※大スカ要素があります
チャイムの音と共に室内の空気が動き出す。昼食後ということもあり、寝ていた奴が大半だったようで、終了と共に静かだった講義室内が段々と騒がしくなっていく。静かに吐いた溜息は喧噪に消えた。
机の上の物を片付ける。お茶の残りを一気に飲み干すと、空になったペットボトルを鞄の一番上に入れて、硬い椅子から立ち上がった。
立ち上がると、余計に体の重さを感じる。くそ、と意識せずに悪態が口から漏れていた。鞄を肩に掛けて、ゆっくりと講義室を出る。建物入り口近くのごみ箱に先程のペットボトルを捨てた。外に出ると少し肌寒くて、そろそろ冬物のコートを着ても良いかもしれないと思った。
この後、講義がもう一つある。出席も取るので、本当なら出るべきだとはわかっていたけれど、気が進まなかった。体が重くて、気怠くて、頭がぼんやりする。集中力なんて欠片もない。さっきの講義だって、一通り話は聞いていたものの、内容なんてひとつも理解できなかった。
その原因にそっと触れる。草臥れたデニムパンツのお腹の部分はぽこりと膨れていて、いつもよりベルトの穴を三つほど緩めないといけない程だった。
重さと苦しさが何日も続いているけれど、トイレでどれだけ頑張っても駄目だった。昨日も出なかった。一昨日も、その前も。週の初めに出て、今日はもう週末。今まで一日二日出ないことはあったけれど、ここまでは初めてかもしれない。
数日出ていないということは、それだけの物が溜まっているという事だ。ぽこりと膨れたお腹をさりげなく擦る。この怠さもいい加減限界だった。何とかして解放されたい。体の不調もあるけれど、何よりこんなことに悩ませられるのが嫌だった。
とりあえず、今日はもう帰ろう。さぼることになるけれど、一回くらい良いだろう。それに、出席したところで、先程と同じように話を右から左へ聞き流すだけに終わることは見えていた。
今日こそは何とか解放されたい。何か、解消方法を調べてみようか。後は何か薬を試すのも手か。それでも駄目なら最終手段は病院か、と一瞬だけ考え、それだけは嫌だと内心で首を振る。便秘で病院とか恥ずかしすぎる。何とか、自分で何とかしよう。きっと何とかなる。大丈夫だ。
重い足取りで何とか駅に着く。一歩踏み出すごとにお腹の重さを感じてしまい、小さなため息が漏れる。
駅のホームは風が吹き抜け、肌寒さに体が震える。それと同時に、僅かに込み上げる尿意を感じた。念の為にトイレに行っておこうかと考えた時、丁度ホームに電車が入ってくるのが見えた。
ここから最寄り駅まで30分程、そこからはゆっくり歩いて15分程。大した時間ではないし大丈夫だろうと、そのまま電車に乗り込んだ。
現在は16時過ぎ、帰宅する人はあまりいない。その上、乗る電車は市外に向かっていくので、元々乗客は少ない傾向にある。案の定、車内に人はほとんどいない。今はそれがとてもありがたかった。
扉のすぐ横に腰を下ろし、鞄を膝の上に乗せる。座ると、お腹がぐうっと圧迫されて、苦しさが増す。ああ、くそ、ほんとに嫌だ。少しでも楽になればと、鞄の下で腹を撫でた。
扉が閉まり、電車が走り出す。時間つぶしにゲームか読書でもしようかと考えたけれど、今は鞄から何かを取り出すことも億劫だった。鞄を抱えて、そっと目を閉じる。ああ、早く帰りたい。早く解放されたい。それが無理なら、とりあえず横になりたい気分だった。
+++
いつの間にか眠っていたようだった。ぼんやりした頭のまま目を開けると、丁度電車が駅のホームを出発したところだった。はっとして窓から見える駅の看板を確認したが、最寄り駅ではなく、ふうと安堵の息が漏れる。
あと15分くらいだろうか。シートに座りなおして、鞄を抱える。電車に乗る前に感じた僅かな尿意が思ったより強くなっていた。ぞくぞくと込み上げる悪寒に体が強張る。さり気なく体を揺すって、それを誤魔化した。
ああ、トイレに行きたい。おしっこ、結構したい。駅のトイレはあまり綺麗じゃないので家まで我慢しようと思ったのは最初だけだった。数分もしないうちに、駅に着いたらまずトイレに寄ろうと考えてしまう程には、尿意は強かった。
もう一度目を閉じて、時間が過ぎるのを待つ。いっそ寝てしまおうと思ったけれど、眠気はすっかり冷めていたのと、万が一乗り過ごしたらと思うと、とても眠れなかった。
はやくはやく。そんな思いとは裏腹に、電車はスピードを落としていく。気の抜ける音と共に扉が開いて、滞っていた車内に空気が流れ込む。足元が一気に冷たくなり、体がひとりでに身震いした。ぞくぞく走り抜ける悪寒の中心で、お腹の奥で張りつめているものが大きく震える。瞬間、一気に押し寄せる尿意に、体に力が籠った。
もう少し、もう少しだから。膝の上に乗せた鞄を強く握りしめる。はやく、はやく。そんな思いに答えるように、扉はゆっくりと閉まった。
電車に揺られ、時折吹き込む冷たい風に晒され、時間は淡々と過ぎていく。お腹の奥では込み上げた尿意が暴れる。鈍くもじんわりと突き刺さるような嫌な感触に、時折ぶるりと身震いする。
尿意は思った以上に強くて、どんどん勢いを増していく。ただでさえ膨らんでいたお腹が更に苦しく膨らむ。ああ、はやくトイレ行きたい、はやく、はやく。
苦しいお腹をそっと撫でる。そのままぎゅうと押さえてしまいたくなるのを必死に堪えて、代わりに鞄の紐を強く握った。こぽこぽと沸くように込み上げる尿意。背中に悪寒が走り、全身がぶるりと震える。瞬間、じわりと熱い液体が込み上げるのを感じて、全身に力が入った。
鈍く差すような尿意の奥で、重くずっしりとしたものが下りてくる感触に、思わず息を飲む。目を反らしたくなるけれど、これはずっと待ち望んでいた欲求だと体が喜んでいた。
嫌だ、なんで。確かに、ずっと待ち望んでいた。はやくこの不調の原因を取り除きたかった。でも、でも、今じゃなくてもいいじゃないか。受け入れたい気持ちと、認めたくない気持ちが頭の中でぐちゃぐちゃと混ざる。
ぐるぐるとお腹の中が動いているのがわかる。ずっと溜まっていて、なかなか出なかったものが押し出される感触に、ぞわぞわと背中に嫌な悪寒が走った。
顔を上げると、ちょうど扉が閉まったところだった。景色が流れていくのを見て、ぐっと息を飲んだ。
あと少し、もう少しだから。鞄を握りしめ、込み上げる欲求に必死に耐える。扉が開くたびに顔を上げて、そこが降りる駅ではないと知って、また顔を伏せて。
じわじわ込み上げる尿意。ずっしりと押し寄せる便意。お腹を抱えるように体を丸めると少しは楽だけれど、本当に少しだけで、気を抜くと一気に押し流されそうな激しい波が時折訪れる。
ああ、もう最悪だ。トイレ、はやく、はやく。そっと顔を上げると、車内にほかの乗客は見当たらない。鞄で隠れているのを良いことに、手が静かに鞄の影へ入っていく。
カットソーの上から大きく膨らんだ腹を撫でる。そのまま手は下へ。デニムの硬い感触、そしてその奥の出口を抑えるようにわずかに力が籠る。硬い布地越しではしっかりとは押さえられないけれど、それでも幾分尿意はましになる。
ああ、はやく、はやく、はやくっ。気持ちが焦れて、落ち着かなくなっていく。足が一定のリズムを刻んで揺れる。
ぐるぐるとお腹の中が動いている。溜まりに溜まったものを押し出そうと、ゆっくりと、でも確実に。下しているわけじゃない、体が健康だからこその鈍くて重い、ずっしりとした便意。
ああ、はやく、トイレ。家まで我慢なんて選択肢はとっくに消えて、頭にあるのは駅にある古びた薄汚いトイレだけ。何でもいい、あそこでいいから、はやく、トイレに。
ぐるぐると、お腹が音もなく鳴る。込み上げる感触に身が強張る。その間にも、鈍く差すような尿意がこんこんと湧いていて、悪寒が止まらない。ああ、トイレ、トイレ、トイレ。他のことなんて考えられない。トイレ、もう、ほんとに何でもいいからトイレ。
扉が開く。降りるのは次の駅で、ここではない。でも、もう我慢するのが辛くて辛くてたまらない。ここで降りてしまおうか。ここにもトイレはある。考えている間にも体は動いていた。鞄を握り、ゆっくりと腰が浮く。瞬間、ずっしりと重い物が押し寄せて、腰のあたりにぞくぞくと切ない感触が走った。
ああ、無理、もう無理だ。一度そう思うと、引きずられるように体もその方向に切り替わる。波が一気に大きくなり、同時にお尻に重い物が押し寄せる。
ああ、無理、トイレ、トイレ、トイレっ……! 鞄の紐を固く握り、そのまま電車を降りる。外の冷たい空気に全身がぶるりと震えるのと同時に、後ろで電車の扉が閉まった。
大きく張ったお腹を庇うように、体が自然と前かがみになる。それでも出来るだけ平静を装って、重い足を引きずり、できるだけ速足でホームを歩く。
この駅で降りるのは初めてだ。ひとつ手前なので、歩いて帰れないこともないと思ったことはある。まさかこんなことがきっかけで降りることになるとは思わなかった。
改札に向かいながら、トイレへの案内を探すけれど、それらしきものが見当たらない。そうしている間にも限界はどんどん迫ってきていて、足取りがどんどん重くなる。じわり、じわりと熱いものが込み上げる。ああ、いやだ、トイレ、おしっこ、おしっこっ……。
自然とズボンの前を握ってしまう。こんなところで、と思う反面、そうしていないと溢れてしまいそうで。周りを見回し、人がいないことに少しだけ安堵した。
どこ、トイレ、なんで見つからない。もう限界で、本当に我慢できないのに、それらしき場所が見つからない。僅かに残っていた余裕すらも消え去って、視界がじわりと滲む。トイレ、はやく、はやくトイレ、どこだ、はやく、はやく、はやくっ……!
ズボンの前を押さえながら、ぐるぐると唸るお腹を抱えて歩く。結局トイレは見つからずに、改札に辿り着いてしまった。流石に改札には人がいる。ズボンの前から手を放して、震える手で鞄の肩紐を固く握った。
改札の横にないか。細やかな希望は案内板に書かれた文字に打ち砕かれた。『この駅にトイレはありません』
その絶望感に足が震える。涙が込み上げるのを必死に堪えて、最後の意地で何とか改札を抜けた。もしかしたら、近くにコンビニとかあるかもしれない。そう思ったけれど、左右に伸びる道を目にして、その場に崩れ落ちそうになった。
線路沿いにまっすぐ道が伸びていた。見える限りは住宅街で、どちらを見てもコンビニのような建物は見えない。嘘だ、こんなの、最悪だ。これならあと一駅待てばよかった。薄暗くて汚れたとしても、トイレはトイレだ。そうしたら、今頃はこの状態からも解放されていたのに。
どうしよう、どうしよう。立ち止まって打ち拉がれていると、重くみっしりとしたものが押し寄せて、うあ、と小さく声が漏れた。出したい、はやく出したくてたまらない。体が勝手に出そうとする。力が入りそうになるのを必死に堪え、でも力を抜くこともできなくて。
トイレトイレトイレ、何でもいいからトイレ、はやく。だからと言って、その辺の家にトイレを貸してくれと言う度胸はない。最悪、どこかその辺りで隠れて、なんて方法までもが浮かんだけれど、周りは見通しがよくて、隠れられる場所なんてない。
こうなったら、ひとつしかない。ぎゅうと鞄の紐を強く握り、足を踏み出す。最寄駅であれば家まで15分。ここからだとどれくらい掛かるだろう。
ぐちゃぐちゃの頭の片隅で、どこか冷静に時間を計算しようとするのを止める。どれだけ時間が掛かろうと、我慢するしかないのだから。
不幸中の幸運か、道は線路沿いにまっすぐ伸びているので、迷うことはなさそうだった。
硬いアスファルトを草臥れたスニーカーでただ歩いていく。トイレトイレトイレ。お腹がぐるぐると唸る。痛い、苦しい、出したい。お尻の奥に、ずっしりと重い物が押し寄せている。出したい、出したくてたまらない。トイレ、トイレトイレ、はやくトイレ、お願いだから、はやく、トイレっ……。
じくじくと鈍くて刺すような衝動。歩くたびに、お腹の奥で大きく膨らんだものが揺れる。これ以上ない程に中身が詰め込まれて破裂寸前の水風船。中身を押し出そうと時折震えて、その度に手がズボンの前に伸びる。ぎゅうぎゅうと押さえて、出口を塞いで、落ち着いたら手を放して。でも落ち着くのもほんの一瞬で、すぐに次の波が押し寄せる。
あああ、やだ、いやだ、トイレ、トイレトイレトイレっ……! 目のあたりが熱くなって、じわりと視界が歪む。我慢するのが苦しくて、出したくて出したくてたまらない。もういい、無理、その辺で、と何度も周りを見回したけれど、左手には線路が、右手には住宅街があるだけで、隠れられる場所なんて見つからない。
結局できるのは、ただ歩くことだけ。でも、本当に限界で、もう余裕なんてなくて、トイレ、トイレトイレ、それしか考えられない。思いが焦れて破裂しそうだ。鞄の紐を握る手が震える。負けそうな体と折れそうな心を支えるように、強く力を入れて握りなおした。
波が引いては押し寄せる。その度に強く大きくなっていく。ああ、トイレ、おしっこ、おしっこ、おしっこっ……! もう手はズボンの前から離せない。草臥れた、それでも硬いデニムの上から、ぎゅうぎゅうと出口を塞ぐ。それでも時折、熱いおしっこが押し寄せて、その度に足を止めてしまう。
だめ、でちゃう、だめ、だめなのに、でも、でも、おしっこ、もうっ……! 布地越しでの鈍い感触がもどかしい。今すぐベルトを外して、その奥で切なく疼く出口を抑えたくてたまらない。でも、流石に道の真ん中でそんなことは出来ない。そんなちっぽけな理性と見栄が更に自分を追い詰める。
悪寒と共に、激しい波が押し寄せる。ああ、あ、やだ、だめ、トイレ、おしっこ、だめ、おしっこおしっこおしっこっ……! ぎゅううっと強くズボンの前を握る。硬い布地の奥で疼く出口をぐいぐいと押さえる。
あ、やだ、だめ、あ、あ、あぁっ……。我慢しているのに、押さえているのに、波が治まらない。先端に向かって、熱い雫が込み上げる。
やだ、だめ、あ、あ、あっ。がくがくと膝が震える。じゅう、と熱い液体が出口を濡らす。じわりと下着が濡れる。あ、あ、あっ、ああっ。ぎゅうぎゅうと押さえて、息を飲んで、必死に堪える。
じゅう、と熱いおしっこが一瞬吹き出して、止まる。熱は一瞬で逃げて、冷たく濡れた下着が肌に纏わりつく。生理的な不快感と、やってしまったという心理的な不快感に身の毛がよだつ。
嫌だ、最悪だ。そんな思いは一瞬でかき消される。
ぐるぐるとお腹が音もなく唸る。ほんの少し前まで全く動かなかったのが嘘のように活発で、溜め込んだものを押し出そうとしている。嫌になるほどにずっしりとしたものが、出口に押し寄せる。ほんの少し力を入れたら出てしまう、それくらいすぐそこまで硬いものが迫っているのがわかる。
体は純粋な生理現象を訴え続ける。出したい、はやく出したい。けど、ここじゃ出せない。激しい勢いに何とか抗って、重い足を何とか前に踏み出す。
膝が震える。それでも、ただただ歩き続ける。線路沿いの道は景色がほとんど変わらず、本当に自分が前に進んでいるのか不安になる。そんな思いを追い立てるように、電車が自分の何倍ものスピードで進んでいく。ああ、あと少しだけ我慢していたら、こんな目には合わなかったのに。
歩いて、歩いて、歩いて。真っすぐ伸びる道に時折横道が交わる。その度に左右を見回して、コンビニか何かないかと探すけれど、住宅ばかりで全く見つからない。
もう普通に立っていられない。ああ、だめ、おしっこ、おしっこ、ほんとに、もう……! 僅かな間もじっとしていられず、勝手にばたばたと足踏みを繰り返す。鞄を前に回し、その影でズボンの前をぎゅうぎゅうと握る。恥ずかしいと思う気持ちは残っていたけれど、それ以上に尿意が限界だった。
ああ、おしっこっ、おしっこもうむり、でる、もれるっ……。どこかその辺で、と考えたのは何度目だろう。辺りを見回すけれど、隠れられるところなんて無い。もういっそ見られても良い、端の方で。そこまで考えが進んでしまっても、僅かな理性がそれを拒否する。
ぐるぐるとお腹は疼いて、みっちりと硬く重いものを出口に向かって押し出している。お尻の奥、出口のすぐそこまで硬いものが来ている。ああ、もうやだ、お腹いたい、出したいっ、でもっ……! 最悪、立ちションならと思ったけれど、大きい方は流石に無理だ。どこかに隠れてならまだしも、いつ誰が通るかわからない場所でなんて、絶対に無理だ。
ひくひくとお尻の奥が疼く。咄嗟に、前を押さえているのとは反対の手でお尻を押さえる。硬いデニムパンツの中央の縫い目が指先で押さえつけられ、その奥の出口をぐいぐいと塞ぐ。そうしながら、反対の手はずっとズボンの前を忙しなく押さえ続ける。
ああ、トイレ、トイレトイレトイレっ……、もうほんとに無理、でる、でるっ……! いっそ理性も羞恥も何もかなぐり捨てて、そこでしてしまえたら楽なのに。
もう頭の中はぐちゃぐちゃで、訳が分からない。視界がじわりと滲む。鼻をすすって、とにかく歩く。片手で鞄の紐を、もう片手でズボンの前をぎゅうぎゅう押さえて、とにかく前に進む。
家までなんてもう絶対に無理だ。だから、一駅先、普段使う最寄り駅までたどり着けば、そこならトイレがあるから、せめてそこまで。
引きずるように足を前に進める。ああ、はやく、もうほんとに、トイレ、はやく、たのむからっ……、もう、ほんとにもうっ……。ぞわぞわと嫌な悪寒が体を走る。あ、ああっ、だめ、おしっこ、おしっこおしっこおしっこっ、あ、あっ……!
じわり、手の中で熱い雫が滲む。嫌だ、だめ、ああ、やだ、おしっこ、もうっ……! ぎゅうぎゅうと痛い程押さえて、それでもじわじわとおしっこが込み上げる。じゅう、と吹き出したおしっこが下着を濡らす。
押さえる手が濡れているのは汗のせいだ。こんなに我慢してる、こんなに苦しい、ちょっと、ほんとにちょっと出てしまっただけだから。ちゃんと、トイレまで我慢するから。
また横に道が伸びる。もう期待なんて持たない。駅まで我慢する。それ以外考えない。ちらりと目を向けて、広がる住宅街を確認して、そのまま歩こうとして足が止まった。そして考えるより先に、足が動いていた。
交わった道は今までよりも広かった。車道の隅には柵が伸び、歩道が整備されている。綺麗な柵に沿って伸びる歩道へ飛び込む。
建物の間に緑色の金網フェンス、そしてその向こうに見えたのは古ぼけたブランコだ。それは、つまり公園か何かがある。公園ならトイレくらいあってもおかしくない。
期待しないと決めた瞬間に見えた希望に、縋り付かずにはいられなかった。近づいていくと、期待に応えるように、フェンスの間に背の低い車止めが見えて、その奥へと進めるようになっていた。
早足に車止めの間を通り抜けると、そこには期待したとおり、こじんまりした公園が広がっていた。夕方のオレンジ色の日差しに染まる遊具には幸い人はいない。砂場にブランコ、半分埋まったタイヤ。そして、その隅に灰色の四角い建物。それを目にした瞬間、思わず息を飲んだ。
トイレ、トイレトイレトイレっ! 気持ちが緩んだ瞬間、手の中が再びじわりと熱く濡れる。ああ、あ、でる、でるでるでるっ、トイレ、はやく、トイレっ……!
もう限界なんて既に超えている。ぎゅうぎゅう押さえて、それでも時折熱いおしっこが溢れて下着を濡らす。お尻がひくひくと疼いて、すぐそこまで詰め込まれた物を出しそうになる。だめ、でる、でちゃう、トイレ、おしっこ、はやく、もうだめ、もれる、でちゃうっ……!
なりふり構っていられない。片手でズボンの前をぎゅうぎゅう押さえながら、反対の手でベルトの留め具に触れた。肩に引っかかっていた鞄の紐がずるりと落ちて、二の腕のあたりに引っかかる。ああ、あ、だめ、でる、むり、もうむり、でる、といれといれといれ、といれっ……!
がちゃがちゃとベルトを外しながら、扉もない建物の中に入る。足元のタイルは砂が散り、じゃりっと音がした。入ってすぐそこに手洗い場とその隣に小便器、そしてその奥に扉の閉まった個室。
寛げたズボンの中に手を突っ込んで、下着越しにぎゅうぎゅうと前を押さえる。ぐっしょりと濡れた下着は冷たくて、その中で熱いものが手を濡らす。
ずり落ちそうなベルトを反対の手で支え、閉まった扉に飛びつく。そのまま扉を開けて、中に飛び込もうとして、でもそれは出来なかった。
薄い扉の向こうには、見慣れた和式の便器があった。けれど何故か黄色いテープで覆いがされている。誰かの悪戯かと思ったけれど、テープの隙間から見える便器はひび割れ、あちらこちらが欠けている。これじゃ、テープを剥がしたところで使えない。何かが原因で破損してしまったのを使えないようにしているのだと、いっぱいいっぱいの頭でどこか冷静に考えた。
嘘だ、そんなの、だって、もうっ……! 手の中がじわりと熱くなる。ぎゅるぎゅるとお腹が鳴る。ああ、あ、だめ、でる、でちゃう、もうむり、むり、でるでるでるでるっ……!
頭の中がぐちゃぐちゃだ。それでも咄嗟に便器に背を向けた。小便器と手洗いの前を通り過ぎ、建物を出る。
押さえる手が熱い。だめ、あ、あ、あああっ。もう良い、ほんとに何でも良い、でる、でちゃう、むりだめ、おねがい、どこか、ほんとに何でも良いからっ、といれっ……!
右を見て、左を見て。ブランコも砂場もタイヤ飛びも道から丸見えだ。緑色のフェンスは目隠しにはならない。
咄嗟に後ろを向く。今、入って出てきたばかりの灰色の建物。その横、フェンスと建物の間に僅かな隙間があることに気付いた。人ひとり通るのがやっとの隙間。
ずるずると肘のあたりまで落ちた鞄を投げ捨てて、その隙間に飛び込んだ。フェンスと建物の間を強引に通ると、丁度建物の真裏に辿り着く。正面は同じような緑色のフェンス。フェンスの向こうは何かの建物の壁。後ろは灰色の建物。
じゅわ、と熱いおしっこが溢れて、下着と手を濡らす。お尻がもう限界だと、大きく口を開く。硬く大きく、ごつごつとしたものが這いずり出てくる感触。
あ、あああ、だめ、ああ、あ、あっ……! 震える手で、ズボンと下着を掴む。しょろしょろと、おしっこが細く吹き出す感触。お尻がぐわっと開いて、硬く重いものが出てくる感触。
一気にズボンと下着を引きずりおろす。しゃがみ込む余裕もなかった。中腰の体勢のまま、お尻が露わになった瞬間、ごつごつと硬いものが一気に飛び出し、べちゃ、と地面に落ちた。その鈍い痛みと爽快感に、思わず声が漏れた。
先端から細くしょろしょろと溢れていたおしっこは、一気に勢いを増す。ぶじゅうう、と水道の蛇口を一気に捻ったような激しい水音と共に、太い水流が雫を撒き散らしながら地面に叩きつけられる。
ぽかんと口が開いていた。はー、はーと長い呼吸を繰り返しながら、頭が真っ白に染まる。ただただ気持ちよくて、頭の芯が蕩けるようにぼんやりしていた。
あ、あぁっ、でた、だせたっ……で、たぁっ……!
じゅうじゅうとおしっこが激しく吹き出す。再び、お尻に重い感触。少しお腹に力を入れると、ひくひくと疼いていたお尻が再び大きく口を開く。ごつごつした硬いものがゆっくりと頭を出して、そのままずるずると押し出されていく。ぐわっとお尻はこれ以上ないくらい大きく開いて、苦しいけれど、生理的な快感がぞくぞくと腰のあたりに響く。
あ、あ、でる、で、てる。重かったお腹が軽くなっていく。べちゃ、と地面に落ちる音。爽快感と解放感に、声もなく熱い息が漏れた。
そっと視線を落とすと、砂の地面は色を変え、その上には大きな水たまりが広がっている。足元をこんなにしてしまうまで出したのに、まだおしっこは止まらない。勢いは幾分治まったけれど、それでもしゅうしゅうと水音を立てて、飛沫を散らしていく。
ぐるぐるとお腹がまた動いて、鈍い便意がまた込み上げる。お腹に力を込めると、先程よりは柔らかいものがずるずると出てくる。びちゃ、びちゃ、と水溜まりに落ちる音が何度も鳴った。
荒れ狂う欲求が段々と落ち着いていく。真っ白だった頭が少しずつ冷静になって、自分が今どこで何をしているかを冷静に把握してしまう。目の前は緑色のフェンスと何かの建物の壁。辺りは明るくて、オレンジ色の夕日が辺りを照らしている。
もし、誰かが来たら。考えるだけで背筋がぞくっとしたけれど、今の状態から動くことは出来なくて、ただただ誰も来ないことを祈るだけだった。
ぴちゃ、ぴちゃと雫が水溜まりに落ちる。長い呼吸を繰り返しながら、激しく動いた後のように疲れ果てていた。
でた、ぜんぶ、でたっ……。少し前まで重くて苦しくて仕方なかったのに、今はすっきりと軽い。お尻は硬い物を出した刺激の余韻がじんわりと残っている。爽快感と開放感に、静かに身震いした。
膝のあたりに引っかかっている下着はぐっしょりと濡れて色を変えていた。鞄からティッシュを取り出そうとして、向こうに投げ捨てたことを思い出した。仕方なく下着とデニムパンツを浅い位置まで持ち上げる。よく見るとデニムパンツには点々と黒い飛沫が散った後があった
足元は大きな水たまり、そして、ふてぶてしい黒い塊が幾つか。犬の糞じゃ流石に説明が付かないだろう大きさに、羞恥で頬がかあっと熱くなった。こんなに溜まっていたなんて、体が重くて苦しかったのも当たり前だと妙に納得した。
できるだけ水溜まりを踏まないように、建物の正面に静かに回る。人がいないことを確認して、表に落ちている鞄を拾い上げるとすかさず裏手に戻る。鞄からティッシュを出してお尻を拭いていると、夕方とは言えまだ明るい時間帯に何をしているんだと情けなくなった。
中途半端だった服装を正す。ぐっしょり濡れた下着が肌に張り付くのが心地悪いけれど、仕方ない。ベルトを締めなおしながら、ズボンの前は濡れていないことを確認して、小さく溜め息を漏らした。膨らんでいたお腹は普段どおりに落ち着いていて、ベルトの穴も問題なくいつもの位置に止めることができた。
鞄を肩に掛けなおし、もう一度建物の正面に戻る。人がいないことを再三確認して、速足で公園から飛び出した。
線路沿いの道へ戻る。頭も体もどろどろに疲れていた。早く帰りたい、着替えて横になりたい。けれどそれとは裏腹に、体は驚くくらい軽い。さっきまでも何倍もの軽い足取りで、真っすぐな道を歩いた。
+++
【もし電車を降りなかったら】
見慣れたマンションが見えた瞬間、一気に目頭が熱くなった。ついた、やっとついたっ……! もう本当に限界で、ぎりぎりで、今すぐにでも出てしまいそうなのを気力だけで耐えていた。
手はぎゅうぎゅうとズボンの前を握りしめた状態から離せない。押さえているのに、激しい波は全然治まらず、呼吸の度にじわりじわりと熱い液体が滲む。デニムの下で、もう下着はぐしょぐしょに濡れていた。
自動ドアを潜り抜け、エレベーターのボタンを押す。こんな時に限って箱は上の階にあって、なかなか降りてこない。ああ、もうほんとにでる、もれる、ほんとに無理だから、はやく、はやくっ……!
お腹が苦しい、痛い。ひくひくとお尻が疼いて、すぐそこまで迫った重い塊を追い出そうとしている。必死に押しとどめながら、減っていく数字を睨む。はやくはやくはやくっ……! じっとしていられず、足踏みを繰り返す。
あああ、だめ、おねがいはやく、といれといれといれっ、でる、もれる、おねがいだからはやくっ……! ぎゅうぎゅう押さえて、お腹を抱えて、足踏みを繰り返して。子どものような我慢の仕方だけど、そうしていないと我慢できない。誰かが来たら、と考える余裕もない。
でる、でるでるでるっ、だめ、はやく、ああ、あ、ほんとにはやくっ、もうでちゃうからっ……! もう少し、もう少しと減っていく数字を見つめる。はくはくと浅い呼吸しか出来ない。
ゆっくりと重い扉が開く。飛び乗ってボタンを押す。のろのろと閉まっていく扉に、焦れた気持ちが更に暴れだす。
デニムパンツの上から、手は絶え間なく出口を押さえる。濡れた下着が張り付いているのがわかる。お尻もひくひくと疼いて、出口の寸前まで硬いものが迫っている。
呼吸の合間に、お尻は大きく口を開けて、塊がゆっくりと頭を出しそうになる。咄嗟に、反対の手でお尻を押さえつけて、物理的に塞ぐ。指先に硬い感触。ああ、あ、だめ、でる、でるっ……! まだ駄目だと頭ではわかっているのに、体はもう限界を既に超えていて、生理的な衝動に身を任せてしまいそうになる。
だめ、もう少しだから。エレベーターはゆっくりゆっくりと上へあがっていく。もう少し、もう少し。はやくはやくはやくっ!
エレベーターが止まる。開き始めた扉の隙間に体を割りこませるように飛び降りた。歩きながら、鞄の中から鍵を探す。片手では見つからなくて、仕方なく両手を使う。押さえを無くした出口は前も後ろもじわりじわりと口を開き始める。
ああ、あ、だめっ、でる、でちゃう、だめだめだめ、ああ、あ、あぁっ……! じゅう、じゅと熱いおしっこが込み上げる。両足を寄せて、ぎゅうと交差させて出口を押さえつけるけれど、止まらない。太腿に熱く濡れる感触。
お尻の方も限界で、硬く大きな塊が出口を抉じ開けていく。じわじわと確実な衝動に、我慢しようとしても抗えない。
ああ、あ、だめ、といれ、はやくっ、あ、あ、あっ……! 震える手で鍵を取り出し、鍵穴に差す。手が見てわかるくらいに震えていて、上手く鍵を開けられない。その間にも、じゅう、とおしっこが溢れて、お尻からは重いものが頭を出して。
それでも何とか鍵を開けて、中に飛び込む。足先だけで靴を脱ぎながら、鞄を投げ捨てる。両手でベルトをがちゃがちゃと外しながら、トイレに駆け込む。
膝が震える。足を踏み出すと、ぐじゅ、と靴下が濡れている。じっとり濡れた下着とズボンが肌に張り付く。我慢してるのに、じゅう、じゅ、じゅ、とおしっこが吹き出して。
ベルトが外れる。腰のあたりを掴んで、一気に下ろすけれど、張り付いた下着は指先をすり抜けて、肌にべたりと張り付いたまま。
ああ、あ、だめ、でる、あ、あ、あっ、ああ、あっ……! 手が、足が震える。上手く呼吸が出来ず、ぐあ、と喉の奥から潰れた声が漏れた。
くぱくぱと疼いていたお尻がぐわっと大きく口を開く。大きな塊はごつごつと歪で、硬く、出口をこれ以上ない程に押し広げた。そこをずるずると塊が通り抜け、ずるりと飛び出す。うあ、あ。声が漏れると同時に、べちゃ、と濡れた下着が重さを増した。
あ、あ、いや、だっ、でた、でちゃ、ったっ……! もう体は言うことを聞かない。じゅう、じゅ、と断続的にあふれていたおしっこは、一気に勢いを増す。ぶじゅうう、と激しい水音と共に下着を濡らし、膝下に引っかかったデニムパンツへびちゃびちゃと水流が落ちていく。
駄目だと思うことも出来ない。全身にぞくぞくと快感が走り抜け、思考がどろりと溶けた。
お尻は鈍い刺激の余韻で、ひくひくと収縮を続ける。すっきりした瞬間に、再びお腹がぐるぐると唸って、再び激しい便意が込み上げる。あ、ああ、まだでる、あ、うぁ、まって、あ、ああぁっ……!
咄嗟に、両手で下着を下ろす。もうぐしょぐしょに濡れていて、中央にはふてぶてしい塊が歪な形そのままに横たわっていて。そのおぞましさに身の毛がよだつ。
おしっこは止まらない。じゅうじゅうと野太い水流を撒き散らしながら、なんとか方向転換して便器に座った。
じょぼぼぼ、と水溜まりにおしっこが激しく注ぎ込まれる音が響く。荒い呼吸を繰り返しながら、激しい便意に身を任せて、力を入れた。ぐう、と潰れた声が漏れて、ひくひく疼いていたお尻がぐわっと開く。先程よりも柔らかい、それでもしっかりとした太い塊が出てきて、ぼちゃんと水面を揺らす音がした。
ぎゅるぎゅるとお腹が唸る。もう力を入れなくても、お尻は勝手にぱくぱくと開いて、数日間溜め込んだものを次々に追い出していく。その爽快感に、はあと熱く長い息が漏れた。
しばらくして、おしっこは勢いを弱め、最後に数度雫を零した。お尻もひくひくと疼いてはいるものの、お腹にはもう何も残っていない。
すっきりした体とは裏腹に、視界の先は最悪の状態だった。足元はびちゃびちゃ、床に落ちたデニムパンツはぐっしょりと濡れて色を変えている。膝下に引っかかった下着も重く濡れて、中央にはずっしりと重く太い物がふてぶてしく乗っている。
便座に腰かけたまま、頭を抱える。最悪だ。ほんとに最悪だ。片付けないといけない。着替えも用意して、シャワーを浴びて。しないといけないことは幾つも思い浮かぶけれど、体も心もずっしりと重くてたまらない。このまま消えてしまいたいくらいの情けなさに、鼻を啜る。
それでも、こうしていてもどうしようもない。はあ、と大きなため息をひとつ漏らして、とりあえず水を流した。
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初出: 2021年2月14日(pixiv・サイト同時掲載) 掲載:2021年2月14日