一
水着に着替えて外へ出ると、砂浜は人でごった返していた。何とか隅の方にレジャーシートを敷いて荷物を置く。良い具合に日陰になっていて有難い。
少しすると、水着を着た結子が大きな浮き輪を持って駆け寄ってきた。面積が広いワンピース型の水着は、あどけない表情によく似合う。ほんのりと日焼けした健康的な肌に、スカイブルーが良く映えていた。
「あーっ、なんでパーカー着てるんですかっ」
「だって暑いじゃない」
「海は暑いものですっ。ほら、脱ぎましょう!」
暑さと結子の勢いに押されて、仕方なくパーカーを脱ぐ。水着を着るのは本当に久しぶりだった。下着と変わらない布地の少なさに羞恥を感じたのは一瞬のことで、あとはもう暑さしかなかった。こんな中で結子はよくこれだけ元気でいられるものだ。
彼女の手は私を捕まえて、そのまま海へと引っ張っていく。熱い砂の上から海水へ足を踏み入れると、想像していたよりぬるく感じた。
波打ち際は人が多いので、一気に沖の方まで進む。その間も頭がじりじりと焼かれて、焦がされそうだ。浮き輪を片手に浮かぶ結子の横で、一気に海の中へ潜った。途端に喧噪が消えて、水音だけが聞こえる。懐かしい感触に、胸がふっと緩んだ。
顔を上げて残りの息を吐き出すと、肺に新鮮な空気が胸に流れ込む。結子は浮き輪にお尻を嵌めた状態で気持ちよさそうに揺れていた。浮き輪の空いている場所に腕を乗せて体重を掛けると、結子の悲鳴が聞こえた。
「もうっ、危ないですよ!」
「ごめんごめん」
口先で謝罪を言ってみたけれど、心が籠っていないことを悟ったようで、結子はそれ以上何も言わなかった。
「せんせぇ、泳ぐの上手そうです」
「水泳部だったから、まあ、それなりに?」
「わ、知らなかったです。すごいっ」
大したことじゃないと思うけれど、結子にとってはすごいことのようだった。運動が苦手な彼女のことだから、泳ぎもそんなに得意ではないのかもしれない。
「昔のことだよ。もう何年も泳いでない」
「でもすごいです。溺れたら助けてくださいね」
「……溺れないように気をつけなさい」
結子がお尻を嵌めている浮き輪に私も掴まって、揺られながらぼんやりする。痛いくらいに突き刺す日差しと涼し気な水音が心地良い。当初はあまりの暑さにげんなりしていたけれど、いざ海に入ると、来て良かったと心から思った。
「……あの、せんせぇ」
「なあに?」
結子の声は聞こえていたけれど、頭にあるのは波の音だけだった。寄せては返す波の音はとても心地よくて、いつまでも聞いていられそうだ。
「一回戻りませんか?」
「まだ海に入ったところだけど……。疲れた?」
「そうじゃないんですけど、その、一度座りたいというか、あの、えっと……」
結子はもごもごと口を動かしながら、肩越しにこちらを振り向く。その顔は少し赤く、力なく眉を下げていた。
「うう、せんせぇ、わかって言ってるでしょ」
「何が?」
「いじわるっ」
結子はそう言うけれど、何を言いたいのか本当にわからない。疲れたから休憩したいと言うならわかるけれど、疲れていないなら、人の多い浜辺に戻る理由は無いだろう。もちろん、水分補給は必要なので、そのうち戻ろうとは思っていたけれど、海に入ってまだ全然時間が経っていない。
「だ、だから、そ、の……、っ……!」
彼女が口を丸く開けたと同時に、浮き輪がぐらりと大きく揺れた。大きな波が押し寄せて、私たちを浮き輪と一緒に持ち上げていく。手を離した私はその場で浮かんでいたけれど、結子は浮き輪と共にひっくり返って、頭から海の中へと落ちていった。
海の中に消えた悲鳴を追って海の中へ潜る。もがく手を掴んでやれば、彼女は私にしがみ付いた。海面から顔を出すと、結子は私に掴まったまま、ごほごほと咽る。
「せっ、せんせぇっ……」
「大丈夫、大丈夫。落ち着いて」
「うう……水飲んだ。鼻痛い……」
咳き込みながら呼吸を繰り返す結子を宥めようと、水着の上から背中を撫でる。それでも彼女の表情は不安でいっぱいで、大きな目は泣き出しそうにぐにゃりと歪む。
浮き輪が見当たらないことに気付いて、周りを見回すと、少し遠くへ流されていた。手を伸ばしてみても届かない。
「浮き輪を取ってくるから、ちょっとだけ離して」
「せんせぇ……」
「すぐ戻るよ」
「ち、違うの。だ、だめ……」
「駄目って、何が……」
彼女の言葉を繰り返しながら、そこでやっと何を言いたいのかわかった。頭から波の音が引いて、過去の出来事が思い出される。不安げな表情、落ち着きのない様子、震える体。すべて見覚えがあった。
「トイレ?」
口籠る彼女の代わりに言うと、結子は頬を染めて頷いた。
「わかった。戻ろうか」
結子は不安でいっぱいの目で私を見ている。安心させる為に濡れた髪を何度か撫でてから、彼女から離れた。
腕を動かして水を掻き分けると、昔の感覚が戻ってきて、すいすいと泳げた。波間で揺蕩う浮き輪の紐を掴み、彼女の元へと引き返す。結子は海の中でぽつんと浮いていた。
「はい、掴まって。引っ張るから」
結子は小さく頷くと、浮き輪を片手で掴む。反対の手は水の中に沈められたままだ。はっきりとは見えないけれど、お腹の下あたりに伸びているようだった。
浮き輪を掴むと、陸に向かって水を蹴った。流石に人ひとり引っ張って泳ぐと速度は出ない。それでも、ゆっくりと確実に砂浜へ近付いてはいた。
結子は浮き輪に掴まったまま、硬い表情で俯いている。時折、唇の隙間から細く息が零れる。浮き輪を掴む片手は震えていた。反対の手は変わらず海中でもぞもぞと動いている。
「っ……、だ、だめっ……」
陸地に近付いてくると、周りに人が増え始める。もう少しだと安心し始めた時、波に紛れて小さな悲鳴が聞こえた。それと同時に、引っ張っていた浮き輪が軽くなる。結子が手を離したようで、私の少し後ろでぽつんと浮いていた。
浮き輪と一緒に傍に寄ると、彼女は真っ赤な顔で俯いていた。震える唇が開かれたけれど、何も言わずにまた閉じられる。浮き輪を掴んでいた手は海の上をさ迷っていたが、縋るように私へと伸ばされた。
「せんせぇ……」
短い呼吸の合間に、か細い声が縋るように私を呼ぶ。おずおずと顔が持ち上がってこちらを見たが、泣き出す寸前のようにぐしゃぐしゃだった。
小さな肩がびくりと跳ねて、歪んだ目をぎゅっと固く瞑る。は、は、と荒い呼吸を繰り返す音がよく聞こえた。
「大丈夫?」
「……でちゃう」
長い付き合いの中で色々経験したのもあって、もう厳しそうだとなんとなく想像がついた。砂浜に戻るだけならもう少しだけれど、そこからトイレまでは距離がある。その上、この混雑具合だ。トイレでもかなり待つことになるだろう。
それなら仕方ない。褒められたものじゃないけれど、緊急事態だ。彼女の手を引いて、少し沖の方へ移動した。人の姿は見えるけれど、近くには誰もいない。
「仕方ない。そのまましちゃいなさい」
「っ、良い、ですか」
もう抗う余裕もないようで、彼女は泣きそうな顔で私をじっと見ていた。
「見た目じゃわからないよ。大丈夫、大丈夫」
「う、うんっ……」
「離れてようか?」
「だ、だめっ、いてくださいっ、傍にいてっ」
結子はひと際大きな声を上げると、震える手を伸ばして私の腕をぎゅっと握った。
掴んだ浮き輪と一緒に、波に揺られる。静かな水音と、遠くに喧騒が聞こえる。
「……あ、っ」
息を吸って、吐いて、彼女の体がぶるりと震える。私の腕を握る手に力が籠った後、そっと抜けたのが分かった。
「あ、あぁ、っ……」
少し開かれた唇が静かに呼吸を繰り返す。目には涙が浮いていて、ぼんやりと宙を見つめていた。
「ふ、あっ……」
「出てる?」
「き、聞かないでくださいっ……」
意地悪したい気持ちから敢えて聞いてみると、彼女は赤い顔を伏せて隠す。波の音と結子の呼吸だけがよく聞こえた。
少しすると、ぶるりと結子の体が震えた。私に触れる手から力が抜けて、指が解けていく。浮き輪を持ったまま彼女の傍で揺蕩っていると、俯いていた顔がゆっくりと持ち上がり、ぼんやりした目がこちらをおずおずと見た。
終わったのかな。聞いたらまた怒るだろうと思いながら、浮き輪を彼女へと近付けると、結子は両手で掴まった。
「もう大丈夫?」
直接的な言葉を避けて、遠回しに確認する。彼女は浮き輪を握ったまま、小さく頷いた。
「とりあえず、戻ろうか。水分補給して、少し休憩しよう」
再び浮き輪の紐を持って、砂浜へ向かって泳ぎ始める。彼女は静かに浮き輪に掴まっていた。
「……いっぱい、出ちゃった」
波の音に紛れて、小さな声で呟いたのが微かに聞こえた。
二
陸へ上がり、荷物のところへ戻って、まず水分補給をしました。喉が渇いた感覚はなかったものの、水分を口に含むとどんどん飲めてしまって、思ったより消耗していたことに気付きました。
「出した分、飲んどきなさい」
先生が隣でそんなことを言うので、思わず裸の腕を叩いていました。
先程のことは思い出すだけで恥ずかしくて消えたくなります。ちゃんと我慢しようと思っていたのに、我慢できませんでした。少し離れていたとは言え、近くに人がいたのに、おしっこ、しちゃった。
海の中に熱いおしっこがじわあっと広がっていくのが分かって、すごく不思議な感じがしました。いっぱい我慢していたからか、思ったよりたくさん出てしまって、周りの人に気付かれないかすごく不安でした。でも、すごく気持ち良かったし、すっきりしました。
買っていたスポーツドリンクはあっという間に無くなってしまいました。先生も隣で自分の分を飲み干しています。
「ちょっとここで待ってて」
「どこ行くんですか?」
「飲み物の追加を買いに。あと、トイレも」
そう言いながら先生は折角脱いだパーカーを羽織っていました。上下に分かれたボルドー色の水着がすごく似合っているのに、隠しちゃうの勿体ない。先生は胸が大きいので、大人っぽい水着が映えて、すごくすごく羨ましいです。
でも、今日は日差しがとても強く、少し日に当たるだけで汗が止まらなくなります。ここは日陰になっているので大丈夫ですが、今から砂浜を歩くなら、一枚羽織るのも仕方ないかもしれません。
私がじっと見ていたからか、先生は首を傾げました。
「どうしたの?」
「何でもないですよ?」
「……ああ、先にトイレ行きたい?」
「だ、大丈夫ですっ」
先生は少し笑ってから、砂浜を歩いていきました。
ひとり残されて特別できることも無く、レジャーシートに座ってぼんやりと海を眺めます。先生が戻ってきたら、もう一度泳ぎに行こう。それからホテルに戻って休憩したら、晩ご飯かな。近くで夏祭りがあるから、そこにも行きたいな。
潤先生から旅行に誘われた時は本当に嬉しくて、その場で返事をしていました。
山と海、どちらに行きたいか聞かれたので、海と答えました。正直、泳ぎは苦手です。でも虫も苦手なので、山よりは海かなと思ったのが理由です。
実際に来てみると、浮き輪で揺られているだけでも楽しくて、海にしてよかったなと心の底から思いました。頭からひっくり返ったのは予想外でしたが。
何より、潤先生と過ごす時間は本当に楽しいです。優しくて、色々気遣ってくれて、ちょっと意地悪で、すごく素敵なお姉さん。先生もこの旅行を楽しんでくれていると良いな。
海を眺めていましたが、先生はなかなか帰ってきません。歩いて行った方向を見ると、海の店が遠くの方に見えました。多分、トイレもその辺りにあるのでしょうが、ここからは全然見えません。
砂浜には驚くくらいたくさんの人がいます。トイレも自動販売機も多分、混んでいるのだと思います。
ひとりは退屈です。先生が早く戻ってくることを願いながら、近くの砂を触っていました。山を作って、今度は穴を掘って、そうやって時間を潰してみますが、先生の姿は見えません。静かに溜息が漏れました。
じっと座っているとお尻が痛くなってきて、レジャーシートの上でそわそわと動いてしまいます。それともう一つ気になることが出てきて、とても困っていました。
じわじわと嫌な感じが体の内側から込み上げて、むず痒い感覚が広がります。水分を取りすぎちゃったかもしれません。うう、と小さく漏らした声は喧騒に消えていきます。
少し前からトイレに行きたくなってしまいました。混んでいるだろうから、少しでも早く行きたいところですが、まずは先生が戻ってこないとどうしようもありません。最悪、貴重品だけ持っていけば、ここを離れても大丈夫だとは思います。けれど、待っているように言われた以上、ちゃんと先生が戻るまでここにいないと駄目だと思うのです。
先生、はやく戻ってきてください。私もトイレ行きたいです。もじもじと膝を擦り合わせながら、気を紛らわせようと砂を弄りますが、頭の中はトイレのことでいっぱいでした。
適当に掘った穴を埋めて、その隣を掘ってみて、また埋めて。傍の砂浜が平らになったところで、砂に塗れた手をぎゅうと握り締めました。一度お尻を持ち上げて、膝を立てて座りなおしますが、寄せた膝がゆらゆらと揺れてしまいます。
先生はまだ戻ってきません。時計が無いのでどれくらい時間が経ったかわかりませんが、体感ではそれなりに経っていると思います。
トイレ行きたい。おしっこしたい。先程、一気に飲んだスポーツドリンクがどんどんお腹に集まっているようです。ぴたりと張り付いた水着のお腹部分がぽこりと膨らんでいました。手の砂を払ってから、膨らんだところを撫でて、体を丸めます。
我慢、我慢。頭の中で繰り返しますが、湧き上がる衝動はどんどん強くなっていて、時折、ぶるりと体が震えました。おしっこの波が引いては押し寄せて、その度にお腹の中で思い塊がたぷんと揺れるようです。
ううう、おしっこしたいっ。顔を上げると、前方には海が広がっています。波が引いては押し寄せて、雫が光を浴びてきらきらと輝いています。
どうしても駄目そうなら、もう一度、海の中でしちゃう、とか。そんな悪いことを考えてしまって、慌てて頭を振りました。そんなの絶対駄目なのに、何を考えているんだろう。
でも、駄目だと思えば思う程、海の中でしちゃった時の感覚を思い出してしまいます。
波がちゃぷちゃぷ揺れる中、自分の鼓動がとても大きく聞こえていました。何度も呼吸を繰り返して、ふっと息を吐いた時、体が震えて、じゅわあっとおしっこが噴き出していました。あ、と零れた声は波の間に消えていきます。
海の中におしっこが広がっていくのがよくわかりました。おしっこがいっぱい出るのは本当に気持ち良くて、自分の体が海に溶けちゃうんじゃないかと思いました。ぞくぞくした快感が体に広がって、頭がぼんやりしていました。
あの時の快感を思い出してしまって、体が震えました。出口が疼いて、おしっこが押し寄せるのがわかります。あ、あ、だめ、おしっこっ。体が強張り、必死に我慢しますが、隙間を抉じ開けて零れた雫が水着に広がります。じわっと伝わる熱さに、立てていた膝を倒して、太ももをぎゅうと寄せました。
ど、どうしよう、もうあんまり我慢できないかもしれない。体を揺すって嫌な衝動に必死に抗いますが、お腹の下あたりがずっしりと重くて、おしっこがたくさん溜まっているのがわかりました。
トイレ、トイレ、トイレ、おしっこっ。周りを見回しますが、近くにトイレは無いし、先生が戻ってくる姿も見えません。潤先生、どこまで行っちゃったのっ。はやく戻ってきてください。おしっこ、我慢できなくなっちゃう。
呼吸を繰り返しながら、体が前後に揺れていました。お尻がレジャーシートの上で動いて、時折がさっと音が鳴ります。砂浜はとても賑やかなのに、トイレの事しか考えられない今は頭に何も入ってきません。頼れる人もいなくて、ひとりぼっちになった気分でした。
おしっこ、おしっこしたいっ。は、は、と短い呼吸を繰り返しながら体を揺らしますが、尿意は全然落ち着かず、体の中で暴れていました。
あ、あ、あっ。ぐーっとおしっこが押し寄せて、体に力が籠ります。固く閉じているはずの出口から熱い雫がじわりと溢れて、両足の付け根が湿り気を帯びます。水着はすっかり渇いているのに、そこだけが熱く湿っていました。
上手く息が出来なくて、苦しくてたまりません。頭が熱くて、涙が込み上げてきます。我慢しているのに、おしっこしたい感覚は全然治まらなくて、人目も憚らずに手でぎゅううっと出口を押さえていました。
ああ、だめっ、おしっこ、おしっこでちゃうっ。押さえるとほんのちょっと楽になるけれど、それでもおしっこがしたくてしたくてたまりません。指で押さえている隙間が抉じ開けられて、水着の股の部分が熱く濡れていきます。
あ、あ、あ、だめ、で、ちゃっ、あ、あっ……! 僅かに残った理性で、なんとか重い体を持ち上げました。もう無理、我慢できない、おしっこでちゃうっ。海、海に入ろう、海の中でしちゃおうっ。お行儀が悪いけれど仕方ないんです。だ、だってもうおしっこ我慢できないっ……!
海まで走りたいくらい心は焦っているのに、体は重くて上手に動いてくれません。ずっと座っていたのと、我慢の限界なのとで、足が震えます。ぎゅうぎゅう押さえたまま、何とか腰を上げましたが、ふらりと体が揺れて、そのまま前へと倒れそうになります。
「あっ、うぅ」
少しだけ前へ進んで、それ以上は体が動きませんでした。べたりと落ちたお尻はレジャーシートではなく、砂の上にありました。先程まで気を紛らわせる為に弄っていた砂浜へお尻から落ちて、追いかけるように両足が砂へと付きます。
「っ……、あ、あっ……」
じゅごおお、と両足の間で激しい水音がしました。必死に閉じていた出口は大きく開かれて、勢いよくおしっこが噴き出しました。
水着の中で熱い水流が渦巻き、布地を貫いて溢れていきます。おしっこがどんどん広がって、お尻の下が熱く濡れていきます。熱い砂が足に纏わりついてくるのがわかりました。
あ、ああ、だめ、おしっこ、でちゃった。日陰になったレジャーシートから夏の太陽の真下へ出たので、日差しがじりじりと肌を焦がします。けれど、それ以上に体の中で渦巻く解放感の方が強くて、ぽかんと口が開いていました。
すごく、気持ち良い。頭が真っ白になって、世界が遠くなっていきます。何も聞こえず、体の中で水音だけが響いていました。海の中でしちゃった時より感覚が生々しくて、強すぎる快感が背筋をぞくぞくさせていました。
おしっこは全然止まりません。白い世界に少しずつ色と音が戻ってきて、喧騒が遠くに聞こえてきます。自分が今どこにいるのか、どういう状況なのかを把握するにつれて、思わず体に力が入りました。
ここは砂浜。周りには人がたくさんいます。話し声や足音がたくさん聞こえます。そんなところで、私、おもらししちゃってる。恥ずかしさが一気に湧き上がって、全身が熱くなります。顔を隠すように俯いてみたものの、身動きが取れず、砂の上に座り込んだまま、呼吸を繰り返すことしかできません。
はやく終わって。そう思いながらも、我慢を重ねたおしっこは全然終わらなくて、気が遠くなるような時間をそのまま過ごしていました。
お腹が空っぽになって、おしっこが止まって、やっと大きく呼吸をすることが出来ました。
お、おしっこ、しちゃった。太陽に焦がされる頭より、俯いた顔の方が熱く感じます。恥ずかしい。誰かに見られていたらどうしよう。怖くて、重い頭を持ち上げられません。心臓がばくばく高鳴っていました。
でも、すっきり、した。おしっこ、気持ち良かった。余韻で、はあと溜息が漏れました。
「どうしたの?」
力が抜けたところで突然声を掛けられて、飛び上がりそうな程に驚きました。慌てて声の方を見ると、潤先生がいつの間にか戻ってきていました。直射日光の差す砂浜にぺたりと座り込む私の姿に、先生は不思議そうに首を傾げました。
「砂遊びしてたの? あんまり日差しの下にいると、熱中症になるから気を付けてね」
「っ、あ……、はいっ、そ、そうですね……」
頭の中がぐちゃぐちゃで、返事の声は上ずってひっくり返っていました。潤先生は何か言いたげではありましたが、何も言わずに、中身の入ったペットボトルを差し出しました。
「トイレ、すごい混んでたから、行くなら早めにね」
その言葉に再び胸が跳ねます。わかりましたと返事をしながら、ゆっくり立ち上がります。砂が纏わりついた足は震えていました。砂浜は私の足元だけ濡れていますが、一目見ただけではわからなさそうです。
「あ、あのっ、足、洗ってきますっ」
そう言って、震える足で海の方へと走りました。砂浜が熱くて足の裏がじりじりしますが、それ以上に恥ずかしさで体が焼けそうでした。
海に辿り着いて、そのまま水の中へ駈け込んで、思い切って頭のてっぺんまで潜りました。海は思ったよりぬるくて、体の熱は全然引いてくれませんでした。
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三~六は同人誌『先生、おしっこっ! 総集編』にて公開します。
詳細につきましては、もう少々お待ちください。
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初出:2023年7月21日(pixiv・サイト同時掲載)
掲載:2023年7月21日