前編は こちら
※以下、性行為の描写があります
お風呂場まで連れて行ってもらって、浴室の床に下ろされる。タイルの床は冷たくて、余計に体が冷える。
「はい、ばんざーい。脱ごう」
「自分で脱ぐ……」
「さっきも言ったけど、今日は全部甘えて良いんだよ。あと、俺が脱がせたい」
そう言われると逆らえない。言われたとおりにおずおずと腕を上げると、彼の手が服を持ち上げて頭の上へ持ち上げていく。そのままカットソーがするすると脱がされて、次はスカート。ホックが外されて、すとんと床に落ちる。
落ちたスカートを拾う彼を見ながら、靴下は自分で脱いだ。靴下もぐっしょりと濡れていて、触れると情けない気持ちになる。手早く肌から剥がして、そのままインナーも脱いでしまえば、身につけているのは上下の下着だけ。
「お風呂、俺も一緒に入って良い?」
「うん。……ごめんね、るりの服も汚した」
「大丈夫だよ。そのつもりだったから、着替え持ってきた」
「準備良いね」
話しながら彼は浴槽に栓をして、水道の蛇口を捻った。流れていく水音と共に、るりも濡れた服を脱いでいく。私も残った下着を脱ごうと手を掛けたところで、それを留めるように彼の手に掴まれた。
「俺が脱がせたいから、待って」
「恥ずかしいから、やだ」
「可愛い。もっと恥ずかしいことすれば良かったかも」
何をするつもりだったんだろう。気になったけれど、聞く勇気はない。
次々と脱いでいく彼の動きを見ていると、下着以外脱いだ彼の手がこちらに伸びてくる。肩に触れて、抱き寄せられて、衣類に遮られずに肌と肌が触れ合う。とても温かかった。
「冷たくなってる。はやく温まらないと」
温かな手にするりと肌を撫でられて、体が跳ねる。背中を辿って、下着のホックに触れて、でも外すことはなく、そのまま下へ。腰のあたりを撫でられると、体が震えてしまう。
「や、そこ、だめ」
言葉で止めて、触れて、それでも彼の手は動くのをやめない。下着の上からお尻を撫でられる。場所が場所なのと、ぐっしょり濡れた下着に触れられるのとで、普段よりもずっと恥ずかしい。
「だめ、きたない、から」
「やーちゃん、可愛い」
「可愛くない、よ」
「可愛いよ。すごく可愛い」
温かな手が下着を撫でて、腰を辿る。お腹の横あたりを撫でて、そのまま太腿の内側を通って、足の間に入り込む。咄嗟に顔を伏せると、額が彼の胸に触れた。
指先が下着の上から触れる。さっきまで自分でぎゅうぎゅう押さえていた場所。今は彼の指が優しく撫でるように触れる。ぞわぞわと何かが内側から沸き立ってきて、思わず息を飲んだ。
片手で敏感なところに触れながら、反対の手が背中に触れる。さっきは素通りした下着のホックを外す。顔を上げると、熱い視線とぶつかって、深く口付けられた。
だらりと落ちた肩紐を彼の手が引いて、私の腕から抜いてしまう。視界の端で、青い布地が扉の外へ消えていく。
背中に触れて抱き寄せられて、そのまま私の足の間で彼の手が動き続ける。濡れた下着はぴたりと張り付いて、優しい動きを敏感に伝える。
「んぁ、だ、めっ、るり、だめっ……」
「可愛い。ぬるぬるしてる。気持ちいい?」
気持ちが良くて、足が震える。崩れ落ちないように、彼の胸に手を置く。溢れる吐息には自然と声が乗ってしまう。
「直接触りたい。脱がせるね」
触れていた手が一旦離れて、お腹のあたりから下着に触れる。反対の手も加わって、張り付いた下着が肌から離れていく。そのまま足首まで下ろされて、促されるように足を順番に上げる。
おもらしした下着を脱がされている。そう思うと恥ずかしくて、居た堪れなくなる。先程と同じように扉の外へ運ばれるのを見て、彼の胸にそっと寄る。顔を伏せて額を寄せれば、そっと頭を撫でてもらえた。
「お湯、溜まりそう。どうしようか。体、洗う?」
そう言いながらも、彼の手は私の肌を這う。ゆるゆるとお臍のあたりを撫でてから、そのまま下へ。さっきまで下着越しに触れていた場所に、今度は直接触れられる。ぬるりと彼の指が滑るのがわかって、さっきまで冷え切っていた体が熱くなる。
「言ってることと、やってることが、違うっ……」
返事はなく、その代わりに小さく笑うのがわかった。ごそごそと彼が動くと、水音が止まる。それから、すぐ横からシャワーの水が降り注いだ。
肩のあたりに温かなお湯が当たって、冷えた体が温まる。はあ、と熱い息が漏れた。
お湯に晒されながらも、彼の手は動き続ける。シャワーとは違う、ぐちゅぐちゅと粘度の高い水音が聞こえる。敏感な部分を彼の指先が優しく刺激する。あ、あ、と息に乗って声が漏れる。
込み上げる快感を必死に堪えていると、自然と俯いてしまう。額が彼の胸に触れると、大きな手が頬に触れて上を向かされる。目が合って、深く口付けられて、漏れる息すら飲み込まれる。
ぞわぞわと快感が強くなる。込み上げる感触に体が震える。だめ、だめと考えても、押し流されて真っ白になってしまう。
「や、あっ、あっ、るり、だめっ……」
「気持ち良い?」
「だ、めっ、だめっ……」
「駄目じゃないよ。可愛い。もっと気持ち良くなろう?」
足が震える。頭が真っ白になる。何かが込み上げる感じ。きゅううっとお腹が縮んで、ぞくぞくしたものが強くなる。
押し寄せる快感の中で、じわりと込み上げるものがあった。さっきまでたっぷりと感じていた嫌な感触。出口がひくひくと疼く。膨らんでいたお腹がきゅうと縮んで、中身を出そうとする。
あれだけ出したのに、もうしたくてたまらない。体が震える。我慢しないといけないのに、我慢できなくなっていく。
「あ、まって、だめ、だめっ……!」
「駄目じゃないよ、やよい」
「や、だめ、ほんと、だめなのっ、でちゃうっ……!」
「出ちゃう?」
「だめっ、おしっこ、で、ちゃうっ……!」
本当におしっこが出ちゃいそうで、したくて堪らなくて、体に力が籠もる。それなのに、彼の手は止まらない。
ぬるぬると滑りが良くなった手が敏感な部分に触れて、快感でびりびりと体が痺れる。身体を捩っても逃げられなくて、それどころかそのままおしっこの出口にも触れてしまう。
「可愛い。おしっこ出していいよ」
「いや、やだ、だめ、るり、ほんとにだめっ、やなのっ……!」
「大丈夫。ほら、気持ち良くなって」
あ、あ、あっ。足ががくがくして、彼にしがみついて体を支える。お腹の奥がきゅうっと縮む。快感が体の中いっぱいに広がって、全身がびくびく震える。
ぶじゅ、と出口に熱いものが広がる。やだ、だめなのに、先程のようにおしっこの感覚でいっぱいになってしまう。
押し寄せた波が引くように、気持ち良いのが収まっていく。全身から力が抜けて、胸に詰まっていた息を吐き出す。
ぶわっと温かさが広がる。あ、あっ、だめ、だめ、なのにっ……。シャワーのお湯とは違う、熱い液体が体の中から溢れ出す。さっきあんなに出したのに、おしっこが吹き出して止まらない。
両足の間で刺激を続けていた彼の指先が、おしっこの出口に触れている。じゅうじゅうと溢れるおしっこは全然止まらなくて、彼の指を汚していく。
「おしっこ出てる」
「や、やだ、触っちゃ、やだ、だめ、汚いからっ……」
「大丈夫だよ。温かい。いっぱい出てるね」
おしっこが当たっているのに、彼は手を離さない。駄目なのに、恥ずかしいのに、おしっこは止まらなくて、顔を伏せることしかできない。
おしっこが止まるまで大した時間じゃなかったはずなのに、気が遠くなるほど長く感じた。
シャワーの音と自分の呼吸の音が浴室に響く。少しして、彼の手がシャワーを止めた。汚いものは全部流れたはずなのに、濡れた足元の感覚が先程濡らしたシートと重なる。
恥ずかしくてたまらない。顔をあげられない。
「ごめんね、嫌だった?」
返事はできずに、代わりに少しだけ体を寄せる。背中に大きな手が触れて、更に引き寄せられて、ぴたりと肌が触れ合った。
「良い子良い子。やーちゃんは何も悪くないよ」
そうやって宥められると、また涙が込み上げる。隠す為に、彼の背中に手を回して、ぎゅうと抱き着いた。
「お湯入って温まる?」
そう言いながら、彼の手は背中を撫でる。ぴたりと寄せられた体の真ん中、お腹の辺りに異物感があった。そろそろと顔を上げると、るりは少し照れくさそうに笑って、私の額に口付ける。
「続き、しないの?」
「……していいの?」
「するつもりだったんじゃないの?」
「それはまあ、あわよくば」
もう、と口が尖る。彼は笑って、触れるだけの口付けをくれる。
「おしっこで萎えるかと思ってた」
「……むしろ興奮しました。可愛すぎて、色々目覚めそう」
それはやめてほしい。内心思っていると、触れ合う肌は更に近付いて、二人の隙間はほとんど無くなる。深く口付けられて、離れて、また口付けて。やわやわと胸に触れられて、体がびくりと震える。手を握られて、後ろを向くように促された。
真っ白な壁に手を付くと、後ろから回された手が胸に触れる。お尻に硬い感触。肩越しに振り向くと、やや無理やり口付けられて、苦しさに息が漏れる。
先程まで触れられていたところに、指とは違うものが当たる。ゴムに覆われたそれは、ぬるりぬるりと刺激する。避妊具を用意しているなんて、やっぱり最初からその気だったんじゃないかと、快感に息を吐きながら考えた。
大きな手が腰を掴んで、後ろに引かれる。お尻を突き出した体勢は恥ずかしいけれど、それ以上に快感を求めていた。自分の女の部分が熱を持って、彼を求めているのがわかった。
自分の中に入り込んでくる感触。指よりずっと大きくて、硬い。ぞわぞわと込み上げるものに、体が震える。息に混じって、あ、あ、と声が漏れた。
「痛くない?」
先程までより固い声。息が詰まって、少し苦しそうにも聞こえる。それが嬉しくて、頷いて返事をした。
内側が広げられていく。ぐいぐいと奥へ進んでくる。途中で気持ち良いところを刺激されて、体が勝手にきゅうと締め付けてしまう。反射的に逃げよつとして、突き出していたお尻を引いてしまうけれど、それでも彼は追いかけてくる。
壁に付いた手が震える。足が震える。何かを掴みたかったけれど、壁は平らで何も無くて、必死に指先に力を入れて体を支えた。
奥の奥、自分でも触れたことの無いところまで入り込んで、ああ、と声が漏れる。じんわりと響くような快感に息が荒くなる。壁に付いて、必死に体を支える手に、大きな手が重なった。
「大丈夫? 痛くない?」
肩越しに声の方へ顔を向けると、顔を覗き込まれる。呼吸の合間に大丈夫だと返事をすると、彼は目を細めて笑う。口付けられて、離れて。顔を伏せると首や背中に口付けられるのがわかった。
壁と彼の体に挟まれたような体勢。すぐ耳元で彼の呼吸の音が聞こえる。私の内側で、先端が奥の気持ち良いところに当たっている。彼が僅かにでも動くと、敏感なところがゆるりと刺激されて、声が出てしまう。
「気持ちいい?」
頷くと、彼がふっと笑うのがわかった。その合間にも彼はゆるゆると動いて、私の気持ちいいところを刺激する。
「るりっ、そ、こっ……」
「中、きゅーってしてる。気持ちいいね」
「あっ、や、あっ、だめっ」
「俺も気持ちいい。もうちょっと動いて良い?」
返事なんてしてないのに、動きが段々と大きくなっていく。刺激が強くなって、お腹がきゅうきゅうと疼く。気持ち良くて、それで頭がいっぱいになっていく。
重なっていた手が離れて、私の腰を掴む。濡れた壁の上で手が滑って、でもなんとか支えようと必死に力を入れる。
「あっ、あっ、だめ、るりっ、あぁっ……」
「可愛い、やーちゃん。いきそう?」
「だ、めっ、きもちい、あ、ああっ……!」
頭が真っ白になっていく。全身が震えて、気持ちいいことしかわからない。吐き出す息に自分ではないような甘い声が乗っている。その声は浴室でよく響いて、ぐちゅぐちゅと水音も聞こえて、頭の芯をじいんと揺らす。
だめ、だめ、だめっ……! 駄目なのに抗えない。気持ち良いのが押し寄せて、びくりと体が跳ねた。息ができなくて、苦しくて、でもそれすらも気持ち良い。つるりとした引っ掛かりのない壁に、必死に爪を立てていた。
「きもち、いいね。もうちょっとだけ、頑張って、やよい」
ぎゅうぎゅうと締め付ける私の内側で、気持ちいいところが更に刺激される。さっきより大きくて、硬くて、びくびくと脈打っているのがわかる。耳元でそっと囁かれて、名前を呼ばれて、それだけで一度は引いた快感が押し寄せる。
「あ、あっ、や、だめ、るりっ、るりっ……!」
腰を掴む手に力が籠もって、びくりびくりと内側で震えているのがわかる。気持ち良くて、色んな感覚が体から飛んでいく。もう頭がぐちゃぐちゃで、ただただ彼の名前を呼んでいた。
遠くなった感覚が戻ってくる。は、は、とただ呼吸を繰り返していた。余韻で、体が重かった。
ずるりと内側から離れていく感触。足に力が入らなくて、自分で立っているのが不思議だと思っていると、途端に崩れ落ちそうになる。
腰を掴まれていたので、床にしゃがみ込むことはなかった。咄嗟に肩越しに後ろを見て、彼の首に手を伸ばした。
「掴んで良いよ。俺が支えるから、大丈夫」
ぎゅうと抱きつくと、抱き締め返される。足元は覚束なかったけれど、彼が支えてくれていたので大丈夫だった。
「力、はいんない……」
「よしよし。気持ち良かったね」
「……うん」
目が合うと、散々触れ合った後だからかちょっと恥ずかしくて、互いに笑ってしまう。それから触れるだけの口付けをした。
+++
お湯は冷め始めていたので、温め直す必要があった。その間に疲れ切った体を洗われた。それはさっきの行為とは別の意味で気持ち良かった。
お返しに彼の背中を洗ってあげると、湯加減もちょうど良くなっていた。湯船の中へ移動すると、後ろから抱き締められる。温かくて、とても安心できて、心の底から力が抜ける。そっと背中の彼に体を預けると、触れる手の力が少し強くなった。
「体、大丈夫? どこか痛かったりしない?」
「うん。……ありがとう、るり」
お礼は心配に対してだけじゃなかった。
胸の中で燻っていたものはもう暴れない。あるべきところで大人しくしているようだった。
乾いたところに、水を注がれたみたいに潤いを感じる。ひび割れた部分は元には戻らないかもしれないけれど、それでも、駄目だと自分を押さえていた気持ちは随分弱くなっていた。
「甘えるとね、すごく嬉しいのに泣きそうになる」
「子供のやーちゃんが泣いてるのかもね。いっぱい泣いて良いよ。幾らでも抱き締めてあげる」
振り向くと、優しく見つめられる。じわりと涙が浮かぶのを感じて、正面から抱き着いた。
「良い子良い子、やよいは良い子」
「……その褒め方、子供にするみたい」
「たまには良いんじゃない? 普段頑張ってる分、子供みたいに気を抜いて甘えてくれたら、俺は嬉しいよ」
そうなのかなと思いながらも、素直に受け止めていた。言ったとおりに、彼はぎゅうと抱き締めてくれる。嬉しくて頬が緩んで、ぽろりと涙か溢れた。
お風呂から上がると、体を拭くのも彼の手で行われる。すべて任せながら、そう言えば着替えの準備をしていないことを思い出す。
「着替えを出さないと」
「大丈夫、用意してあるよ」
いつの間に。驚いていると、脱衣所の棚から彼は何かを持ってくる。積み重なった布地を傍に置いて、まず自分の下着とズボンを履くと、一番上の物を手に取る。
「自分で着られるよ」
「俺がやりたいからやらせてよ」
そう言われると、断り方がわからなくなる。もう、こうなったら今日はとことんまで甘えてしまおうと、自分の中で箍が外れるのがわかった。
促されるままに足を上げる。するすると下着を履かせてもらって、それか見覚えのない物だと気付いた。
可愛らしいパステルピンク。リボンやフリルが付いていて、生地も高級そうでさらりと肌触りが良い。こんなもの、買った覚えがないし、私には似合わないから買おうとも思ったことがない。
驚いていると、今度は上。腕を通されて、胸を包み込んで後ろへ。下と同じように、柔らかい色合いで、可愛らしくて、雑誌の可愛い女の子が身につけていそうな物。可愛らしい下着に見とれている私の前で、彼はごそごそと私の背中に手を回す。
「脱がせるのは慣れてるけど、着せるのはなかなか難しい」
「何言ってるの。……それより、これどうしたの?」
「誕生日プレゼント」
そう言いながら、背中のホックが止まる。流石にきっちりとは付けられてはいなかったけど、そこは自分でさり気なく調整する。
「下着のプレゼントは引く?」
「そんなことないよ。嬉しい。けど、こんなに可愛いの初めてだから」
「似合うよ。やーちゃん、可愛い」
「……ほんと?」
「ほんと。すごく似合う。すごく可愛い」
「……ありがとう、嬉しい」
可愛いものは“お姉ちゃん”には似合わない。声が聞こえた気がしたけど、どうでも良かった。だって私はやよいだから。“お姉ちゃん”ではない、今日が誕生日のただの女の子だから。
可愛らしいものは似合わないと頑なに思っていたのが不思議なくらい、今は彼の言葉を信じられた。可愛いって言われた。似合うって言われた。今度自分で買うときは、可愛いものを探してみようかな。そんなことまで考えていた。
「じゃあ次は、ばんざい」
言われたとおりに腕を上げると、柔らかい何かが被せられる。腕を通って、頭へ。視界いっぱいに広がる、柔らかなピンク色。ふわふわで温かい。頭を出すと、大きな手がまだ濡れたままの髪を軽く整えてくれる。
今度は下。こっちもふわふわで可愛いピンク色。お腹のところまで履かせてもらう。チュニック丈の上がズボンの上から覆い被さる。
これも私は持ってない。驚いていると、るりが笑みを深くする。
「こっちもプレゼント」
「……可愛い」
「これ、フードが付いてるんだ」
彼の手がフードを被せて、鏡を示される。濡れた髪を覆うフードから柔らかく垂れる長い耳が揺れた。
「うさぎだ」
「……うさぎ、好き?」
「うん、好き。可愛い。ありがとう」
自然と頬が緩む。るりも柔らかく笑うと、被せたフードをそっと脱がせてくれた。
「迎えに来るから、それまで髪拭いたり化粧水付けたりして待ってて」
「どこ行くの?」
「どこも行かないよ。ちょっと片付けてくるだけ」
何を、と聞こうとして、何の片付けもせずにお風呂に来たことを思い出した。広げたままのシートが頭に浮かんで、顔が熱くなる。
「そ、それは自分で片付けるっ」
「俺が用意したし、俺が片付けるよ」
「だ、だって、汚い……」
「気にしないよ。今日はやーちゃんのこと、全部俺にやらせてよ。ね?」
濡れた髪を撫でられて、その手が肩に触れて、鏡の方を向かされる。いつも、お風呂上がりに色々手入れする為の場所。周りには使い慣れたものが並んでいる。
「じゃあ、待ってる」
「ありがとう。すぐ戻るから待ってて」
そう言って脱衣所から消えていく背中を見てから、いつものように化粧水や保湿液を付ける。なんとなく、いつもより念入りに肌に染み込ませようと、両手で頬にぴったりと触れる。ぷるぷるになったらるりに触ってもらおう。そんなことを考えると、鏡の中の私は幸せそうに笑った。
お肌の手入れをして、髪を軽く乾かしていると、彼は戻ってきた。
「お待たせ。あっちの部屋に戻る?」
返事をすると、手を握られる。そのまま連れて行かれそうになって、つい手を引っ張った。
「どうしたの?」
動かない私にるりが首を傾げる。
「……だっこ、して」
言ってから、恥ずかしくなる。流石に甘えすぎたかな。赤い顔を隠そうと自然と俯いていると、繋いだ手が離された。
「甘えたさん」
「……だめ?」
「そんな訳ないよ」
そう言いながら、離れた手が脇の下に触れて、持ち上げられる。足が床から浮いて、覚束ない感覚に咄嗟に彼の方へ手を伸ばす。お尻を下から支えられて、ぎゅうと体が密着した。
「ほんと可愛い。普段もそれくらい甘えていいんだよ」
「……うん」
甘えるのは、まだ私には難しい。けれど、頑張って伝えて、こうして応えてもらえると嬉しくて、やっぱりちょっと泣きたくなる。彼の首に腕を回して、ぎゅうと抱きつく。ぴったりくっつくとすごく安心した。
そのまま部屋まで運んでもらって、ベッドの上に下ろしてもらう。先程広げていたシートは片付けられていて、いつもの見慣れた自室になっていた。
部屋の隅に鞄が置いたままになっていた。ちゃんと片付けないと。そう思っていると、その傍に普段は無い袋を見つける。その中身はすぐに思い出した。
「るり、あれ取って」
指差すと、彼はその先を見てすぐに分かってくれた。鞄の横の袋が引き寄せられて、中からぬいぐるみが顔を出す。手渡されて、彼の手は戻るついでに私のフードを頭に被せていく。
「うさぎが二匹になった」
「どっちが好き?」
「こっち」
フードを被せた手が、私の鼻先に触れる。そのまま両手で頬を包み込まれて、ふにふにと揉まれる。膝に乗せたうさぎのぬいぐるみに、私も同じように触れていた。
段々と顔が近付いて、視界いっぱいに広がる。鼻先が触れそうになって、そっと目を閉じると、唇が柔らかく触れ合う。一度離れて、目を開けて、また近付いて。
繰り返す度に口付けは深くなっていく。ぬるりと舌が入り込む感覚に、ぬいぐるみに触れる手に自然と力が籠もっていた。
「俺は今、すごく悩んでる」
「どうしたの?」
彼は一度口を噤むと、視線を落とす。私の膝の上のぬいぐるみを撫でてから、またこちらを見る。
「その服可愛いのに、脱がせたい気持ちでいっぱいです」
「……元気だね」
「おかげさまで」
うさぎのぬいぐるみの上で、手が重なる。大きな手は私の手を撫でるだけ。こっちから握ると、その動きが止まる。
「良いよ。着たままする?」
「それは流石に。折角やーちゃんが気に入ってくれたのに、汚したら申し訳ない」
手を握り返されて、更に距離が近くなる。そっと口付けられて、離れて、次は更に深く。勢いに押されてやや仰け反ると、支えるように背中に触れられる。息苦しくて細めた視界の中で、うさぎがベッドから浮くのが見えた。
「後でもう一回着せるから、脱がせても良い?」
「良いよ。うさぎさん、どこに置いたの?」
「ベッドの下。後で拾ってあげて」
もう一度口付けられて、手が背中から服の中に潜り込む。呼吸と同時に脱がされて、今度はズボン。深い口付けの息苦しさに息を吐くと、その向こうで彼がTシャツを脱ぎ捨てるのが見えた。
「寒くない?」
「うん、大丈夫」
背中がベッドに付いて、上から覆いかぶさられる。頬に、首に、鎖骨に、胸元に口付けが降りてきて、手が背中に回って、ホックが外される。隠れていた胸が顕になると、恥ずかしさが増していく。ちゅう、と先端に口付けられて、んん、と籠もった声が漏れた。
「脱がすの、はやい」
「慣れてるからね」
「着せるのも慣れてね」
衣擦れの音。さっき着せられた服は全部脱がされて、彼も全部脱いでしまう。あちらこちらに口付けられながら、大きな手が柔らかく胸を包み込む。やわやわと揉まれて、先端を刺激されて、声が漏れる。
「柔らかい。気持ちいい?」
頷くと、彼の笑顔が深くなる。胸に口付けられて、その間に手がお腹の方へ降りていく。お臍に触れて、更に下へ。割れ目をなぞるように触れられて、咄嗟に体に力が籠もった。
「可愛い。好きだよ、やよい」
名前を呼ばれると、それだけで胸の奥が緩む。腕を伸ばして、彼の首に手を回す。目が合って、引き寄せられるように深く口付ける。
舌が触れ合って、その間にも彼の指が刺激を続ける。優しい刺激に、ぬるりと滑りが良くなってきて、ぞくぞくとお腹の奥が疼く。
頑張って、私も手を動かす。彼のお腹のその下。大きく持ち上がったものに触れると、びくりと震える。手で包み込んで、ゆっくり上下に動かすと、彼が低く息を吐く。
「きもちいい?」
「気持ち良いよ。上手。……でも、あんまり頑張らないでね」
「駄目?」
「あんまり触られると、入れる前に出そう」
「じゃあ頑張る」
「こら」
それは悪戯を咎められる子供のようで、何だか笑ってしまう。るりも笑っていて、緩んだ唇同士がくっつけられる。
ゆるゆると気持ちいいところを弄られて、体が熱くなっていく。彼に触れていた手がそっと剥がされて、代わりに握りしめられた。
「あ、だめ、きもち、い」
「可愛い。もっともっと気持ち良くなろう」
刺激は弱くて優しいのに、それが気持ち良くてたまらない。口付けの合間に、違う指が中へと入り込んでくる。刺激に合わせて膨らむ快感と共に、中がきゅうきゅうと指を締め付けるのがわかる。
「あ、それ、だめ、いっちゃ、う」
「良いよ」
「あ、あっ、あ、だめ、あっ……!」
上り詰める感覚。咄嗟に繋いだ手をぎゅうっと握り返していた。はくはくと息が苦しくなる。全身に力が籠もって、お腹の奥がきゅううっと縮む感じ。気持ち良くて、頭がぼーっとする。
こちらを見ている目に気付いて、少し頭を持ち上げると口付けられた。
「大丈夫?」
「……うん」
腕を伸ばして、ぎゅうと抱きついて。肌と肌が触れ合うと温かくて、安心する。
「ぎゅーってしてもらうの、好き」
「俺も好き」
軽く口付けられながら、彼の手が体に触れる。肌の上を撫でられて、ぞわぞわと体の内側で燃え上がるように感覚が強くなっていく。
「俺、そろそろ限界。入れていい?」
良いよと言うと、返事のように口付けられる。頭の上に手が伸ばされて、ごそごそと動くのを天井を見ながら感じる。少しして、足の内側をそっと撫でられて、体がびくりと跳ねた。顔を覗き込まれて、その目をただ見つめ返した。
「大丈夫? ぼーっとしてる」
「そう、かな」
「疲れたよね。もうちょっとだけ頑張って」
「平気だよ、大丈夫」
疲れたというよりも……。その続きを考えるより先に、先端が入り口に触れて、ゆっくりと中へ入ってきて、思考は中断された。
ぞくぞくと込み上げる快感に、吐き出す息と共に声が漏れる。鼻先が触れて、軽く口付けられる。はあ、と彼が息を吐き出すのが聞こえて、同じように気持ちいいんだとわかって、嬉しくなった。
「気持ち良いね。我慢できないかも」
「出してもいいよ?」
「だめ。やよいにもっと気持ちよくなってもらってから」
もう、充分すぎるくらい気持ち良い。心も体も解けて、どろどろで。今は腰を掴む手の感触すら、快感になってしまう。
動きに合わせて、ぐちゅぐちゅと音がする。奥の方をぐいぐいと押されて、気持ちいいところを擦られて、千切れた声が部屋に響く。
「ん、あ、そこ、気持ち、いっ」
「ここ、中、ぎゅうぎゅうして、ほんと、気持ちいい」
「るりっ、や、だめ、きもち、い、からっ」
「可愛い。やよい、好きだよ、可愛いやーちゃん」
自然と目を伏せていた。真っ暗な中、彼の声がよく聞こえる。ぐちゅぐちゅとなる水音と、言葉の合間に吐き出す息に、胸の奥がきゅうと苦しくなる。
「るり、好き、好き」
「俺も好きだよ、やよい、大好き」
ただただ気持ち良くて、快感が押し寄せて、逃げられない。腰が浮いて、お腹の奥がぎゅうぎゅうと中を締め付ける。
「あ、あ、だめ、いっちゃうっ」
「ん、すごい、中、ぎゅってしてる。いっていいよ、やよい」
あ、あ、あ、あっ……! 快感が溢れたように体の中に広がる。手に触れたシーツをぎゅうと握りしめていた。体が仰け反る。気持ち良くて、それ以外わからない。息ができなくて、苦しくて、でもその苦しさすら快感になる。
充分すぎるくらい気持ちいいのに、それを追い立てるように刺激は続く。上り詰めているのに、更に追いやられて、息ができない。
「あ、や、だめ、きもち、い、からっ、だめ、や、あっ……!」
「やーちゃん、可愛いっ」
「や、あ、あ、だめ、るり、だめ、だめっ……!」
「やよい、俺も、いき、そ」
名前を呼ばれて、自分が何を言っているかもわからない。ただただ気持ち良くて、気持ち良すぎて苦しくて、頭がちかちかする。
覆い被さられて、更に繋がりが深くなる。触れるだけの口付けがされて、咄嗟に彼にしがみついた。
動きに翻弄されて、もう、本当に自分がよくわからない。ぐちゃぐちゃな中で、彼が低い息と共に私の名前を呼ぶのが聞こえた。
締め付ける内側で、びくびくと震えているのがわかる。はあ、とるりが大きく息を吐き出すのが耳元で聞こえる。ぼんやりした頭で、しがみつく手から力が抜けるのを感じた。
ぐったりと横になっていた。内側からずるりと抜けていく感覚に、少し息を吐く。天井を見上げるのもしんどくて、目を閉じてただ呼吸を繰り返した。
「やーちゃん、大丈夫?」
「……も、だめ」
「ごめん、無理させすぎた」
「…………おなか、すいた」
「え?」
疲れより何より、もうお腹がすいて動けなかった。お腹の虫が鳴いてしまいそう。お昼のハンバーグ、全部食べるんだったとそんなことまで考えた。
「今、何時だろう。時計どこ?」
「棚の上にあるよ」
「……止まってる。あ、電池買ってたっけ。鞄から出しても良い?」
頷くと、ごそごそ動く音がする。起き上がる気力もなくて、目を閉じたまま物音を聞いていた。
「うわ、もうこんな時間。お店、開いてない、かも」
「インスタントラーメン、あるよ。るりも食べる?」
「食べる。けど、誕生日の夕食それで良いの?」
「良いよ。ふたりで食べたら美味しいよ」
なんだか複雑そうな様子の彼を横目に、勢いをつけて起き上がる。これで良いのかな、なんて呟く彼に、私から抱きついて口付ける。つい笑ってしまって、彼も笑った。
+++
二度目のシャワーを浴びて、着替えて、私は台所でお湯を沸かす。るりはベッドのシーツを替えて、洗濯機に向かってくれた。
お湯を注いで、インスタントラーメンを机に運ぶ。少しするとるりも戻ってきて、彼が隣に座ると、ちょうど三分経っていた。いただきますをしてから、口を付ける。空腹もあって、とても美味しく感じた。
「美味しい」
「夕食、気が回らなくてごめん。何か買っておけば良かった」
「大丈夫だよ。ラーメン食べたかったし」
空腹が満たされていく。心も体も満たされて、全身が温かい。嬉しさが溢れて、頬が緩んでいた。
「るり、ありがとう。誕生日、こんなに色々してもらったの初めてかもしれない」
「どういたしまして」
お腹が空いていたから、残すこともなく、あっという間に食べ終えてしまった。片付けたら、はやいけれど寝てしまおうかな。
そう考えていると、るりは突然口を開く。
「やっぱり駄目。ケーキくらい食べよう。俺、買ってくるから」
「い、いいよ、大丈夫だから。それにお店開いてないよ?」
「コンビニなら開いてる。やーちゃん、何が良い?」
コンビニだし、選べるほど無いと思う。だから、何でも良いよ。そう言いかけて、言葉を飲み込む。
「……チョコレートケーキが良い」
「わかった。行ってくるから、待ってて」
「うん。ありがとう」
立ち上がると、上着を羽織ってるりは飛び出していく。その背中を眺めて、少しして部屋に戻る。うさぎのぬいぐるみがベッドの下で寝転んでいたので、替えたばかりのシーツの上へ移動させる。
ふたりで食べたラーメンの器がそのままだったので、台所まで持っていって、中身を捨てて、ゴミ箱へ。お箸は洗って、定位置へ。
電池を変えた時計は時間を刻んでいる。日付が変わるまで、あと一時間と少し。はやく帰ってこないかな。待ちきれなくて、玄関の前で扉を眺めて待っていた。
少しして、扉が開く。コンビニの袋片手に帰ってきたるりに、お帰りなさいの言葉と共に飛びついた。
ケーキが潰れる! と怒られながらも、抱きとめられて、嬉しくて笑った。
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初出: 2022年3月13日(pixiv・サイト同時掲載) 掲載:2022年3月13日