しい音をさせながら亜子ちゃんはおしっこを始めました。見る見るうちに亜子ちゃんの足元にはおしっこの水たまりが広がり、隣にあった私のおしっこの水たまりをあっという間に飲み込みます。
『ふあぁぁぁっっ……』
気持ちよさそうな声を出しながら、亜子ちゃんはおしっこをしていました。とろけてしまいそうな顔です。たくさん我慢したのでしょう。水道を勢いよく捻ったときのようです。
さっきの休憩で亜子ちゃんもおトイレに行ってたのに、あんなに出るんだ。あんまり見るのは失礼だと思いましたが、その様子があまりにすごくて、目を奪われずにはいられません。
勢いはだんだんと落ち着いていきますが、それでも亜子ちゃんのおしっこは続きます。どれだけ出るんだろう。足元の水たまりはすごく大きくなっていて、まるで池みたいです。こんなに我慢していたら辛かっただろうなあ。でも、おしっこ、あれだけ出たら気持ちいいだろうなあ。
亜子ちゃん、おもらししなくてよかったね。これだけおしっこ我慢しておもらししてしまったら、お洋服は大変なことになっちゃってたでしょう。
たっぷり時間を掛けて、亜子ちゃんのおしっこは終わりました。
『ぁう。かみ……、ぁ、あっ』
『ティッシュつかう? どうしたの?』
亜子ちゃんはおしっこをしたそのままの体勢で固まっていました。その視線の先は膝下のズボンと下着に向いています。あ、もしかして。
『よごしちゃった?』
『ちょ、ちょっとだけ……』
下ろすときに、ちょっとだけおしっこがかかっていた気もします。それと、もしかしたら我慢していた時にも汚してしまったのかもしれません。
鼻をぐすぐすさせながら、亜子ちゃんはまた泣き出しそうでした。
『あるいてたら、かわくかな』
『うん、きっとだいじょぶだよ』
亜子ちゃんが服装を正してから、私たちは再びハイキングコースに戻りました。
コースに戻る途中、内緒でこっそり後ろを見ました。
びっくりするくらい大きな水たまり。そこだけ雨が降ったみたいに濡れています。あれが全部亜子ちゃんのおしっこだなんて、目の前で見ていたのにちょっと信じられません。大人の人でもあんなにおしっこ出るのかな。それくらい大きな水たまり。
亜子ちゃんは初めこそ恥ずかしそうに顔を伏せていましたが、コースに戻る頃にはいつもの様子に戻っていました。その顔は晴れやかで青空のようです。亜子ちゃんが泣かなくて良かったと、すっきりとした亜子ちゃんの笑顔を見て思ったのでした。
コンビニの中をうろうろしながら時間を潰しますが、亜子ちゃんはなかなか戻ってきません。私もおトイレ、行きたい。でもコンビニにはおトイレは一つしかないし、そもそも魔法少女はおトイレに行きません。
でも、正直、魔法少女の件は撤回したくなり始めていました。……お家まで我慢出来るかな。駅のおトイレ、使おうかな。それどころか、亜子ちゃんが出てきたら、私もコンビニのおトイレ使おうかな、と思ってしまいます。
コンビニは冷房が良く効いていて、ここにいるとどんどんおトイレに行きたくなってしまいます。冷えた体を温めようとコンビニの外に出ました。
けれど、じっと立っていると、お腹に溜まったおしっこがずっしりと出口に押し寄せる感じがして、更におトイレに行きたくなりました。どうしよう、結構行きたい。亜子ちゃんまだかな。おトイレ、行きたい。早く、出来たら今すぐ、行きたい。駅まで、我慢できないかもしれない。
「ねえ、きみ、ひとり?」
「え、えっ?」
急に声を掛けられて、驚きのあまり、身がびくっと跳ねました。顔を上げると、知らない男の人がそこに立っていました。
「怪しいものじゃないです。ぼく、広告会社のものなんだけど、おねーさん、モデルとか興味ないかなと思って」
「いえ、人を待っているので」
「それなら、お友達来るまでお話だけでも聞いてもらえないかな? 事務所、すぐそこなんだけど。ほんと、怪しい話じゃないから安心してよ」
「い、良いです。興味ないです」
「ほら、ここ暑いし、事務所冷房効いてるから。ね、ほらちょっとだけだから、ほらほら」
「や、ちょっと、あのっ」
興味がないと言っているのに、男の人は私の手を取るとどんどん歩き始めていきます。振りほどこうにも力が強くて、その上、おトイレに行きたいせいで冷静になれません。どうしよう、どうしよう。コンビニの中を見ましたが、亜子ちゃんはいません。亜子ちゃん、どうしよう、どうしよう。
私はよくわからない事務所に連れてこられました。何とかしないといけないと思うけれど、頭の中はおトイレのことでいっぱいで、上手く考えがまとまりません。
固いパイプ椅子に座っていると、今まで以上におトイレに行きたくなりました。足の付け根がじんじんとむず痒くて、気を抜くとおしっこが出てしまいそうで、膝の上で握りしめた手が震えていました。
こんなにおトイレに行きたくなったのは初めてかもしれません。おトイレ行きたい、このままだと、ほんとに出ちゃうかもしれない。もう家まで我慢するとか、駅まで我慢するとか、そんなことは全く考えられません。亜子ちゃんの待っているコンビニに行って、そこでおトイレを使わせてもらう。それしか頭の中にはありません。
でも、それすら危ないかもしれないと、時折思ってしまいます。ああ、おトイレ行きたい。亜子ちゃんもこれくらい我慢していたのかな。こんなに苦しい状態を我慢出来る亜子ちゃんを少しだけ尊敬します。おトイレ、おトイレおトイレおトイレ。そのことしか考えられない。他のことなんて何にも考えられません。
私をここに連れてきた男の人は、机を挟んで向かい側に座り、色々と話しています。でも頭には全く入りません。何でも良い、おトイレ。ここの事務所におトイレ無いのかな。見ず知らずの怪しい人にすら、おトイレを貸してくださいと言ってしまいそうな切迫感に、泣き出してしまいたくなりました。
どうしようどうしようどうしよう。おトイレ行かないと。スムージーにお水にカルピス。どれもたくさん飲んでしまいました。じりじりと押し寄せる生理現象に必死に耐えますが、じりじりと燻る炎に体の内側から焼かれているようです。冷房の効いた事務所にいるのに熱くて、頬に汗が伝います。火照った体は冷房で冷され、生理現象は弱まるどころか強くなっています。
ぐいぐいと内側から切なく押されている感じに、身を捩りたくなります。このままだとガマンできなくなってしまいそう。羞恥と欲求がせめぎ合う中、ガマンは確実に限界へと近づいていきます。
熱く火照った体の中で、じゅ、と一瞬だけ、おしっこの出口が熱くなりました。あ、あ、どうしよう、おしっこ、ちょっと、出ちゃった。手が勝手にそこを押さえそうになるのを、必死に押しとどめますが、でもそうしないと、またおしっこが出てしまいそう。でも、人前でそんなことするなんて。
考えている間に再びおしっこが零れます。あ、あ、あ。頭が真っ白になりました。おトイレ、おトイレはやく、だめ、このままだと。
じゅわ。三度目の熱が広がり、下着が湿っているのを感じます。お尻が濡れている気がします。だめ、このままじゃ。おトイレ行かないと。なりふり構わず立ち上がろうとしますが、体が動きません。だめ、だめだめだめ。おトイレ、おしっこしたい、でちゃうでちゃうでちゃう。
頭が真っ白で、低い声が聞こえます。きーん、と耳鳴りの音。あ、あ、あ、だめ、おトイレ、おしっこ。
いつか見た、子供の亜子ちゃんの顔が浮かびました。泣き出しそうな亜子ちゃんの顔。私もいっしょ。おしっこ、おしっこしたい、おしっこでちゃう。誰か助けて、誰か、誰か、誰か。
「多恵っ!」
聞きなれあ声が真っ白な世界を切り裂きました。
亜子ちゃんっ。世界が色を取り戻した時には、亜子ちゃんは私の手を引いて走っていました。引っ張られるままに亜子ちゃんの後をついていくことしかできません。足は縺れながらもちゃんと進んでいて、涼しい事務所を飛び出し、熱い外へ飛び出していきます。
走って走って走って、亜子ちゃんが止まりました。引っ張られていた私も止まります。荒い呼吸の音が二つ重なっていました。
亜子ちゃん、亜子ちゃん、亜子ちゃん。誰よりも安心するその人に、全身から力が抜けました。
その瞬間、今まで意識の外に追いやられていた生理現象が一気に牙を向きました。ぞくぞくと叫びだしたくなるほどの欲求に、私は亜子ちゃんに掴まらないと立っていられません。
がくがくと体のあちこちが震えます。おしっこの出口がじんじんして、今にも、ほんの少し力を抜いただけでおしっこが出てしまいそう。おトイレおトイレおトイレ。おトイレ行きたい、おしっこしたい。
「馬鹿っ! あんな怪しい人についていったら駄目じゃないっ!」
私はあの時の亜子ちゃんと同じです。助けて、亜子ちゃん。縋るように亜子ちゃんの服を握りしめて、ただ亜子ちゃんを見つめます。ぐにゃりと視界が歪み、自分が泣いていることに気付きます。
もうだめ、ほんとにおといれいきたい、もうだめ、おといれおといれおといれっ……!
「あ、亜子ちゃぁんっ、ぉ、おしっこぉ……!」
「えっ……えええぇっ!?」
「ぉっ、おしっこっ、もぉがまんできないっ、もれちゃうっ……」
「ちょっ、ちょっと待って、ちょっとだけ待ってっ!」
「も、まてない、もれちゃうっ……もうガマンむりぃっ……!!」
頭の中はぐしゃぐしゃで、思うことがそのまま言葉になっていました。
ほんとにだめ、おといれもうガマンできない、おといれいきたい、おしっこしたい、もうだめおしっこっっ……!
「わかった、わかったからちょっと待ってっ! あ、あっちにコンビニあるから、そこでトイレ借りようっ!」
亜子ちゃんは私の手を引いて走ろうとします。けれど、足が動くたび、足を開くたびに、お腹が縮んで、おしっこがじゅわ、とでてしまいます。
「まっ、まってっ、でちゃう、走ったらでちゃうぅっ……」
ぎゅううっと太ももを寄せて、おしっこの出口が開かないようにしているのに、おしっこはじわりと零れてきます。だめ、だめだめだめっ。
「わかってるからっ、もうちょっとだから頑張ってっ! ほら、魔法少女はトイレ行かないんでしょう!」
「魔法少女じゃないんだもぉんっ……! ほんと、おしっこっ、おしっこもれちゃうっ……!!」
ほんとにだめ、もれちゃう、おしっこでちゃう。おといれおといれおといれっ! 今、目の前におトイレがあったら何も考えずに使っています。
なんでもいい、おといれ、おしっこ。だめ、でる、でちゃう。おしっこ、ガマン、でも、もうおしっこいっぱいで、ちょっと動いただけで零れちゃってて。だめ、だめだめだめ。もう一歩も動けない。でも、歩かないとおトイレにはいけない。でも、でちゃう、おしっこでちゃう。でも、でも、でもっ。
がくがくと足が震えます。おしっこがじゅ、じゅと出て、おしっこの出口が熱くなる。じわじわと滲みだしたおしっこが足を伝って、あったかくて。
ガマンしないと。わかっているのに、おしっこはほんのちょっと動いたらでちゃって。呼吸に合わせて、じわ、じわと、あったかいものが足を伝う。だめ、おしっこ、おしっこでちゃう。じゅう、じゅ、じゅ、じゅわぁ。額を伝う汗も、視界を歪ませる涙も、すべてがおしっこなんじゃないかと思うほどに、私の中はおしっこでいっぱいです。もう何も、ほんの少しも入らない。頭の先から足の先までおしっこでいっぱい、そんな感じ。
「ぅ、あ、あ、あ、あ、あぁぁっ……」
手が勝手にそこを押さえていました。スカートの上から、ぐじゅ、と濡れた下着ごとおしっこの出口を押さえます。ぶじゅ、じゅじゅ、じゅ。押さえているのに、おしっこが止まらない。手が、足が、おしっこの出口が熱くて。
もうだめ、もうだめ、だめだめだめ、ほんとにだめ。あの時の亜子ちゃんと同じようにぎゅうっと押さえているのに、ガマンできない。亜子ちゃんはガマンしてたのに、おしっこ、止まらない。じゅ、じゅうう、じゅ、じゅ。おしっこ、ガマンしないといけないのにっ。ああ、もうだめ、おしっこ、おしっこ、おしっこっ……。
「あ、んぁ、あ、あっ、ああっ……」
足に力が入らず、ずるずるとその場にしゃがみ込んでしまいます。全身ががちがちに固まってこわばって、体がうまく動かきません。亜子ちゃんの服、離さないといけないのに手が動かない。ああ、もうだめ、体がどこもいうことをききません。おしっこ、でちゃう、でちゃう、でちゃう、もうだめ、あ、あ、あ、ああっ。
「あう、う、ごめん、ごめんあこちゃんっっ……!」
水道の蛇口を一気に捻ったかのように、おしっこが噴き出した。ぶじゅうぅぅ、とすごい音。おしっこ、でてる、でちゃってる。おといれじゃないのに。
せめて脱がないと。でも、うごかない。体中ががちがちに固まっていて、呼吸すらもうまくできません。
「大丈夫、大丈夫だよ」
亜子ちゃんの温かい手が背中に触れた。優しく撫でられると、あれだけ強張っていた体から力が抜けていきます。
「あ、あ、あああ……ふ、あ……、」
大きく息を吸って、吐く。おしっこは全然止まらない。ひたひたと下着を濡らし、スカートを濡らし、足元を濡らしていく。力が抜けた指先で、縋るように亜子ちゃんの服を握った。
おしっこは全然とまらない。お腹がおかしくなったのかもしれない。でも、ちょっとずつ、お腹は軽くなっていってて。でも、まだおしっこ、いっぱい残ってる。まだ、でちゃう。
熱い全身に少しずつ空っぽになっていく。空っぽな部分が増えて、体が熱を失っていく度に、体がぶるっと震えました。
どれだけ出るのか自分でも不安になるほど、おしっこはたくさん出ました。体も頭も空っぽで、驚くほどすっきりとしていました。
「亜子ちゃん、でちゃった」
浮かんだ言葉は何にも引っかからずに、そのまま零れていきます。
「がまん、できなかった」
ガマンしないとだめなのに、出来なかった。
「おトイレ、もうちょっと、だった、のに」
あの時の亜子ちゃんはちゃんとガマンした。それなのに、私は出来なかった。
「大丈夫、大丈夫」
亜子ちゃんが、私の背中を撫でる。空っぽになった私の中に温かくて優しいものが注がれる。温かさが空っぽの私の中で反響して、自分でもコントロールできないほど大きな波になっていました。
「おしっこ、間に合わなかったぁ……」
ぼろぼろと涙が零れていました。声も震えていて、上手くしゃべれません。まるで子供のように泣きじゃくる私を、亜子ちゃんは傍で優しく支えてくれていました。
泣くだけ泣くと少し落ち着きを取り戻せました。
亜子ちゃんは私を公園のおトイレに連れてきてくれると、そのまま着替えを買いに走ってくれました。今日は何から何まで亜子ちゃんにお世話になっています。駅前のケーキ屋さんのチョコレートケーキだけじゃお礼には足りないかもしれません。
ぐじゅぐじゅに濡れた下着とスカートが気持ち悪い。けれど着替えが届くまではどうしようもありません。とりあえずは足に張り付いたストッキングだけを脱ぎたくて、個室のカギを掛けようとして、それが壊れていることに気付きました。人がいないことを確認して、隣の個室に移動して、今度こそカギを掛けてストッキングを脱ぎました。
爪先までぐっしょりと濡れたせいか、足はひんやりと冷えています。……どうしよう、またおしっこしたくなっちゃった。さっきあんなにおしっこしたのに。
亜子ちゃんはまだ戻ってこなさそうです。今のうちに済ませちゃおうとしゃがみ込んで、今度は紙が無いことに気付きました。ど、どうしよう。考えている間にもどんどんおしっこがしたくなっていきます。ほんとにお腹がおかしくなっちゃったのでしょうか。さっき、あんなにおしっこしたのに、もうこんなにしたいなんて。
仕方ありません。今掛けたカギを開けて、私はさっきまでいた個室に飛び込みました。内側からドアを押さえた状態で、片手で何とか下着をおろそうとしますが、濡れた下着は張り付いて丸まってしまい、上手く脱げません。その間にもどんどんおしっこがしたくなっていきます。
あう、おしっこでちゃう、はやくはやくっ。何とか無理やり下着を下ろして、不安定な状態でしゃがみ込みます。何とかおしっこの体勢を整えて安心した瞬間、足音が聞こえてました。咄嗟に息を潜めます。
「多恵、買ってきたよ」
亜子ちゃんの声に安心するのと同時に動揺してしまい、扉を押さえていた手が滑ります。
「あ、あ、ちょっと、ちょっと待ってっ……」
ぎい、と内側に開き出す扉を腰を浮かせて咄嗟に押さえなおしましたが、今度はおしっこが出てしまいそうで。さっき、亜子ちゃんの前であんなにおしっこしたのに、私、またおしっこしちゃう。
「うあぁ、開いちゃうっ……亜子ちゃん、待ってね、待ってねっ」
じょろろろ、と中途半端に腰を浮かせた状態で、おしっこは出始めてしまいます。あ、あ、だめ、どうしよう、しゃがまないとダメなのに、手を離したらドアが開いちゃう。おしっこは高い位置からじょぼぼぼ、と大きな音を立てておトイレに注ぎ込まれていきます。
あう、おしっこ、でちゃってる、ぜんぜん止まらない。どうすることも出来ずに、私は中腰の体勢で扉を押さえたまま、おしっこがぜんぶ出るのを待つしか出来ませんでした。
おしっこが全部出て、すっきりしたと同時に、もう情けなくていたたまれませんでした。はやく帰りたい。
下着を履きなおして、ドアを開けると、すぐそこに亜子ちゃんが立っていました。
「これ、着替え」
「ありがと……着替えている間、見張っててね」
「それは良いけど、鍵壊れているなら隣に移動しないの?」
「ここでストッキングとか脱いじゃったのと、あと、隣は紙が無くて」
亜子ちゃんはおトイレの入り口で立ってくれていました。その間に、鍵の掛からない個室で着替えます。
乾いたお洋服がこんなに温かいと初めて知りました。濡れたお洋服を袋にまとめて入れて、ぼさぼさになった髪も下ろしてしまいました。
亜子ちゃんはカルピスを飲みながら待ってくれていました。声を掛けると、いつもと何も変わらない様子でそれを差し出してくれます。口を付けると、するすると飲み込んでしまって、思ったより喉が渇いている自分に気が付きました。交代で飲んでカルピスを空にしたところで、どちらからともなく歩き始めました。
どうしようどうしよう。私のお腹、ほんとにおかしくなってしまったのかもしれません。さっきちゃんと済ませたのに、もうおトイレに行きたくなり始めていました。カルピスを飲んだから? でも、亜子ちゃんと二人で半分ずつ飲んだだけなのに、こんなにおトイレに行きたくなるなんて。
あとから知ったのですが、グリーンスムージーには体を冷やす効果があって、入れる材料によって利尿作用があることもあるそうです。スムージーの利尿作用によってどんどんおしっこが作られた上に、お腹はガマンにガマンを重ねたせいでもう疲れていて、そのせいでこんなにおトイレが近くなってしまったようでした。
改札を通ったときに、ちょうど電車が来ていました。普段ならラッキーだと思ったのでしょうが、今はアンラッキーにしか感じません。このまま電車に乗って、降りる時まで、ガマン、する、なんて。答えを出す前に、私は亜子ちゃんの袖を引いていました。
「あ、亜子ちゃんごめん、わたし、ぉ、おしっこっ……!」
もう取り繕う余裕もなく、私は言うだけ言うと、すぐに改札の横にあるおトイレへ飛び込んでいました。有難いことにおトイレには誰もいません。
一番近い個室に飛び込んで、カギをかけて、下着を下ろしながら同時にしゃがみ込みます。
しょろろろ、と、ちゃんと、いっぱいおしっこが出ました。私、今日、どれだけおしっこしているんだろう。普段はこんなにしないのに。
無事におトイレを済ませて亜子ちゃんの元に戻ると、電車は出発してしまっていました。
「間に合った?」
「う、うん。だいじょぶでした」
「魔法少女はトイレに行かない、なんて言ってたのに」
「ううっ……も、もう行かないもんっ、へいきなんですっ」
ほんとにもうダイジョブなはずです。だってこんなに何回もおしっこしたんだから。もう行かない、もう平気です。
そう思ったのに。
電車の冷房で体が冷えたのか、私はまたおトイレに行きたくなってしまいました。なんでなんでなんでっ。もうやだと思っても、おトイレに行きたいのは無くならなくて。
「大丈夫、多恵?」
「だいじょぶ、だいじょぶですっ」
「一回降りる?」
「だ、だいじょーぶ、ですぅっ」
だいじょぶ、だいじょぶなんです。今日は何回もおしっこしたし、さっきもおトイレ行ったし、だいじょぶなんですっ。そのはずなのに、考えれば考えるほどおしっこがしたくなります。
ガマンガマンガマン、ちゃんとお家までガマン。ああ、でも、だめ、おしっこしたいっ。なんでこんなにしたくなるのっ。
折れそうになる心を必死に奮い立たせますが、ほんのちょっとの誘惑で弱気になってしまいます。せめて、ちゃんと降りる駅までガマンしないと。はやく、はやくはやくはやく。はやくおトイレいきたい、はやくおしっこしたいぃっ……。
ドアが閉まって、あとふたつ。ほんとにおしっこしたい。なんでこんなにしたくなるのっ。膝をすり合わせて切ない衝動を堪えますが、ほんのちょっと気を抜いたら、一気に噴き出してしまいそう。おトイレ、はやくおトイレ。
またドアが開いて、閉まって、あとひとつ。もうだめ、おしっこしたい。体がおしっこを出したくて泣きさけぶ。おしっこしたい、おしっこ、おしっこ、おしっこっ。なんでもいいからおしっこっ。おしっこでちゃう。
電車がゆっくりと止まります。ドア、開かない。はやく、はやくはやくはやく。おトイレいきたい、おしっこしたい。おしっこでちゃうでちゃうでちゃうっ。はやくしないと、またおもらししちゃうっ。
ドアが開いて、私は何も考えずに電車から飛び出して。
おトイレ、おトイレどこ、おしっこでちゃう、はやく、どこっ。泣きそうになりながら、やっとおトイレの案内を見つけて、そっちに向かう。走りたいけど走ったら出ちゃいそうで、早歩きで出来るだけ急ぐ。おといれ、おしっこおしっこおしっこっ。はやくおしっこ、もうでちゃう。おしっこがしたくてしたくてたまらない。
おトイレにつくと、気が緩んだのか、体がおしっこを出しそうになりました。咄嗟にスカートの上からぎゅううっとそこを押さえる。あ、あ、あ、だめ、だめだめだめ、おしっこ、おしっこでちゃう。おしっこを出口を押さえたまま、個室に駆け込む。でる、でるでるでる、おしっこでる、でちゃう、あ、あ、あ、あああっ。
ドア閉めて、カギ掛けて。ああ、あ、でちゃう、おしっこでちゃうっ。だめだめだめ、おしっこおしっこおしっこっ……!
じゅう、とおしっこが、出て。後ろ向いて、下着おろして、すわって。
「あぁぁっ………!」
声が漏れたのと、ぶしゅぅーっとおしっこが出たのは同時でした。
まにあった、ちゃんと、おしっこでてる。おしっこ、すごいいっぱい、すごいきもちいい。じゅーって、ぶしゅーって、すごい、こんなにでるなんて。ぜんぜんとまらない、すごいでてる。
おしっこをし終えても、少しの間、動けませんでした。まさに放心状態で、全身から力が抜けていました。
落ち着いてから、また私はしてしまっていたことに気付きます。ちょっとだけ、出ちゃった。また汚しちゃった。でも、どうすることも出来ません。
亜子ちゃんは改札のところで待ってくれていました。色んな意味で恥ずかしくて、顔を見ることが出来ません。
俯いていると、亜子ちゃんはすべてお見通しというように言います。
「間に合わなかった?」
「まにあったよっ! ……ただ、その、ちょっとだけ、あの、その、」
余計なことまで言ってしまい、言葉がうまく続きません。亜子ちゃんは何も言わずにじっとこちらを見ています。それが余計に恥ずかしくて、私は亜子ちゃんの腕をぺちぺち叩いて八つ当たりするしか出来ません。
元を辿れは、全部全部、魔法少女になりきったことが始まりです。魔法少女にならなければ、私はこんなに恥ずかしい思いをしなかったに違いありません。
「も、もう、もう魔法少女なんか、二度としないぃっ……!」
心からそう思いました。本心も本心、本当に二度と魔法少女なんてするつもりはありませんでした。
けれど、後日のこと。亜子ちゃんは魔法少女りぃむちゃんに会いたいな、なんて言いました。
亜子ちゃんに言われると、叶えてあげたくなります。まあ、ああいう格好は可愛いですし、亜子ちゃんの望みなら叶えてあげるのもやぶさかではありません。亜子ちゃんのためですから、一肌脱いであげるのが私の役目でしょう。
かくして、魔法少女りぃむちゃんは封印されることはなく、ちょこちょこと姿を見せては亜子ちゃんのお願いを叶えるのでした。
亜子視点は こちら
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初出: 2018年7月28日(pixiv) 掲載:2020年10月31日