触れて触って触れられて

※大スカ描写があります

 その日、彼はどこか居心地悪そうだった。元気がなく、顔色が悪い。どうかしたのかを聞こうとする前に、彼は口を開いた。
「こんなこと寧々さんに言うのも変なんですけど」
「うん、どうしたの?」
 どんなことであれ、彼が言おうとしていることがまず嬉しかった。
 意を決したように彼は口を開いたものの、その続きは言いづらいようで、もごもごと言葉を濁している。続きを急かすのも悪いので彼の言葉を待っていると、彼は俯いて小さな声で言った。
「……薬が効かなくて」
「薬?」
「……前に買ってくれた薬」
 ちらっと彼の視線がテレビの方に向く。その先を追って、棚に置かれたビニール袋が目に入る。それで合点がいった。
「お腹、また苦しいの?」
 彼は頷いた。同じようなことは前にもあった。おそらく、便秘になってしまったんだろう。
 前の時は下剤では聞かず、浣腸で何とか解消することが出来た。自分ひとりで我慢するのは苦手なようで、そのお手伝いをしたことは記憶に新しい。
「じゃあ、またこっちで我慢しようか?」
 彼が求めているのはそういう事かと思ったけれど、どうやら彼の様子から察するに違うようだった。
「結構我慢したんだけど、それでも駄目だった。どうしたら良いかわかんなくて」
 何とかしてあげたい。下剤も駄目、浣腸も駄目、それ以外の方法があるかと考えて、ひとつだけ浮かんだ。でもその方法は、彼には特に辛いんじゃないかと思う。
「ひとつだけ、方法が無いこともないんだけど」
「どういう方法ですか?」
「摘便ってわかるかな。お尻に指を入れて出す方法」
「…………っ!」
 彼は絶句して、何も言えずに口をぱくぱくしていた。それもそうだと思う。普通の人でも抵抗がある上に、おそらく彼は特に嫌だと思う。最近はしていないようだけれど、彼はお金のために体を売っていた。それなら、そういう行為に嫌悪があっても不思議じゃない。

 彼は口を開けたまま固まってしまった。自分で言っておきながら、それは出来ないとすぐに思った。
 そうなると私にはどうすることも出来ない。せめて、どこか病院を探してあげようと思っていると、そっと服の袖が引かれた。
「寧々さんが嫌じゃなかったら、それ、してもらえますか」
「無理しないで? どこか病院探してみるから、そこに行ってみる方が良いと思う」
「……知らない人は怖い」
 俯いたまま、彼はぽつりと言う。顔は見えないけれど、私の袖を握る手にぎゅっと力が籠っているのが見てわかった。
「私は大丈夫だけど、織仁くんは本当に良いの?」
「寧々さんは、嫌なことしないと思うから。お願いできますか」
 想像するしかないけれど、かなりの決意が必要だっただろう。彼の他人に対するトラウマ、特に女性に対しては、恐怖にも近いものを感じていてもおかしくはない。
 そんな彼が私を信用してくれようとしている。それなら、私は出来る限りのことをしてそれに応えないといけない。
「わかった。じゃあ、準備するね」

 足元に新聞紙、右手にはゴム手袋。潤滑油が必要だったので、オリーブオイルで代用することにした。
 流石に明るいと恥ずかしかったので、部屋の照明を少し落とした。薄暗い部屋で、織仁くんはゆっくりとズボンと下着を脱ぐ。今まで気づかなかったけれど、その下腹部はぽっこりと膨らんでいた。
「お腹、苦しかったでしょ。もっと早く気付いてあげれば良かったね、ごめん」
「別に、寧々さんが謝ることじゃない。
 それに、こんなこと俺も初めてだから、どうしようもない」
「ご飯、栄養が偏ってたかも」
「どっちかというと俺が食べ過ぎたんだと思う。いつもおかず取ってごめん」
 緊張して、出来るだけ話そうとしてしまう。それは彼も同じようで、いつも以上に口数が多かった。

 下半身裸の状態で、彼は新聞紙の上に膝を付いた。四つん這いで、お尻を突き出している状態。白いお尻が目に入ると、ばくばくと自分の鼓動がうるさいほどに聞こえた。
「じゃあ、触るね」
 右手の指にオリーブオイルをたっぷり垂らす。少し手が震えているのは仕方ないと思う。でも、私以上に彼の方が緊張しているのだから、私がこんな様子ではいけない。
 よし、と心を決めて、そっと彼のお尻に触れる。ふたつのふくらみの間、閉じられた蕾に指先が触れると、彼の体が強張る。
「触るね。痛かったら言ってね」
 いきなり指を入れては痛いだろうと、指先でそっと解してみる。指の腹で撫でて、少し押してみて、ゆるゆるとその周囲をマッサージするように刺激する。ふうふうと彼が呼吸を押し殺しているのがわかった。
「大丈夫? 痛くない?」
「平気、だいじょぶ」
 もう一度オリーブオイルを垂らしてから、今度は人差し指をそっと中へ押し込んでみる。解れたそこはすんなりと指を飲み込んだ。
「は、あっ」
「痛い?」
 彼は首を横に振る。その反応を信じて、ゆっくりと指を奥へ進めていく。柔らかい肉をそっと掻き分けていくと、指先が何か固いものにぶつかった。
 少し押したくらいではびくともしない程、固い塊がみっちりと詰まっている。それが何かは言わずもがな。これじゃあ、薬を入れても効果が無いのは仕方ないかもしれない。
 塊と肉の壁の間に何とか指の先を入れる。ぐう、と彼が唸るのに心の中で謝りながら、指先を曲げた。塊の一部が崩れる感触がして、それを指先で出口まで掻き出した。
「か、はっ……」
 指が抜ける瞬間、彼が苦しそうな声と共に息を吐いた。それと同時に、ごと、と重いものが落ちる音がした。薄暗い中でも、それが真っ黒で固く重い塊だとわかった。
「もう一回、入れるね」
 肉を掻き分けて、中のかたまりを掻きだして。指が抜けるたびに漏れる声は苦しそうだけれど、それだけではなさそうだった。
 お尻の向こう、彼の足の間にぶら下がっていた男性器がゆるりと持ち上がる。見ないようにはしていたけれど、どうしても目に入ってしまう。生理現象だから仕方ないし、あまり見るのもかわいそうだと、出来る限り意識の外に置いて、掻きだす作業に集中する。

 数回繰り返すと、彼の足元には黒い塊が積もっていた。指先に当たる塊もだいぶん減ってきていて、もう少ししたら一度トイレに行くことを勧めてみようかと思っていた時だった。
「んん、あっ……」
 苦しそうな声と同時に、ぎゅるるる、と私にまではっきり聞こえる程、彼のお腹が大きく鳴った。
「ああ、う、あ、だめ、といれ……」
 彼はトイレに立とうとしたのか、体を起こす。その瞬間、ぶじゅ、と彼のお尻から水っぽい音がした。
「あ、あ、だ、めっ……」
 大丈夫かと聞きそうになったけれど、見るからに大丈夫じゃない。ぐるるる、と唸るお腹を抱えて、真っ白な顔には汗が浮いている。
 どうしたら良いのか、どうすべきなのか。この様子では動くのは厳しそうだ。……それなら。
「床に新聞引いてるから、ここで出しても大丈夫だよ」
「で、もっ……!」
「私、絶対見ないから。そこも後で片付ければ大丈夫だから」
 ぐるるる、とお腹が低く唸る音。薬も試したと言っていたから、その効果が出たのかもしれない。
「ごめ、ん、なさ、いっ……!」
 引き絞ったような悲鳴交じりの声に、慌てて背中を向けた。

 ぶじゅ、と水っぽい音がした。
「く、あ、あっ、ふぅぅぅ……!」
 苦悶の声。ふ、ふ、と息むような息遣いに合わせて、みちみちと粘っこい音がした。つんとした臭いが鼻を刺す。息遣いとともに、それは強くなっていく。
「あ、ぁっ……」
 甘い声には快感が混じっているように聞こえた。それと同時にべちゃと床に何かが落ちる音。何かなんて、言うまでもない。
 また、みちみちと鈍い音がする。彼のはくはくという荒い息遣いの音。どさりと床に落ちる音。2度、3度と聞こえるのは、それだけのものが彼のお腹に溜まっていたということ。
 鼻につく咽かえるような臭いはどんどん強くなる。そんな状況でも、感じるのは彼に対する心配だった。これだけお腹に溜まっていたら苦しかっただろう。それに、こんな状況でそれを出さないといけないなんて、恥ずかしくて辛いだろう。
「あ、あ、あっ……!」
 今までより切羽詰まった悲鳴が聞こえたかと思うと、ぶちゅぶちゅ、びちびちと激しい水音が聞こえた。
「ふっ……く、ぁ、あっ……」
 苦しそうな声。先程までとは違い、水っぽい音。お腹がぎゅるぎゅると鳴っているのも聞こえる。
 何かしてあげたいと思っても、振り向くわけには行かない。何もしないことが一番良いのだと自分に言い聞かせながら、心配する気持ちだけはずっと胸に抱えていた。

 少しすると、部屋はしんと静かになった。自分の心臓が激しく鳴る音と、咽かえるような臭いだけを感じた。
「あ、の、すみません、すぐ片付けますから、もうちょっとだけ待ってもらえますか」
「うん。机の上に色々置いてるから、使って」
「すみません」
 がさがさと物音がして、少しすると彼が部屋を出て言ったのが分かった。おそるおそる振り向くと、敷かれていた新聞紙は無い。あるのは鼻に付く残り香だけだった。
 消臭スプレーを振って、念のために床を拭いていると、ぎし、と床が軋む。顔を上げると、彼が居た堪れなさそうに立っていた。
 声を掛けようとして、ちょうど視線の中心に彼のズボンがあった。その中央が大きく膨らんでいて、つい視線が向いてしまう。彼も気付いたのか、慌てたように彼の手がズボンの中央を隠した。
「すみません、そのうち治まるから」
「こっちこそじろじろ見てごめん」

「えと、寝ようか」
 気まずい沈黙の後、場の雰囲気を少し和らげたくて、出来るだけ明るく言った。言葉もなく、彼は頷く。横になり、何となく彼には背中を向ける。
「すみませんでした、汚いことさせて」
 暗い部屋でぽつりと彼は言う。声が遠く、彼も背中を向けていることが分かった。
「ううん、大丈夫だよ。お腹は落ち着いた?」
「うん。……ありがとう、寧々さん」

 少しすると、彼が部屋を出ていった。トイレかと思って、気にせずに目を閉じるが、なかなか寝付けない。意識しないようにしても、先程のことが脳裏に焼き付いていた。目をぎゅっと閉じると、背後にいる彼のことを考えてしまう。声を押し殺していても堪え切れない吐息交じりの声や悲鳴が聞こえた。振り向いてはいけないとわかっているのに、すぐそこで行われている光景を見たいと、あの時確かに思ってしまった。
 全然寝付ける気がしなかった。喉がからからで、とにかく何か飲みたくて、私も布団を出た。

 リビングを出ると、トイレの扉が開いているのが見えた。中の明かりが廊下を照らして、その元に投げ出された足が見えた。
「ふっ、うぅっ……」
 聞こえる声はとても苦しそうで、心配になって近付いた。けれど、そうすべきではないとすぐにわかった。
 彼は床に膝をついて、便座に体を預けるような体勢でいた。それは一見、気持ちが悪くて吐いているような体勢だったけれど、そうではないのは一目瞭然だった。
 彼の右手はお尻に伸ばされて、先ほど私が触れたように、蕾に指を入れていた。指が動くのに合わせ、くちくちと音がする。
 声は苦しそうだったけれど、それだけではないようだった。ぎゅうと閉じた目が開くと、とろりと気持ちよさそうに溶けている。お腹の下では、男性器が大きく膨らんで持ち上がっていた。

 咄嗟に、部屋に戻ろうとした。見なかったことにしようとした。けれど、それより彼が振り向いたのが先だった。
 互いに無言のまま、見つめ合う。何も言えなかった。どう反応したら良いのか、何をすれば良いのか、わからない。
 彼の目が大きく見開かれる。それから、何かを言おうとしたのか口を開いて、でも何も言わずにぎゅっと口を噤んだ。驚きで大きく見開かれた目が、ぐにゃりと歪む。
 泣き出しそうな、そのまま溶けて落ちてしまいそうな目に、つい手が伸びた。泣かないで、大丈夫だから。頬に触れて、零れ落ちそうな涙を拭うと、彼は私の手に顔を寄せる。

 彼の右手に、自分の右手を添えた。その指先はお尻の中に入ったままだ。
「私が触っても良い?」
「えっ?」
「嫌だったらしないけど、私はしてみたいと思ってるよ」
 気を使ったつもりはなく、本心だった。触ったらどういう反応をするか気になった。そして、出来ることなら気持ちよくなってくれたら良いと思った。
「……さ、触って」
 ぐちゅ、と音がして彼の指がそこから離れる。先程触れたところに、今度は素手で触れる。充分に柔らかくなっていて、窄まりに指を押し付けると、簡単に飲み込まれた。
 彼の内側は熱くて柔らかい。肉を割るように指を進めていくと、それに合わせて、彼は切ない声を上げる。
「あ、ああっ……」
 壁を指先で撫でながら、奥の方へゆっくりと進む。ある部分に触れると、彼はひときわ大きな声を上げた。驚いて一瞬手を止めたけれど、それは明らかに痛みに対する反応ではなかった。
「痛くない?」
 言葉もなく、彼はこくこくと頷く。両手で便器を掴み、ぎゅっと目を閉じる様子は何かを堪えているように見える。
 指を曲げて、反応が強くなる部分をひっかくように刺激する。
「あ、あああっ、だめ、そこ、ぁっ……」
 声にならない声に、ぐちゅぐちゅと水音が混ざる。見ると、自由になった彼の手は、前で大きく立ち上がる男性器を掴み、上下に擦りあげていた。痛いんじゃないかと思うほど激しく手を動かしているが、どろどろに溶けた表情は痛みなんて感じさせない。
 指の腹で撫でて、時折強く押してみる。刺激に合わせて彼の体がびくびくと跳ねる。くちくちと粘っこい音がやけに耳に付いた。
「あ、あ、あっ、だめ、あ、ああ、あ、あっ……」
 お尻はぎゅうと窄まり、私の指を締め付ける。窮屈さに逆らうように押し広げて刺激を続ければ、彼の震えが一段と大きくなった。
「あ、う、あ、あ、あ、ああぁっ……!」
 全身がびくっと震え、彼はひと際大きな声を上げた。お尻がぎゅうと窄まって、私の指を締め付ける。びゅう、びゅ、と彼の手の中から、白く粘ついた液体が噴き出して床を汚すのが見えた。
 彼は全身で大きな呼吸を繰り返しながら、ぐったりと床に膝をついていた。お尻からも力が抜けているようで、指は何の抵抗もなくずるりと抜けた。
 ぐったりした様子に心配になり、そっと顔を覗き見ると、焦点の合わない目に涙を浮かべて宙を見つめていた。

「あ、まっ……て……」
 か細い声と共に、彼はぶるっと身震いする。ひたひたと水音がどこからか聞こえた。
 静かな水音と共に、トイレの床に水たまりが広がっていく。彼の手の中から、さらりとした液体が流れ出していた。
 つんと鼻を突くアンモニアの匂い。ああ、おしっこしている。我慢していたのか、おしっこはたっぷりと溢れ出し、座り込んだ彼の足を汚してどんどん水たまりを広げていく。
 私は何も言えず、彼も何も言わない。何も言えないのかもしれない。とろけた目をぎゅっと閉じ、ただただ水音を奏でている。
 少しすると、彼はぶるっと身震いした。先程までトイレの中にはいろいろな音が鳴り響いていたのに、一気に静まり返った。薄い呼吸の音だけが、耳に入る。
 へたり込み、ただ呼吸を繰り返す彼の背中を見ていると、小さな声が聞こえた。
「すみません、片付けます、から」
 便器に体を預けた状態のまま、彼は顔を上げない。私は何も言えずに、その場を離れた。

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この続きは 同人誌「エブリボーイ・ハズ・ヒズウーマン」にて公開(紹介ページに飛びます)

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初出: 2020年5月22日(pixiv・サイト同時掲載) 掲載:2020年5月22日

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成人済の時々物書きです。 スカ、女攻め萌え。BLよりはNLやGLが好きです。
18歳以上ですか? ここから先は、成人向けの特殊な趣向の小説(女の子、男の子のおもらし等)を掲載しています。