※大スカ要素があります
家の中はしんと静かだ。両親は朝早く仕事に向かうので、ひとり朝食を取るのも戸締りを確認して出発するのもいつものことだった。
靴を履こうとして、玄関の時計が目に入る。まだ少し時間があることを確認してから、鞄を置く。それから玄関横の扉を開けた。
狭い空間にはふわりと優しい芳香剤の香りが広がっている。まめに掃除をしているので、家のトイレは清潔で安心できる。プリーツスカートを持ち上げて、中に履いていたハーフパンツと下着を下ろして、白い便器に腰かけた。
少し前に済ませたので、催してはいない。それでもお腹に手を当てて力を入れてみる。んん、と声が漏れたけれど、誰もいないので気にする必要もない。
そのまましばらく頑張ってみたけれど、ぶすーと気の抜けた音と共におならが出ただけだった。息を止めて更に頑張ってみるけれど、それ以上は何の成果も無かった。
止めていた息を吐き出す。一応トイレットペーパーで拭って、水を流す。服装を整えて、それからもう一度溜め息を吐いてから、トイレを出た。
玄関に置いていた鞄を肩に掛けて、靴を履く。外へ出て、朝の日差しの眩しさに目を細めた。そして鍵を掛けたのを間違いなく確認してから、エレベーターへ向かった。
休み明けは憂鬱だ。それが連休明けだと更に憂鬱さが増す。そして、この三連休は今までにないくらい楽しい時間だったので、今日から始まる日常は余計に色褪せて感じられた。
研究職の両親は朝も早ければ帰りも遅い。帰宅できずに、職場に泊まりこむ事も珍しくない。休みも少なく、カレンダー通りに取れることなどまず無かった。
そんな両親が、この三連休は珍しく二人揃ってお休みを貰ってきた。幼い頃からそんなことは殆ど無かったので、家族揃って過ごせる休みは本当に嬉しかった。
一日目は両親を労おうと、私が食事を作った。美味しい物を食べてほしいあまり、張り切って作り過ぎてしまったけれど、両親は喜んでたくさん食べてくれた。
私も褒められたことが嬉しいのと、いつもの自分の料理も家族で囲むと非常に美味しく感じられて、いつもよりたくさん食べてしまった。
二日目は家族三人で出掛けた。昨日の残り物を朝食にしてから、買い物に行って、洋服と靴を買ってもらった。お昼はレストラン、そして夜はお寿司を食べた。どちらも本当に美味しかった。
最後の三日目は家でゆっくり過ごした。適当にある物で朝食を食べて、そのまま皆でテレビを見て、見るものが無くなったら映画のDVDを流した。父は途中で寝てしまって、母はその間にホットケーキを焼いてくれた。バターと蜂蜜をたっぷり掛けたホットケーキは本当に美味しくて、お代わりが欲しいと言うと、母は嬉しそうに残りの生地を焼いてくれた。
そうやってたくさん食べると眠くなって、ソファで眠る父の横で私も眠ってしまった。起きた時にはもう日が暮れていた。夕食を作ろうとする私に、両親はタブレットの画面を見せる。色んな出前のお店がずらりと並んでいて、好きな物を選ばせてくれた。
すごく悩んで、パーティーで食べるようなオードブルを選んだ。机を占領した大きな皿を目の当たりにして、全部食べられるか不安になったけれど、皆で食べるとあっという間になくなってしまった。
『いつもひとりにしてごめんね』
『またこうして休みを取るから、もう少しひとりで頑張ってくれる?』
夕食の片付けをしていると、両親は言った。
『うん、大丈夫だよ。お父さんもお母さんも、お仕事頑張ってね』
そう言うと、両親は安心したように笑ってくれた。これでお休みも終わりだと思うと、寂しくなったけれど、それを隠すのは得意だった。
入浴を終えてパジャマでリビングに戻ると、母しかいなかった。父がどこに行ったのか聞こうとした時、がちゃりと玄関の扉が開く音がした。戻ってきた父は白いビニール袋を提げていた。
何だろうと思っている私に、父は袋の中身を取り出す。父の手にあるのはアイスで、つい頬が緩む。父と母と私、皆で並んでアイスを食べて、歯磨きをして。
その日、ベッドに入るまで両親は一緒にいてくれた。もうひとりで眠れる年齢なのに、両親は手を握って、頭を撫でてくれた。
明日起きたら家には誰にもいないことは簡単に想像できた。でも考えたくなくて、この三日間のことを考えていると、いつの間にか眠ってしまっていた。
両親は私が何かを求めると喜んでくれた。食事に至っては特にそうで、たくさん食べると笑ってくれて、お代わりを求めると嬉しそうに応えてくれた。
私も両親が喜んでくれるのが嬉しくて、いつもよりずっとたくさん食べてしまった。食べ盛りとは言え、流石に食べ過ぎた。この三日間で少し太ったかもしれない。
電車に揺られながら、ぼんやり外を見る。お腹はいつもよりずっしりと重くて、全身が少し怠くもあった。
でもこの重さは、三日間の楽しかった思い出の証。両親と過ごした時間と一緒に食べた物が形を変えてお腹に溜まっていると思うと、気怠さも少し和らぐ。この三日間は夢でも幻でもなく、実際に過ごした時間なのだと実感できるのが嬉しかった。
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午前中の授業を終えて、昼食を取る。休み明けの授業はいつもにも増して退屈で、でも長時間受けるとお腹が空いた。コンビニで買ったパンとサラダは味気ない。サボらずにお弁当を作ればよかったなと内心思う。
夕食は美味しいものが食べたい。でも何より求めているのは、また両親と一緒に食事をする機会だった。別に高いものじゃなくて良い、このコンビニのパンでも良いからお喋りをしながら一緒に食べたいなと思いながら、パンの最後のひと口を飲み込んだ。
ゴミを片付けて、午後の授業の準備を整える。今日は座学ばかりなのは気楽だった。その上、午後は移動教室もないので、このまま自分の席でのんびり受けられるのが有難い。
授業開始まではまだ時間があるので、トイレに向かう。学校のトイレは駅よりは綺麗だけれど、それでも古いからか少し汚く感じる。その上、和式なのが更に抵抗があった。だからと言って学校にいる時間は長いので、使わずにいる訳にもいかない。
ハーフパンツと下着を下ろして、白い便器の上に腰を下ろす。レバーを踏んで水を流してから、お腹に力を入れると、おしっこがちょろちょろと噴き出した。
しゃがんだ体勢だからか、お腹に圧が掛かる。あ、と思うと同時に、ぷすーとガスが漏れた。音はしなかったけれど、つんと鼻に突く臭いが広がって頬が熱くなった。
お腹は朝から変わらず重い。そっと手で撫でると、ぽこりと膨らんでいるのがわかる。三日間の暴飲暴食の成れの果て。幸せな時間の証だとは言え、流石に苦しくて、気持ち悪さも感じ始めていた。
正直に言うと、少し前から鈍い痛みは感じていた。今、頑張れば出るかもしれない。でも、学校のトイレにはあまり長居したくなかった。和式トイレ、しかも学校で大きい方をするのは抵抗がある。するとしても、家でゆっくり落ち着いてしたい。
帰ったら頑張ってみようと思いながら、トイレットペーパーに手を伸ばした。
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五限が終わり、残りの授業はあと一つ。今使った教科書とノートを閉まって、次の授業のものを出す。それから、ブラウスとスカートの上からお腹を撫でた。
鈍い痛みは徐々に増していた。くるる、とお腹が音も無く静かに鳴る。空腹とは違うお腹の動き。胃ではなく、もっと下の方。ここ数日、動いていなかった腸が緩やかに動いているようだった。
たくさん食べたら、その分出すのが人体の基本だ。三連休プラス本日、一度もお通じが無かったので、食べたものは全てこの体の中に溜め込まれていることになる。腸はそんな成れの果てが詰め込まれて膨らんでいる。
ずっと落ち着きを保っていたけれど、今になって本格的に動き始めたらしい。ずっしりと溜まった物を出口へ向かって運び出そうとする。鈍いけれど、確かな痛みと重みに、静かに息を吐く。
トイレ、行きたい、けど。教室の入り口に目を向けると同時に、予鈴が鳴った。賑やかだった教室が段々と静まり始める。
お腹を宥めるように手で撫でて、静かに息を吐く。大丈夫、我慢できる。学校のトイレではしたくない。家まで、我慢できる。
大丈夫だと頭の中でもう一度繰り返す。そうしていると、教室の扉が開いて教師が入ってきた。それを追いかけるように本鈴が鳴って、授業が始まった。
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ぐるるる、とお腹が唸る。黒板の内容をノートへ書き写してはいたけれど、頭には何にも入っていなかった。
お腹が痛い、トイレに行きたい。静かにゆっくりと息を吐いて、何とかお腹を落ち着かせようとする。休憩時間にトイレに行っておけばよかった、と頭の片隅で考え始めていた。
出口に内側から圧が掛かる。ぐうっと押し寄せるのは固体では無く気体だった。うあ、どうしよう、おなら、でちゃいそうっ……。ここは教室、前にも後ろにも横にも人がいる。こんな状況でおならなんて絶対に出来ない。
お尻に力を入れて、必死に我慢する。シャーペンを握りしめて、反対の手でお腹を撫でる。呼吸をすることに集中していた。顔が上げられず、机上の自分のノートをただじっと見つめていた。自分の癖字を視線でなぞる。
そうやって我慢していると、ガスが逆流してお腹の中でごぽぽっと弾ける音がした。その感触に、かあっと顔が熱くなる。この音、聞こえてない、よね。そろそろと顔を上げたけれど、周りは黒板を見つめているだけ。そっと胸を撫でおろした。
おならをやり過ごすと、ほんの少しだけお腹の痛みが落ち着いた。安堵の息と共に視線を上げると、黒板には更に文字が増えていた。随分引き離れていてしまっていて、慌てて続きを書き写す。
お腹の痛みは引いたけれど、ずっしり重いのは変わらない。はやく授業が終わりますように。はやく家に帰って、ゆっくりトイレに籠りたい。
部活は無いけれど、帰宅するにはこの後電車を乗り継がなければいけない。手を動かしながらさり気なく時計に目を向ける。授業が終わるまで後三十分程だった。
そのまま落ち着いてくれていたら良かったのに、またお腹は唸り始めた。じわじわ増す痛みは先程より強くて、左手でお腹を擦る。
腸が蠕動して、中身を出口へ運んでいく。ゆっくりと、でも確実に、重い塊が動いている。ぐるるる、とお腹が唸りを上げた。
痛い、お腹痛い、トイレ行きたいっ……! シャーペンを握った手が震える。目を向けた先で、授業終了まではあと十分程となっていた。
あとちょっと、たった十分だからっ……! 家まで我慢する当初の計画はもう頭の中で薄れ始めていた。和式が嫌だとか、学校ではしたくないとか、そんなことは言ってられないくらい、切羽詰まっていた。
背中にびっしょりと汗が纏わりついて、額にも汗の粒が浮く。はー、はー、と呼吸をするのもやっとだった。
お腹痛いっ、トイレ、トイレトイレトイレっ、トイレ行きたいっ……! ぎゅるるる、とお腹が唸って、全身に悪寒が走る。お腹を下している時の刺すような痛みとは違う、鈍いけれどずっしりと重い痛み。活発だからこその、健康的な便意。出したくて、その欲求に任せて体が勝手に息んでしまいそうになる。
お尻の穴が、ぷくっと膨らむ。その内側、すぐそこまで迫った物を感じて、背筋に力が籠った。押し寄せるのはまた気体。でも、重い塊も確実に降りて来ていた。
あ、あ、だめ、おなら、でるっ……! 我慢しようと思ったけれど間に合わず、膨らんだ出口の僅かな隙間からガスが抜けた。ふしゅー、と音もなくおならが出て、その感触に体が強張った。
数日間お腹の中に居座った物はそれだけ熟成されている。つん、と鼻に突く臭いを感じて、俯いた顔を上げられない。全身焼けるように恥ずかしくて、体が静かに震える。
一度出せば少しは落ち着くかと思ったのに、お腹は更に活発に動いていた。ぷ、ぷす、ぷしゅう。窄まった出口の隙間から、お腹に溜まっていたガスを吐き出す。その感触は気持ちよくて、痛いほどに張り詰めていたお腹も少し楽になっていくのを感じた。
あと、ちょっとだけ、少しだけだから。我慢しないといけない、そう思う気持ちを押しのけて、体が目前に見えた快感を求めてしまう。
お腹に少しだけ力を入れる。お尻の穴がぷくっと膨らむ。ぷっ、ぷす、ふしゅー。ひくひくお尻の穴が疼くのに合わせて、おならが噴き出す。
はあっと息を吐いたと同時に、お腹がごろごろと更に動く。お尻が窄んでは膨らんで、また窄んで。それから、押し出されるように綻ぶ。
ぷううぅ……! 体が震えて、膨らんだ出口から甲高い音と共におならが出た。恥ずかしさに、ぎゅっと目を瞑る。それと同時に、授業終了のチャイムが鳴り響いた。
ひとり焦る私を置いて、教室内は授業終了の合図と共にざわざわと賑やかになっていく。ば、ばれてない……? 幸運にもおならの音はチャイムにかき消されたみたいだった。
冷や汗がびっしょりと全身を濡らしている。額の汗を拭って、私も周りと同じように教科書を片付けた。
何度もガスを出したからか、お腹の痛みは少し落ち着いていた。これなら家まで我慢できるかもしれない。そう思っていると、ホームルームが始まる。連絡事項を聞きながら、一度は引いた冷や汗がまた滲んだ。
折角落ち着いていたのに、ぐるるるる、とお腹が動くのを感じた。ガスを出して少し余裕が出来たお腹は、更に活発さを増していく。
重くずっしりした物を出そうと蠕動する。先程よりも強い便意に、机の陰で必死にお腹を擦った。
や、やっぱり無理、トイレもう我慢できない……! つい先程復活した『家まで我慢』計画はもう消えていた。
ホームルームが終わったら、すぐトイレに行こう。ぐるぐる唸るお腹の痛みは更に増していく。はー、はー、と出来るだけ静かに、穏やかな呼吸を繰り返して、痛みを逃そうとするけれど、あまり効果はない。
ああ、だめ、トイレトイレトイレ、うんちしたい、うんちっ……! 三日間の楽しかった思い出が、今は猛烈な便意と変わって体の中で暴れまわる。出したい、はやく出してすっきりしたい。椅子の上でお尻を揺すって、荒れ狂う波を必死に堪える。
体はこの苦しみから逃れようと、勝手に動こうとする。勝手に息んで、この便意の元凶を体の外へと追い出そうとする。駄目、絶対駄目。そう思うのに、すぐそこに見える甘美な欲求に飛びつきたくてたまらない。
教室のこの座席をトイレにしてしまいそうになるのを、理性が引き千切られそうになりながら必死に我慢した。それなのに、ぐぎゅるるる! と追い打ちをかけるようにお腹が唸って、便意は更に激しさを増す。思わず声が出そうになったのを必死に唇を噛んで堪えた。
手足が震えて、上履きの底が床を踏む。両手でお腹を抱えて、出来るだけ刺激しないように呼吸を繰り返す。痛い、お腹痛いっ、トイレ、トイレトイレトイレ、うんち、うんちしたい、うんちっ……! もう他のことは考えられない。
許されるなら今この瞬間にでも体の欲求に任せて思いっきり息んで、お腹の中で暴れる重い塊を出したい。そんなことは絶対駄目だとわかっているけれど、生理現象は理性を追い越してしまいそうになる。
もう少し、あと少しだから。そう思って必死に我慢するけれど、お尻の穴はさっきからひくひくと疼いていて、もうすぐそこまでずっしりとした塊が押し寄せていることがわかった。
出口がぷくっと膨らむ。あ、あ、だめ、だめだめだめ、だ、めっ……! ぎゅうとお腹に力を入れて、必死に我慢する。一瞬は萎んだお尻の穴は、内側で爆発しそうに膨らんだ物を吐き出そうと綻ぶ。
うあ、あ、あ、ああっ……! ガスが押し寄せる。きゅうと窄まった出口の中心を、気体が通り抜けていく。ぶしゅう、ぷ、ぷすっ。呼吸に合わせるように、おならが出る。
つんと鼻につく据えた臭いに、恥ずかしくて顔を伏せた。恥ずかしい、もうこんなの嫌なのに、お腹はまだごろごろと動いている。さっきは落ち着いたのに、今度は全然治まらない。お腹痛いっ、トイレ、トイレぇっ……!
両手はスカートを強く握りしめて、がくがくと震える。お腹が張って重い。楽な体勢を求めて前屈みになってしまう。お尻の穴がひくひくする。またおならが出そうで、必死に我慢する。もうちょっと、あと少しだから、お願い、はやく、はやくっ……!
汗を拭って、そっと顔を上げる。ぎい、と軋む音が周りから聞こえた。気付くといつの間にかホームルームは終わっていて、皆が席を立ち始めていた。
……お、終わったっ、トイレっ、トイレトイレトイレっ……! 鞄を掴んで、私も慌てて立ちあがる。固い椅子からお尻を浮かせた瞬間、体勢が変わったのか、お腹に圧が掛かる。
ぶううぅっ……! 椅子が軋む音、話し声、足音。それらの音に交じって、野太い音がスカートの内側で響いた。ハーフパンツと下着の内側で、お尻の穴が大きく開いて、勢いよくおならを吐き出していた。
周りの空気が一瞬止まる。私もその場で固まる。顔が上げられない。それなのに、視線がこちらに向けられるのがわかった。
全身が熱い。恥ずかしくて、居た堪れなくて、この場から消えたくて。でもそんな思いすら掻き消す衝動が体の中で暴れまわる。ぐるるるる、とお腹が唸りを上げる。腸が蠢く痛みに、はう、と声が漏れる。
と、いれ、トイレっ、トイレトイレトイレっ……! 俯いたまま、鞄を掴んで教室から飛び出した。
廊下を走る。おならのおかげか、少しだけお腹に余裕が出来ていた。でも、これは今ひと時だけだとわかっていた。次の波が来る前にちゃんとトイレに行かないと、大変なことになる。ぺたぺたと上履きの底が床を踏んで、廊下の端へと駆けていく。
大した距離でもないのに、待ち望んだ場所はとても遠く感じた。やっとの思いで辿り着いて、安堵の思いで中に足を踏み入れようとして、そこで初めて気付いた。
中には数人の生徒がいる。手にはほうきやホース。足元は長靴。
何故忘れていたんだろう。放課後は清掃時間だ。私も当番に当たった事があるのに、今の今まで頭から消し去られていた。
掃除はまさに今から始まるようで、床のタイルはまだ乾いたままだった。頼んで先に使わせてもらおうかと思ったのは一瞬だけ。そんなことは絶対に出来ないとすぐに気付いた。
私がそう申し出たら、多分断わられることは無いと思う。個室に駆け込む私を見送って、清掃当番の子は私が出てくるのを待つのだろう。個室の外、扉のすぐ向こう側で。
そんなの絶対に無理、出来ない! 想像しただけで恥ずかしくて、トイレ入り口の更に手前で足が止まって動かない。いっそ、ホームルームの最中くらい切羽詰まっていたら、恥ずかしさを感じる余裕もなく、『先に使わせて!』と中に飛び込めたかもしれない。
片手で肩の鞄の紐を、反対の手でお腹を撫でる。ぐっと唇をかみしめて、床に張り付いた足を引きはがす。それから反対側にある階段を駆け下りた。
一番下まで一気に降りると、流石に息が切れる。少し落ち着いたお腹がまた痛み出すのを感じながら、自分の下駄箱に向かう。上履きから履きなれたローファーに履き替えると、そのまま校門に足を向けた。
駅、駅のトイレっ……! 先程階段を駆け下りたおかげで足は震えていて、早歩きが今は精一杯だ。それでもとにかく足を動かして、最短距離で歩いていく。他の人をどんどん追い越して、ただ真っすぐ前を見つめていた。ふー、ふー、と荒い呼吸を繰り返していた。
トイレ、トイレ、トイレっ……! お腹が音を立てて唸る。痛い、うんち、うんちしたい、トイレ、はやくトイレぇっ……! 膝が震える。もう今すぐにでも足を止めて、この欲求に任せて、思いっきり息みたい。
でも、それだけは絶対に駄目だとなけなしの理性が必死に抗う。お尻がひくひくと疼いて、ぷ、ぷす、とおならを漏らす。もう我慢できない、本当に無理、トイレ、トイレ、うんち、うんちっ……!
交差点に差し掛かる。運悪く目の前で信号が赤に変わってしまった。ここを渡れば、駅はもうすぐそこだ。階段を上がって、改札を通れば、すぐ正面にトイレがある。そこまでもうちょっとだけ我慢、我慢するの、あとちょっとだからっ……!
お腹が痛い。うんちがしたくてしたくて堪らない。ちょっとでも気を抜いたら、体に任せて、お腹に溜まった重くずっしりした塊を下着の中に出してしまう。
想像しただけでその光景はおぞましくて、それだけは絶対に嫌だと必死に抗う。今、何とか我慢出来ているのはその思い故かもしれない。
信号はまだ変わらない。左右に行き交う車を見つめながら、はー、はー、と呼吸を繰り返す。お腹が獣のように唸りを上げる。腸がうねって、轟いて、いっぱいに詰め込まれた中身を外へと運び出そうとする。
もう出口寸前まで固く歪な塊が押し寄せているのがわかった。うんち、うんちしたい、もうでる、でちゃう、はやくトイレ、はやくぅっ……!
張り詰めたお腹を撫でて、信号を見つめる。横の信号の青色がちかちかと点滅を繰り返す。もうちょっと、あと少し。僅かに見えた希望に縋りつこうと、体の中で欲求が暴れまわった。
「ぅぁ、あっ……!」
今までよりずっと強い便意に、思わず声が漏れた。出口に激しい圧が掛かる。くぱくぱと開いては閉じてを繰り返した出口が、ぐわあっと大きく広げられる。
窄まりを内側から押し広げる固く大きく歪な塊に、冷や汗でびっしょり濡れた背筋に悪寒が走った。咄嗟に、スカートの上から手で押さえつけて、無理やり塞いだ。
だ、めっ、でちゃう、もうむり、トイレ、うんち、うんちでるっ……! 少しでも楽な体勢を求めて、体が前屈みになっていた。
うんち、うんちうんちうんち、もう無理、トイレ、はやくトイレ、はやくっ……! ぐりぐりとスカートの上から指先で出口を塞ぐ。
点滅していた横の信号は赤色が点灯して、その代わりに正面の信号が青に変わる。押さえていた手を離して、重い足を動かして、横断歩道へ足を進めた。もうちょっと、あと少し。既に正面に駅は見えている。そこまで我慢するだけだから。
僅かに残った理性は千切れる寸前まで引き延ばされている。泣きそうになりながら、重い体を引きずってとにかく前に進んだ。
何とか駅には辿り着いた。階段を一段ずつ確実に上っていく。足を動かすたびに、窄んだお尻の穴からぶ、ぶす、とおならが漏れる。一段、また一段と上がって、あと残り数段となったところで、お尻の穴がまたぷくっと膨らんだ。
窄んで、膨らんで、窄んで。それから、ぐわっと抉じ開けられる。先程押し戻した歪なごつごつした塊がまた頭を出す。
あ、ああ、だ、めぇっ、だめ、だめだめだめ、だめ、だめぇっ……! 周りに他の人がいるのはわかっていたけれど、このままだと歪な塊を欲求に任せて出してしまいそうで、スカートの上からぎゅううっとお尻の穴を押さえた。
下着とハーフパンツとスカート、三枚の布越しなのに、ごつごつとした固い塊の感触を指先に感じる。はー、はー、と呼吸を繰り返し、お尻を押さえたまま残りの数段を一気に上り切った。
正面には改札、その向こうに渇望する場所が見えた。
お腹を刺激しないように浅い呼吸を繰り返しながら手をお尻から離して、鞄の中から定期入れを取り出す。震える足で改札に近付き、震える手で定期を通す。そうして駅の構内に入ってしまえば、もう障害になる物は何もなかった。
といれっ、といれといれといれ、うんち、うんちっ……! それしか言葉を知らないかのように、頭の中は同じ言葉を繰り返す。
正面にある階段の横に細い通路が伸びている。その先がトイレになっているのはよく知っていた。定期を鞄へ戻しながら、必死に足を動かす。もうすぐそこ、あとちょっと、本当にあとちょっとだからっ……!
縺れそうな足取りで、何とか階段まで辿り着いて、その横の通路を進む。すぐそこに二つの入り口が見えた。向かって右側が女子トイレ。
あと少し、もうちょっとだけ、我慢、我慢するのっ、我慢っ……! ひくひく疼くお尻の穴を必死に引き締めて、よたよたと足を動かす。
と、いれ、といれといれといれっ、うんち、もうむり、でちゃう、もれちゃう、はやく、はやくぅっ……!
もう本当に限界で、泣き出しそうになりながら必死に歩いた。
やっと辿り着いたと思ったのと、足を止めたのと、さっと血の気が引くのはほぼ同時だった。扉も何もないトイレの入り口。拒むものなんてない、はず、なのに。
ピンク色のタイルに置かれた異物。靴の爪先でちょんと突けば倒れてしまいそうな程、小さな黄色い看板。大きく書かれた文字はぐちゃぐちゃの頭でも理解できた。
『清掃中』。その言葉に呼応するかのように、お腹が激しく蠢いた。私の体内を掃除して、不要になったものを排出しようと腸がうねる。ねじ切れそうな痛みに、我慢しきれず声が漏れた。
「ぁ、や、あぁっ……!」
うそ、だっ、どう、しよう、どうしようっ……! もう我慢できない、トイレ、うんち出る、出ちゃう、本当に無理っ……!
絶望に涙が浮かぶ。必死に引き締めていたお尻の穴が、内側から抉じ開けられる。で、る、でちゃう、あ、あ、どうしよう、といれ、といれっ……!
右を見ると壁。正面には黄色い看板。そして左側には、同じような入り口。違うのはタイルが青いことと、黄色い異物が無いこと。
窄まった出口が開いていく。スカートの上から押さえた指の先で、三日間の楽しかった時間の成れの果てが顔を出す。視界が滲む。は、は、と呼吸が浅くなっていく。
だ、めっ、だめ、だめ、ごめんなさい、もう無理なんですごめんなさいっ……! お尻を押さえたまま、青いタイルへ足を踏み出す。
未知の領域、男子トイレへ。
もう余計なことは考えられなかった。ただ、この荒れ狂う便意から解放されたかった。この苦しさを受け止めてくれる場所なら、もうどこでも良かった。
飛び込んだ先には、幸運なことに人の姿は無かった。左右にある手洗い場や男性用のトイレに目を向ける余裕もなかった。
入って正面、幾つか並んだ個室。これだけは男性用も女性用も変わらない。初めての場所であっても使い方は体に染みついていた。
二つある個室はどちらも扉が開いていた。左側の個室へ飛び込み、片手で鍵を掛ける。反対の手で鞄を投げ捨てた。
中には一段高くなった和式トイレがあった。嫌だと思った学校のトイレと同じ形。その上、学校よりずっと汚くて、つんとしたアンモニアの臭いが鼻に突く。でも、今はこれ以上ない楽園に思えた。
「あ、あ、あ、あぁっ……!」
スカートを上げて、中のハーフパンツと下着を一緒に掴む。片足を段の上へ持ち上げると、お尻の窄まりはぐわっと口を開く。中からごつごつとした重い塊が頭を出す。その感触にぞわあっと背中に悪寒が走る。
反対の足も上げて、トイレを跨ぐ。そして、ハーフパンツと下着を一緒に引きずりおろした。その動作は、ずるりと歪な固い物が出口から飛び出すのと、ほぼ同時だった。
しゃがみ込むと同時に、ごとっ! と固い物が落ちる音がした。お尻の窄まりは大きく広げられ、中から石のように固くなった物がぼとりごとりと落ちていく。
「んぁ、ん、ん、んんぅっ……んんんっ!」
暴れ狂う便意に任せて、思いっきり息んでいた。やっと、やっとうんちできるっ……! お尻の穴は皺の一本まで伸ばされて、大きく押し広げられる。数日間、お腹の中を占領していた物は水分を吸収され、かちかちになっていた。
でる、うんちでる、でるぅっ……! 思いっきりお腹に力を入れる。お尻の穴が大きく開く。でもそれでも足りず、固いうんちは出口を更に抉じ開けようとする。
荒れ狂う便意とは裏腹に、ゆっくりゆっくりと大きな頭が這い出てくる。余りの大きさに途中で息切れしてしまう。一旦息を吐いて、吸って、それからもう一度。
「ぅん、ん、んっ、んんんっ……!」
痛みにも似た快感が腰のあたりに走る。出したい、出したい、うんち、お願い、出てっ……! 体も心も今は何に邪魔されることもなく、純粋な欲求に任せて体に力を入れる。
ぼこぼこと歪で、固くて、大きい塊をお尻に感じる。ずるり、ずるりとゆっくりと出てきて、そして。
「んっ、んんっ、ぅ、ぁ、あっ、ふあぁぁぁっ……!」
ぼちゃぁんっ! と大きな音がして、大きなうんちはやっと私の体から完全に離れた。それを追いかけるように、ぶううううう! と大きな音を立てておならが鳴り響いた。
腰から背中へ、ぞくぞくとした快感が走る。大きなおならへの恥ずかしさもあったけれど、それ以上の気持ち良さに、思わず声が出ていた。
ぽかんと口は開いたままで、胸の奥まで呼吸を繰り返す。避けそうな程に広がったお尻の穴は一気に窄まり、ひくひくと疼いていた。
咽かえるような臭いが狭い個室内を満たす。数日間、お腹の中で熟成された物はすごい臭いで、ごほ、と思わず咳き込んでしまう。ぼやけた視界でただ正面のタイルを見つめていると、お腹が再び蠢いた。ぐるるるるる! と今度は外にも聞こえそうな音を立てて、蠕動する。
あ、あ、で、るっ、まだ、うんちでるっ……! 便意に任せて、もう我慢することもなく、思いっきり息む。くぱくぱと萎んでは開いてを繰り返していた出口が、再び大きく口を開く。先程よりは小さい、それでも普段よりずっと大きなうんちがお尻の穴を押し広げて、体の外へと出ていく。
「んっ、んんんぅっ……!」
みちみちと粘質な音がする。お腹の痛みや苦しみが消えていく。引き寄せられるように視線が下へと向いていた。
ずるずると尻尾のように伸びたうんちの先端が、先程出たぼこぼこしたうんちに合流する。柔らかくくたりと折れ曲がって、最初の歪な物を隠すように落ちていく。
「んんっ……! っあ、はあぁっ……!」
べちゃ、と音がして、うんちの最後が飛び出す。は、は、と全身で呼吸を繰り返しながら、目を閉じてもう一度息む。
まだお腹はごろごろしていて、気持ち悪さが残っている。楽になりたくて、気持ち良さを感じたくて、呼吸を止めて思いっきり息む。
沢山作った食事、外食のステーキとお寿司、お母さんのホットケーキ、出前のオードブル、それから夜のアイス。もしかしたら今朝の朝食と昼食も、既に消化されてうんちになってしまったかもしれない。
楽しかった三日間も、憂鬱だった今日も、体の中を巡って、必要なものは吸収されて、余分なものはこうして吐き出されていく。
みちみちみち、と粘っこい音と共に、更にうんちが飛び出す。今度は留まることなく、一気にずるずると最後まで飛び出す。それに息を吐くと、追いかけるように柔らかい物がどんどん降り注ぐ。
ぶ、ぶちゅ、べちゃ、と汚らしい音を立てて、うんちが出て、お腹はどんどん楽になっていく。
ぶびゅうう、と最後におならと一緒に緩いものが出て、やっとお腹は楽になった。あれだけ重かった体は嘘のように軽くて、すっきりしていた。
はああ、と胸の底から溜め息が漏れる。全身、汗でびっしょりと濡れていた。額を伝った汗が目元に落ちて、じいんと染みる。ブラウスの袖口で拭って、もう一度息を吐いた。
すっきり、した。きもち、よかった。……間に合って、よかった。安堵の息が漏れると、ぶるりと体が震えて、今度はおしっこが噴き出す。ぴちゃぴちゃと水の跳ねる音と共に、僅かに残っていた違和感すらもが消えていく。おしっこも全部出て、本当にお腹は空っぽになった。
そして、咽かえる物凄い臭いに、思わず咳き込んだ。恐る恐る足の間を覗き込むと、焦げ茶色のうんちが白い便器を埋め尽くしていて、自分でもちょっと引いてしまった。
黒くぼこぼことした大きな塊の上に、焦げ茶色の太いもの。それの上にはべちゃっとしたペースト状のものが乗っかっていて、便器の縁すれすれまで積みあがっていた。
これだけの物がお腹に入っていたなんて、正直信じられない。見ているだけでも恥ずかしくなって、すっきりした体が熱くなるのを感じた。
トイレットペーパーを取って、お尻を拭う。じいんと余韻が残っていて、柔らかい紙が触れただけでもびくりと体が跳ねた。何度か拭ってから、膝を伸ばして立ち上がる。長い時間しゃがんでいたから、足が強張っていた。
下着とハーフパンツを上げると、やっと気持ちも落ち着いた。硬くなっていた足を伸ばして、前方のレバーを踏む。ざばーっと水が流れて、堆く積みあがった焦げ茶色の塊が押されて、そして、止まる。
「えっ……」
少し時間を置いて、もう一度レバーを押すけれど、うんちの塊はほんの少し動いただけ。完全には流れてくれない。
う、うそだ、ど、どう、しようっ……!? ばくばくと心臓が早くなる。狭い個室を見回しても、掃除道具なんてない。
そして、もう一つ気が付いた。外に掃除道具入れが無いか見に行こうと思って、鍵を開ける前に体がぴたりと固まる。さっと血の気が引いた。
ここ、男子トイレだったっ……! 外に出ようにも、誰かに見られたら、大変なことになってしまう。ど、どうしよう、どうしよう!?
トイレが流れない、しかも男性用。二つの問題に頭の中はパニックだった。トイレに駆け込んだ時より混乱しているかもしれない。
もう一度水を流してみたけれど、やっぱり大量のうんちは流れない。そんなに出したのかと、自分でも恥ずかしくて泣きそうになった。
もう、ここから逃げ出したいけれど、それすらどうしたら良いのかわからない。混乱しながらも、扉に耳を当てて、外の物音に聞き耳を立てた。
足音や物音は聞こえない。震える手で、出来るだけ静かに鍵を開ける。それからほんのちょっとだけ扉を開けて、外の様子を窺う。
なんと幸運にも人はいなくて、考えるより先に体が動いていた。扉の横に投げ捨てていた鞄を拾い上げて、そのままトイレの外へ向かって走っていた。
十数歩でトイレの外へは出ることが出来た。青いタイルからグレーの通路へ足元が変わって、足を止める。そこで一息つくと、丁度女子トイレから女性が出てきて、足元の黄色い看板を持ち上げるのが見えた。
掃除の人だ、と思うと同時に、自分が個室に残してきたものが頭の中いっぱいに広がる。咄嗟にトイレに背中を向けて、そこから逃げだした。
足を止めることなく、そのまま階段を駆け上がる。ホームには丁度電車が到着したところだった。そのまま飛び乗って、開いていた席に座る。少しすると扉が閉まって、電車が走り出して、そこでやっと全身から力が抜けた。
とんでもないことをしてしまった。もし掃除の人が次は男子トイレを掃除するとしたら、個室の中に残してきたものを見られてしまう。
私がしたってバレたらどうしよう……! 考えるだけで怖くて恥ずかしくて消えたくなる。さっき一瞬だけ顔を合わせてしまった。でも、男子トイレから出てきたところは見られていない、と思う。大丈夫、だ、よね。
そうやって自分に言い聞かせても、不安で心臓がばくばくした。でも体はすっきりしていて、朝の憂鬱さが嘘のように爽快だ。膝の上で鞄を抱えて、顔を伏せる。恥ずかしい、恥ずかしくて堪らなくて、顔が熱い。
ごめんなさい、本当にごめんなさい。どうか、私だとばれていませんように。ばくばく煩く騒ぐ心臓を宥めながら、すっきりしたお腹をそっと撫でた。
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初出: 2022年8月12日(pixiv・サイト同時掲載) 掲載:2022年8月12日