彼はドリアードへ水を運ぶ 水の塊の感触

※男性が女性の体へ掛ける描写があります

 柔らかな日差しが木々の隙間から降り注ぐ。森の中は日中でも薄暗く、空気が冷えていた。
 右も左も木々に囲まれて、道なき道を歩いていく。木の葉がさざめくのに合わせて、足の裏が草木を踏みしめる子気味良い音がしていた。

 茂みを踏み越えようと足を大きく持ち上げると、体の内側でたぷんと水の塊が揺れる。ぞわりと肌が粟立って息を呑んだ。嫌な衝動を出来るだけ抑え込んで、とにかく足を動かすことに集中する。
 ぶるりと体が震える。ぞくりと刺すような悪寒が腹の下に響く。余裕はあると思っていたけれど、早く辿り着かないといけないかもしれない。焦る気持ちに背中を押されて、足取りはやや速くなっていた。

 歩き続けて、途中で方向を変える。目印なんてない。どちらを向いても景色は似たようなものだ。それでも体が覚えていた。
 そうして何度か曲がって、歩き続けて、辿り着いた場所はいつもと何も変わらなかった。見上げる程に背の高い木々が不規則に並んでいて、その隙間を埋めるように草木が地面を覆っている。空を覆う木の葉はやや開けて、柔らかい日差しが辺りを温かく照らしていた。

 一本の木の傍に寄る。自分の背丈より何倍も大きな木は静かに佇んでいる。ぼこぼことひび割れて硬くなった木肌にそっと触れた。
「ベレアルテ、来たぞ」
 声を掛けると、風も無いのに木は優しく揺れた。そして、段々と姿が変わっていく。

 ごつごつとして深い色の木肌は柔らかく白い肌に。地面から伸びる太い幹は柔らかな腰つきへと。そして丸く膨らみを帯びた体が伸びて、胸のあたりは膨らみを隠すように緑色の葉が隙間なく覆っていく。
 その上は丸く形取られて、人の顔へと変わった。その顔つきは女神のように整っていて、瞳は下ろした瞼が隠したまま、静かに佇んでいる。
 空との間に生い茂る葉は美しく長い髪に変わる。そして、空へと延びていた枝は、しなやかな腕となって、ゆっくりと下ろされた。

 まつ毛が震えて、伏せた瞼が持ち上がる。日差しに輝く水面のような青い目が姿を見せた。
 丸い目に俺の姿が映ると、そっと細められる。それから、花のように優しく色付いた唇がゆっくりと動いた。
「スアーミ! 今日も来てくれた!」
 優しい声は木の葉が揺れた時のように静かに森の中へ響いた。
 女神のように美しい女性が、少女のように満面の笑みを浮かべて俺の名前を呼ぶ。そんな姿を見てしまうと、こちらまで嬉しくなってしまって、緩みそうになる顔を必死に引き締めた。

 枝から姿を変えた長い腕はこちらに伸びて、手の平が俺を掬い上げる。彼女はそのまま、俺を彼女の顔の高さまで持ち上げた。
「嬉しい。ありがとう、スアーミ」
 彼女は更に笑みを深くする。その姿は幼い少女のように無邪気に見えた。

 こうして彼女の手に持ち上げられるのはいつものことだ。落とされることは無いと思っているけれど、不安が無いと言えば嘘になる。
 手の平は広いとは言え、地面よりは柔らかくて不安定だ。立ったままでは少し怖くて、その場に腰を下ろした。

 美しい女性、ベレアルテ。森の奥に住む森の精、ドリアードだ。
 本来ならば、ドリアードは人の姿を取ると、本体の木をある程度離れて動き回ることが出来る。けれど、彼女は違う。本体の木がそのまま人としての姿へと変わっていく。
 人の形でこそあれ、人よりもずっと大きな姿。そして、腰から上だけ。根は地面に埋まったままなので、動き回ることは出来ない。
 彼女はそんな自分を半端ものだと言って、少しだけ悲しそうに笑う。その姿を見て、ああ、自分と同じだと思ったことを覚えている。

 彼女は美しかった。俺が今まで見た何よりも美しいと感じた。こんな存在が世界にはいたのだと、思わず見惚れたのを覚えている。
 端麗で、艶やかで、華麗な姿。森に咲く花々より、羽を広げる鳥より、自由に飛び回る虫より、ずっと美しい。
 心を奪われたのは間違いではないと思う。それから自分に奪われるほどの心があることにも驚いた。

 俺を支える地面になっている彼女の手の平にそっと触れて、動かしてみる。
 撫でていると、彼女には伝わるだろうか。様子を窺おうにも、彼女はにこにこ楽しそうに笑っているだけで、よくわからなかった。

 二、三と言葉を交わしていると、忘れていた感覚がぞわぞわと体の中で込み上げる。言葉の合間に静かに息を吐いて、さり気なく体を揺すって、その感触を誤魔化す。
 呼吸をする度に、腹の下がじんじんと疼く。何とかしようにも、解決法など一つだけ。さり気なく、服の上から自分の腹に触れて、そっと撫でた。

「そうだ、スアーミ。今日も持ってきてくれたの?」
 無邪気なその言葉に胸がはねた。頷くと同時に、ぞわりと悪寒が込み上げて、嫌な衝動が強くなる。
 彼女に知られないように、息を吐いて何とか落ち着ける。手が自然と服の端を握り締めていた。

「今日も触っても良い?」
「駄目って言ったら止めるのか」
「勿論止める。スアーミの嫌なことはしない」
 眉を下げて彼女は笑う。そんな風に言われたら断れない。
 長いシャツの裾を持ち上げると、草臥れたズボンが露わになった。その上部でぽこりと大きく膨らんだ下腹部が彼女の元へ晒される。

「触れよ」
「良いの? スアーミ、嫌じゃない?」
「嫌じゃないから」
 もう辛いから、するならはやくしてくれ。続きの言葉は呼吸と共に飲み込んだ。

 ベレアルテは笑みを収めると、片方の手を離した。地面が片手分の面積になっても、座るには充分すぎる程の場所があるので問題はない。
 離れた手は、他の指が緩く折り畳まれて、人差し指だけが伸びる。その指先が目前へと伸びてくる。新緑のように色付いて輝く爪が目に付いた。

 伸ばされた人差し指は恐る恐るといった様子で俺の腹に触れた。
 指一本と言ったって、俺の腕と同じくらいの太さがある。ちょん、と指先が膨らんだ腹に触れた瞬間、体にぞくっと悪寒が走った。声が出そうになるのを、奥歯を噛みしめて堪えた。

 ベレアルテは丸い目を更に丸くして、食い入るように自分の指先を見ていた。興味津々だとその柔らかい頬に書いてある。
 堪えた声を飲み込んで息を吐くと、またちょんと指先が腹を突く。吐き出す息と共に、低い声が漏れた。

「すごい。……すごい」
 小さく呟きながら、彼女の動きは段々と遠慮を無くしていく。一本だった指が二本、三本と増える。ちょんと触れるだけだったのが、その感触を確かめるようにゆっくりと押される。
 弾力のある腹が彼女の指を押し返す。その内側では、ぞくぞくと刺すような衝動が走り回って、全身が震えた。
 体が衝動から逃れようと、勝手に動いていた。体勢は崩れて、いつの間にか仰向けに寝転んでいる。俺の体に合わせて、彼女の手がハンモックのように背中側を丸く包み込んでいた。

 どれだけ動いても、自分の内側の感覚からは逃れられない。ぜいぜいと荒い呼吸を繰り返しながら顔を上げると、食い入るように見つめる青い目が輝いていた。
「……いい加減飽きないか」
「全然飽きない。だって、お水に触ってるんだよ。雨や嵐とは違う、お水の塊に触っているの。すごいの、すごく不思議な感覚」

 彼女の悪戯な指は留まることを知らない。撫でて、突いて、挙句には二本の指で摘まむように腹を挟み込まれる。中身を押し出されそうなその感覚に、我慢しきれず声を上げていた。
「ぅあっ、それ、やめろっ……!」
「あ、わ、ごめんね! い、痛かった?」
 彼女は弾かれたように手を放す。目の前で慌てている様子はよくわかったけれど、それどころではなかった。

 痛みこそは無いけれど、違う感覚が全身を暴れまわっていた。だめ、むり、でるでるでる、で、るっ……! 咄嗟に手が動いていた。
 彼女が散々触れた腹の下、溜め込まれた水分の出口へと引き寄せられるように伸びて、両足の間でぎゅうと物理的に塞いだ。
 そうやって押さえて、荒れ狂う衝動を必死にやり過ごす。今にも噴き出してしまいそうだった。吸い込む息すら背中を押すようで、は、は、と短い呼吸しか出来なかった。

「ごめんね、ごめんなさい、スアーミ。苦しい? 痛い?」
 彼女は見るからに慌てている。先程まで悪戯に動いていた手は宙で行き場を無くして狼狽えている。何か言ってやりたいが、自分自身が今、この衝動を収めるのに必死だったから何もできない。
 体を丸めて、ぎゅう、ぎゅうと出口を繰り返し押さえて、暴れ狂う衝動に必死に抗う。
 我慢しないとと思うのに、一方でもう無理だと弱音を上げていた。ぞわぞわと体の内側を悪寒が走り抜けて、ぞくぞくと体が粟立つ。吐き出した息は熱かった。

 浅い呼吸を繰り返しながら、そっと顔を上げる。大きな丸い目が不安をいっぱいに溜めてこちらを見ていた。何か言おうとしたけれど、彼女の手が近付いてきたので口を噤んだ。
 彼女なりに気を使ったのだろう、緑の爪が輝く指先が膨らんだ下腹部に触れて、優しく撫でた。それは痛む部分を撫でるような手付きだったけれど、今の俺には辛すぎる刺激だった。

 優しい刺激に体がぶるりと震える。その瞬間、腹の中で水風船が一気に縮もうとした。袋が縮めば、中身は押し出されて、出口へと押し寄せる。
「ぅ、あっ……!」
 吐き出す息に情けない声が乗る。腹を抱えて、両足の間に挟み込んだ手で、出口を強く塞ぐ。衝動を逃がす様に何度も何度も揉むけれど、一度押し寄せた波は一向に引かない。それどころか、次から次へと押し寄せて、全てを押し流そうとする。
 でる、でるでるでる、でるっ……! よろよろと体を起こす。片手を彼女の手について、反対の手はズボンの上から離せない。一挙一動、その合間にもぎゅうぎゅうと出口を揉んで、限界寸前のそこを必死に塞ぐ。

 重い体で何とか起き上がる。その瞬間、手の中でぶじゅ、と熱いものが破裂したように広がった。ぞわりと背中に嫌なものが走る。
「わ、るいっ、もうでるっ……!」
 早口にそう伝えて、ズボンと下着の前を一緒に引きずり下ろした。だ、め、でる、でるっ……! 中から性器を引っ張り出す間にも、じゅ、じゅう、と熱い雫が噴き出して止まらない。

 あ、あ、あっ、だめ、でる、でるっ……! 立ちあがる余裕はなく、膝立ちのまま、腰を前へ突き出した。手がぶるぶると震えて、持った性器の先端からは、じゅ、じゅ、と熱い液体が噴き出す。

 息を呑むのと同時に、ぶじゅーと野太い音がして熱いおしっこが噴き出した。
 待ち望んでいた瞬間に、体が震える。頭が真っ白になる。肩で息をしながら、自然と目を閉じていた。色んな感覚が遠ざかって、ただ体の中で渦巻く解放感に酔いしれていた。

「っは、あぁっ……」
 全身が気持ち良さに満たされて、胸の底から息が漏れた。ずっしりと重い腹が段々と軽くなっていく。自然と閉じていた目をゆっくり持ち上げると、手の先から噴き出すおしっこが見えた。
 野太い水流は空を裂いて伸びている。その先は、丁度ベレアルテの胸のあたり。柔らかく膨らみ、緑色の葉が肌を隠している場所へと、噴き出した太い水流はぶつかっていた。

 雫が飛び跳ね、白い肌と服代わりの緑色の葉が濡れていく。
「お水、お水。スアーミのお水」
 彼女の声は歌うように楽し気だ。その肌は濡れて、日差しを受けてきらきらと輝いている。
 白い肌は潤い、緑の髪は艶やかさを増していく。彼女の表情も心做しか心地良さそうに見えた。

 彼女の肌がしっとりと濡れて、その根元に水溜まりが出来ても、まだ腹は重いままだ。水流は勢いは無くしたけれど、それでもしょろしょろと噴き出し続ける。
「今日はいつもよりたくさん。ありがとう、スアーミ」
「……お礼は、変じゃないか」
「そう? だって、私のために沢山お水を持ってきてくれたのでしょう?」
 素直に返事が出来なくて、顔を逸らして誤魔化した。

 俺はウンディーネと人間の間に生まれた。体の姿形こそは人だけれど、中身はウンディーネに近いようだ。
 体は自然と水を吸収して、体の中に溜め込む。その量は人の何倍も多かった。
 水さえあれば食事の必要も無い。空気に含まれている水も吸収できたけれど流石にそれだけではいずれは干からびてしまうので、ある程度は水の側で過ごす必要はあった。

 ただ、出すときは人と同じように、下から出すことになる。つまりは溜め込んでいる場所は人と同じで、腹の下に袋がある。人の何倍も溜め込めるけれど、人と同じように限界があって、いつまでも溜めていることはできない。
 姿形や体の作りは人だけれど、中身はウンディーネ。どちらかに偏っていてくれれば、もっと楽に暮らせるのに、それは叶わない。嘆いてもどうしようもないけれど、時折親を恨みたくなる。

 出したものが水なのか、それとも人と同じように尿なのかはわからない。
 俺としてはこの行為は排泄で、出ているものは尿だと思う。でも確かに出ているものは透明で臭いもなく、体に温められて生温かいだけ。
 ベレアルテは水だ水だと喜んで体に浴びる。喜んでくれるのは嬉しいけれど、正直複雑ではある。そう思いながらも、今日も水を運んできている。

 たっぷりと時間を掛けて、やっと腹は空っぽになる。最後に勢いを無くした雫が彼女の手に数滴落ちて、それで最後。余韻に体がぶるりと震えて、胸の奥底から息を吐いた。
 彼女の腰のあたり、地面から生えたその部分には大きな水たまりが広がっていた。彼女の肌はさっきより瑞々しく、水滴が日差しを反射して輝いている。こちらを見つめる表情も一段と明るくなったように見えた。

 体はずっと軽くなっているのに、その分疲労が圧し掛かる。のろのろと下着とズボンを引き上げてから、そのままごろりと彼女の手の上に寝転んだ。
 柔らかな手の平が、ハンモックのように体を覆う。
「ありがとう、スアーミ。すごく元気になったわ」
 その言葉と共に、体に影が掛かる。先程までに悪戯に動いていた手が、日差しを遮るように上から被さっていた。
「私にはこんなことしかできないけれど、ゆっくり休んでね」
 返事の代わりに、体を支えてくれる手の平を撫でる。こちらを見つめる丸い目が柔らかく細められる。その目に映る自分も同じ顔をしているように感じた。

 

この作品はノクターンノベルズpixivにも掲載しております。

このサイト上にある画像・文章の複製・転載はご遠慮ください。
初出: 2022年10月9日(pixiv・サイト同時掲載) 掲載:2022年10月9日

3
成人済の時々物書きです。 スカ、女攻め萌え。BLよりはNLやGLが好きです。
18歳以上ですか? ここから先は、成人向けの特殊な趣向の小説(女の子、男の子のおもらし等)を掲載しています。