【同人誌】No.DRinK 短編集その3

コピー本 A5サイズ 24ページ 300円
「秘密の合言葉」「くーる・がーる・りらーっくす その2」を収録

女の子おもらしがあります

2022年5月4日 し~むす!24にて販売
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【サンプル】

一 秘密の合言葉

 街外れの教会は厳かな雰囲気に包まれている。人々が目を伏せる中、美しいシスターがその中心で聖書を読み上げていた。それぞれ心の中にあるものは違えど、その思いを神へと捧げるのは皆同じ。シスターの清らかな声が響き、人々の思いを乗せて天へと登っていく。
 その空気を引き裂くように、ぎいと扉が軋む音がした。シスターの声が止まり、人々も何事かと顔を上げる。そして視線が集まる中、僅かに開いていた扉が更に引き開けられた。

 扉の向こうからおずおずと顔を出したのは美しい少女だった。大人というにはまだ年若く、伏せた瞳は揺れていた。
「あ、あのっ」
 少女はか細い声でそう言うと、室内に足を踏み入れる。よく手入れされたであろうブロンドの髪や、シンプルながら上質そうな衣類から、彼女がどこかのご令嬢であることは容易に想像がついた。
「お、お祈りの最中に、申し訳ありませんっ……。あの、えっと……」
 小さな唇が動いて、礼儀正しく謝罪の言葉を紡ぐ。その声はか細く震えていたが、小鳥の囀りのように可愛らしい音だった。
 更に一歩、彼女は中へ進む。揺れるブロンドの下で、整った美しい顔は不安で満たされていた。小さな体は見てわかる程に震えている。一体このご令嬢に何があったのかと、心配と疑問の視線が彼女に集まっていた。
「あ、あのっ、か、カラパ公爵の件で、ご相談があって参りましたっ……」
 消え入りそうな声で紡がれた言葉に、シスターだけが反応を見せた。シスターは普段の穏やかな笑みを浮かべると、ご令嬢へと手を差し伸べた。
「まあ、それは大変です。どうぞこちらのお部屋へ。お話をお聞きいたします。
皆様、申し訳ありませんが、お祈りを一旦中断させてくださいませ」
 シスターの言葉に素直に納得したものは半数程。残りの半数は、我々のお祈りを中断してまで、この闖入者は優先されるべきなのかと感じていた。
けれど、不満を口にする者はいなかった。それはひとえにシスターに対する信頼からであった。日々、神に仕え、人々に尽くす心優しきシスターを皆が慕っていた。彼女が言うなら仕方がない、そう思わせる信頼を彼女は築き上げていた。

 シスターの差し伸べた手に向かって、ご令嬢は中央の通路を歩いていく。青い目には涙はいっぱいに溜まっていて、深い藍色のスカートを揺らす両足は見てわかる程に震えている。
 小さな歩幅で早足に歩いていく様子に、さぞ大変な思いをしたのだろうと皆が感じた。誰にも頼れず、相談できず、不安でいっぱいの中、藁にも縋る思いで、この心優しきシスターを頼ってきたのだろう。ここに集った者は皆そうやって集まってきた。きっと彼女もそうなのだろう。
 震える足取りでシスターの元へ辿り着いたご令嬢は、そのまま背を抱かれるようにして奥の扉へと向かう。その先は相談室だ。シスターが温かなお茶と共に人々の悩みを聞いてくれる場所だった。

 シスターが扉を開けて、ご令嬢がその中へ足を踏み入れる。その背中が見えなくなると、シスターは皆に向かって頭を下げてから、彼女を追うように中に入った。ぱたりと扉が閉まると、教会の中はしんと静かになった。

二 くーる・がーる・りらーっくす その2

 友人から貰った割引券の裏側を見ながら、なんとか小さなビルに辿り着くことができた。縦に並んだ看板の中にお店の名前が確かにあって、無事に到着したことにひとまず安心した。駅から徒歩十分のはずが二十分は掛かってしまった気がする。早めに出発して良かったと心底思った。
 エレベーターに乗って目的の階へ登る。ふたり乗ればいっぱいになりそうな小さな箱はがこがこと音を立てている。本当に大丈夫かなと不安になり始めた時、箱は停止して、重たい扉がゆっくりと開いた。

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 友人とランチをした際、デスクワークで肩が凝ると軽い愚痴を漏らしたところ、この割引券をくれた。友人自身も先日行ったそうで、とても良かったよと口にする。
『良かったのに割引券をあげちゃって良いの? 自分でも使えるんでしょ?』
『うん。その……もう行けないと思うから』
『行けない?』
『あ、いや、あの、仕事が忙しいから、しばらく行けないってこと。だから気にしないで』
 友人はそう言って、目を伏せる。何か事情があるのは感じたけれど、そこを聞くのは止めておいた。付き合いが長いとはいえ、聞かない方が良いこともある。
 割引券を素直に受け取って財布にしまう。話題は自然と違うことに移り変わった。

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 エレベーターを降りると、思ったより狭い空間が広がっていた。お店の入り口はすぐそこで、扉は開かれている。そこに割引券と同じ雰囲気の看板が掛かっていた。OPENの文字を確認してから、そっと店内を覗き込んだ。
 まずビタミンカラーのソファやテーブルが目に入った。派手な色だけれど全体的にうまく纏められていて、薄暗い照明の中では落ち着いて見えた。
 扉の横にカウンターがあった。そこには誰もいなかったけれど、奥からぱたぱたと駆け寄る音が聞こえた。
「いらっしゃいませー。ご予約のお客様ですかー?」
 小柄で、とても可愛らしい女性が奥から姿を表した。少し間延びした話し方も相まって、つい頬が緩んだ。一言で表すならゆるふわ。それを体現したかのような方だった。
 名前と予約時間を伝えて、割引券を渡す。女性は何かのリストを確認した後、にっこりと笑う。それから、パステルカラーのソファに案内された。

 紅茶を頂きながら、問診を受ける。話しながら、この女性が店長だと発覚して内心驚いた。雰囲気も話し方も全てが若く見えたので、勝手にアルバイトか従業員かと思っていた。
「自分のお店を持つなんてすごいですね」
「ありがとうございますー。あはは、ぜーんぶ自分ひとりでやりたくなっちゃって、思いきっちゃったんですよー。
 わたし一人でぜーんぶやってるのでー、色々と不手際があるかもしれませんが、気になることがあったらなーんでも言ってくださいねー」
 そう言って、紅茶のおかわりを注いでくれた。道中道に迷ったので喉が渇いていた。おかわりを頂きながらも問診は続いていく。
「ふむふむー。それではー、腰を中心に、足のむくみや張りも見ていきましょうー」
 そう言って店長さんは立ち上がって、奥の扉を開けてくれる。鞄を手に中に入ると、中は更に薄暗くなっていた。

成人済の時々物書きです。 スカ、女攻め萌え。BLよりはNLやGLが好きです。
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