夜空には雲一つなく、とても良いお天気です。月と僅かな星が輝く中、ひとつのソリが駆け抜けていきました。
「さあさあさあ、急がないと! 次のプレゼントはちゃんと用意出来てる?」
ソリを引くのは一匹のトナカイ。前を見ながら、甲高い声で早口に言葉を紡ぎます。
「大丈夫です!」
返事をしたのはまだ若い男の子。ソリの前部分は段差がついて椅子のようになっていて、その部分に座っていました。
着ている赤い上着の襟と袖は白いファーが覆っていて温かそうです。足首まで伸びたズボンも赤色。頭には赤い帽子を被っていて、その姿はまごうことなきサンタクロースでした。
彼はサンタ見習いの男の子。本日が記念すべき初仕事です。
サンタ・ニコラウス様から一匹のベテラントナカイをお借りして、この区画のプレゼント配達を任されることとなったのでした。
ソリの後ろに乗せた白く大きな袋には綺麗にラッピングされたプレゼントが詰め込まれています。彼はその中から一つ取り出して膝に抱えました。
トナカイはソリを引いているにも関わらず、驚くべき速度で夜空を走ります。静かな夜の空気、そして流れる風の冷たさに彼がぶるりと身震いしていると、ソリはゆっくりと速度を落としていきます。直ぐ側には大きな一軒家がありました。ここが次の配達先のようです。
彼はプレゼントを抱えて、曲げていた膝を伸ばします。立ち上がると、ソリは不安定にぐらりと揺れました。落ちないように足元に気を付けながら、ベランダへと静かに降り立ちました。
サンタには不思議な力が備わります。たくさんのプレゼントが入る白い袋が作れるのも、夜空を駆けるトナカイとソリが誰からも見えないのも、今触れたガラス戸の鍵が音も無く開いたのも、その力のおかげでした。
足音に気を付けながら、そろそろと部屋の中へ入ります。そこには勉強机や本棚があり、足元には荷物が散らばっています。そして隅にあるベッドには、サンタ見習の彼よりも幼い少年が寝息を立てて眠っていました。
枕元には小さな靴下がちょこんと置かれています。その中に入れるのは流石に厳しそうなので、抱えていたプレゼントは少年の枕元にそっと置いて、静かに踵を返しました。
外に出てガラス戸を閉めると、サンタの不思議な力でひとりでに鍵が掛かります。それを確認してからソリへと戻ると、彼が座るのを待ちきれずにせっかちなトナカイは走り出しました。
「さあさあさあ! 次よ次! 急がなくっちゃ!」
トナカイの早口を聞きながら、彼は揺れるソリに慌てて座りました。一仕事終えたことにほっと息を吐いて、流れる風の冷たさに身震いします。そして足元から水筒を取り出しました。
悴む手で蓋を外すと、中からふわっと温かな湯気と甘い香りが立ち上ります。蓋に向かって水筒を傾けると、中から優しい色合いの液体が流れ出て、湯気が更に広がりました。
温かくてふわりと甘い香り。サンタ・ニコラウス様特製の甘いココアです。コップ代わりの蓋いっぱいに注いで口を付けると、冷えた体にじんわりと染みわたっていきます。はあ、と吐き出した息が夜空に白く広がりました。
寒さもあって、注いだ分はあっという間に飲み干してしまいました。それだけでは足りずにもう一度水筒を傾けると、蓋の半分ほどを満たしたところで中身は空になってしまいました。出発前にたくさん貰ったのに、もう全て飲んでしまったようでした。
最後のココアを飲み干してから、空っぽになった水筒を足元に戻します。そして彼は夜空を駆けるソリの上で、寒さから少しでも身を守ろうと体を小さく丸めました。
サンタの白い袋は随分小さくなっていました。プレゼントの残りは僅か。あと何件か回れば、与えられた仕事を全て終えられそうです。
(あとちょっと……)
彼は冷たい手で、ズボンに覆われた自分の膝を撫でました。雪こそ降っていないものの、冬の夜空は寒く、ソリが駆けると全身に冷たい空気がぶつかってきます。
ぶるっとひとりでに身震いする体に、小さく息を飲みました。撫でた膝が小さく震えます。ブーツの爪先がもじもじと落ち着きなく動いていました。
(ああ……、はやくトイレに行きたい……)
体を温めたココアは全てお腹の中。寒さも相まって、彼は随分前からトイレに行きたくなっていました。
ベテラントナカイは休憩もなく夜空を駆けます。どうもこのトナカイ、仕事の手際が良くて面倒見が良いものの、とてもせっかちです。まだ若い見習いサンタをフォローしてあげようと頑張ってくれているようですが、仕事以外のことまでは気を配ってはくれません。
そんなに急がなくても、と彼は思うのですが、何せ見習い。余計な口出しは簡単に却下されてしまいます。
先程もそうでした。
プレゼントの残りも半分を切った頃、彼はトイレに行きたくなりました。寒さに手も悴んでいて、どこかで用を足してからココアをゆっくりと味わいたいと思って、夜空を駆けるトナカイに声を掛けました。
「ヴィクセンさん! あの、どこかで少し休憩しませんか?」
彼の申し出に、トナカイは足を止めることなく、早口に言いました。
「何を言ってるの! そんな時間はありません! 夜が明けるまでに全部配り終えないと行けないんだから! 万が一を考えて早めに終わらせないと!」
「で、でも、少しくらい……」
「さあさあさあ! 次のプレゼントは用意した? こういう移動の間に確認するのよ! 残りの数は合ってる? 間違ってたらすぐに言うのよ! 取りに戻らないといけないからね! さあさあさあ!」
こんな感じで、結局トナカイは次の家へと駆けて行ってしまいます。そうなってしまうと、彼は大人しく言うことを聞いて、次のプレゼントの用意をするしかありませんでした。
ゆっくり飲みたかったココアも、移動の合間に忙しなく口を付けるのがやっと。勿論、トイレを済ませることもできません。我慢して仕事に臨むしか今の彼にはできませんでした。
次のプレゼントを袋から取り出しながら、彼はもじもじと体を揺らします。
トイレに行きたくなってから随分時間が経っていました。最初は平気でしたが、今となってはじっとしていることも辛くて、ソリの低い椅子に座りながらも、その足はもじもじと忙しなく動き続けています。
(トイレ行きたい、おしっこっ……)
そんな心の声もトナカイには届きません。吐き出した悩ましげな吐息は白く染まって夜空へと消えていきます。そうしている間にも次の家が近付いてきて、トナカイの速度が落ちていきます。
プレゼントをしっかりと抱えて、彼はもう一度息を吐きます。ソリが止まると、急ぎながらも落ちないように気を付けながら、ベランダへと移動しました。
そうやっておしっこを我慢しながらも、彼はサンタの仕事をきっちりとこなしました。失敗も間違いもひとつもありません。
この家でも、枕元へとプレゼントを置くと、足早に戻ってきてソリへと飛び乗ります。トナカイが忙しなく走り出す中、後ろからすっかり小さくなったサンタの白い袋を手繰り寄せました。中を覗くと、青い包装紙に包まれたプレゼントがひとつ、ぽつんと残っていました。
「さあさあさあ! 次が最後ね! プレゼントの残り数は合ってるかしら? 大丈夫! 間違っていても取り戻せるだけの時間はあるわ! さあさあさあ!」
「だ、大丈夫! あと一個だけです!」
流石ベテラントナカイ、プレゼントの配達先も個数も全て頭の中に入っているようで、確認せずとも次が最後の一つだと言い当てました。そんなトナカイの早口に負けないくらい、彼も早口で返事をします。
最後のプレゼントを膝の上で抱えながら、両足を忙しなく動かして、最後の家へ辿り着くのを待ちます。空は真っ暗で、日の出まではまだ時間があります。冷え込みは更に増していて、彼女の体から温かさをどんどん奪っていきます。
(これが最後! これ終わったらトイレ!)
プレゼントがひとつ減るごとに、まるでお腹のおしっこが増えているかのように、尿意はどんどん増していました。プレゼントを抱えて、お腹にたぷんと溜まったおしっこを必死に我慢します。そうしていると、トナカイは段々と速度を落としていきました。
最後の配達先はマンションの一室でした。ソリが止まるや否やベランダへ飛び移り、ガラス戸を開けて中へと入ります。どうやらこの部屋は物置に使っているようで、ベッドも子どもの姿もありません。扉を開いて、更に奥へ進みます。
そこは広い部屋で、大きなソファや机があります。隣にはもうひとつ部屋があり、扉は閉まっていません。そっと中を覗き込むと、大きなベッドに親子三人が仲良く眠っているのが見えました。
音を立てないように気を付けながらベッドへと近付きます。はやく終わらせてはやく戻ろう。彼がそう思いながら枕元へプレゼントを近付けた瞬間、中央で眠っていた男の子がもぞもぞと身動ぎしました。
(え、お、起きるっ……!?)
まさかの事態に思わず息を飲みます。慌てながらもとにかくベッドから離れると、危惧した通り、男の子はむくりと起き上がりました。
サンタは子どもに見つかってはいけません。部屋を飛び出し、咄嗟にソファの陰にしゃがみ込みました。プレゼントはまだ彼の手の中。落とさないように見つからないように、胸の中にぎゅっと握りしめていました。
ベッドが軋む音がして、ぺたぺたと裸足の足音が近付いてきます。ソファの陰で小さく体を丸めて、じっと息を潜めていました。
(こっち見ないでよ……!)
少し覗き込めば見つかってしまう位置です。けれど、他の場所に移動しようにも、今動けば余計にばれてしまうでしょう。
男の子は眠たげな眼を擦りながら、リビングを通り過ぎていきます。どきどきしながら身を潜めている彼には気付くことなく、そのまま吸い込まれるようにひとつの扉へ近付きました。
「ん~、おしっこ……」
そう呟きながら、男の子は中に入ります。扉を閉めても微かに明かりが漏れて、リビングの一部を僅かに照らしていました。
ソファの陰に隠れながら、サンタ見習の彼は体をもじもじと動かしていました。じっとしてないといけないと思いながらも、彼のお腹にたっぷりと溜まったおしっこは早く出せと暴れていて、それを誤魔化すのに体が動いてしまいます。
(はやくベッドに戻ってくれ……!)
膝と膝を擦り合わせながら、彼は小さく息を吐きます。扉の隙間から細く零れる明かりを見つめていると、そこからはちょぽぽぽ、と可愛らしい水音が聞こえてきました。扉の向こうはトイレで、起きた男の子はおしっこがしたくて目が覚めたのでした。
その水音に、彼はぎゅうと体を固くしました。ぴたりと寄せた膝を擦り合わせて、抱えたプレゼントを更に強く抱き締めます。じっとしていられず、体を上へ下へと揺すっていました。
(あああ、だめ、おしっこしたい、おしっこっ……!)
身を潜めながら、もじもじくねくねと必死におしっこを我慢します。でも、扉の向こうから聞こえる水音が、彼のお腹に溜まったおしっこを暴れさせます。同じようにおしっこをさせろ! と体が叫んでいるようでした。
(おしっこっ、俺もおしっこしたいっ……!)
今、扉の向こうであの男の子がしているみたいに、自分もおしっこがしたい。想像したくないのに、その向こうで行われていることばかり考えてしまいます。
ズボンと下着を下ろして、何にも遮られずにおもいっきりおしっこをする。想像だけでもその瞬間は気持ちよくて、今すぐ縋りつきたくなる甘美な光景です。考えれば考えるだけ、彼のお腹ではおしっこが暴れまわっていました。
「あっ、あっ……!」
想像を色付けるかのように、両足の間でおしっこがじわあっと溢れ出してしまいました。静かにしないといけないのに、思わず小さな悲鳴が漏れていました。
咄嗟に、片手でおしっこの出口をぎゅううっと押さえます。ズボンの上から先端を指先で強く押さえて塞ぎます。下着は今溢れたおしっこでじっとりと濡れていました。
(おしっこ、おしっこしたいっ、おしっこっ……!)
呼吸がだんだんと荒くなり、体は落ち着きなくもぞもぞと動きます。
指先でぎゅうぎゅうと押さえた出口には、お腹にたっぷり溜まったおしっこがすぐそこまで押し寄せています。少しでも気を抜くと出てしまいそうで、体を揺すりながら必死に我慢を頑張っていました。
そうしていると、扉の向こうからは水を流す音が聞こえました。その気持ち良い水音にぞくぞくと悪寒を感じて、体がぶるりと震えました。
続けて、ぎいと扉が開く音が聞こえます。そして明かりの中から、すっきりした表情を浮かべた男の子が出てきました。明かりを消して、扉を閉めて、男の子は薄暗いリビングをぺたぺたと横切っていきます。
ソファの陰で、サンタ見習の彼は体を固くします。僅かでも動いたら見つかってしまうかもしれません。必死に息を潜めて、ばれないように身を潜めます。
ただ、おしっこは変わらず彼のお腹で暴れていました。出来ることなら男の子が出てきた扉に今すぐ飛び込んで、思いっきりおしっこを出したくてたまりません。それはとても気持ちが良いことでしょう。想像しただけでも、指で押さえた出口がきゅうっと疼きます。
(がまん、がまんっ、がまんっ……!)
せめて少しでも体を動かせたら楽なのに、今はそれすら出来ません。出来るのはズボンの上から指でぎゅうぎゅうと押さえることだけ。荒くなりそうな呼吸を必死に落ち着けて、男の子が通り過ぎるのを待ち続けます。
男の子はリビングを通り過ぎ、隣の部屋へと戻っていきます。それからごそごそとベッドに潜り込む音がして、家の中は再びしんと静まりました。
男の子がトイレを出てからベッドに戻るまで、一分も掛からなかったでしょう。それなのに、彼にはすごく長い時間が経ったように感じました。
「ああぁっ……!」
リビングが再び静かになった瞬間、彼は耐えかねたように大きな息を吐いて、その体をもじもじとくねらせました。
折り曲げていた足を伸ばして、ソファの陰から体を起こします。プレゼントの箱は片手で抱えて、反対の手はズボンの上からおしっこの出口をぎゅうぎゅうと押さえたままでした。
(おしっこ、おしっこしたいっ、もうおしっこでるぅっ……!)
向かうべきは男の子が戻っていたベッド。それなのに視線が向くのは反対側の扉です。今すぐあそこに駆け込みたい。思いっきりおしっこがしたい。彼の頭にはそればかりが浮かびます。
ちょっとくらいなら。すぐ済ませたら。悪い考えがぽつぽつと浮かびます。
「うぅ……!」
苦悶の声を漏らしながら、彼は足を動かします。その姿は入ってきた時よりずっと不格好でした。
お尻を後ろに突き出して、一歩踏み出すごとにひょこひょこと揺れます。前屈みになって、左手はズボンの上からおしっこの出口をぎゅうぎゅうと揉んでいました。
足取りは重く、見ているだけでも危なっかしいほどによたよたとしています。
そんな状態で向かうのはベッドルームでした。
大きなベッドにはお父さんとお母さん、その間で男の子が再び眠りに落ちていました。すっきりとした表情で、口元は緩く笑みを浮かべています。
そんな男の子とは裏腹に、彼は泣き出す寸前のくしゃくしゃの顔でプレゼントをそっと置きます。そして、ズボンの前をぎゅうと押さえたまま、逃げるように部屋を出ていきました。
ベランダのガラス戸を慌てて閉めて、ソリに飛び乗ります。座ると同時にトナカイは再び夜空を駆けていきます。今はそのせっかちが有難くもありました。
「よく頑張ったわね! 初めてなのに失敗も無くてすごいわ!
さあさあさあ! ニコラウス様のところに戻りましょう!」
「あ、ありがと、ござい、ます……!」
お礼の声は震えていましたが、お喋りなトナカイは気にすることもなく、どんどん話し続けます。けれどその言葉は彼の頭には全然入っていませんでした。
(これで終わった! トイレっ、トイレに行けるっ!
はやくはやくはやく、はやくトイレ、おしっこっ……! おしっこでちゃう、もれるからはやく……!)
サンタさんの仕事をやり終えた今、彼はおしっこを我慢するただの男の子でしかありませんでした。
ソリの低い椅子に座り、片手でおしっこの出口をぎゅうぎゅうと押さえます。小さな体は忙しなく動き、今にも溢れ出しそうなおしっこを必死に我慢します。
(おしっこ、おしっこ、おしっこっ)
夜空の寒さが疲れた体に染みわたります。ぞくぞくする冷たい体の真ん中に、熱いおしっこがたっぷりと溜まっているのがよくわかりました。
(あ、うっ、あ、ぁっ、おしっこっ……!)
おしっこの波が彼の中で押し寄せて、体がぶるりと震えました。その瞬間、必死に閉じている出口がこじ開けられて、じわあっと熱いおしっこが下着に滲みます。
既に湿っていた下着が更に濡れていきます。それ以上溢れ出すのを必死に堪えますが、熱い雫がじゅわ、じゅ、と零れだしてしまいます。
一瞬広がったおしっこの温かさは冷たい夜空に一瞬で奪われ、ひんやりと冷たい布地が肌に触れます。それが余計に彼のおしっこを煽っていました。
(あ、あ、だめ、でちゃう、でるっ、おしっこ、おしっこでる、おしっこっ、あ、あ、あっ……!)
再び体が震えて、じゅわあっと先端からおしっこが広がります。我慢は辛くて、いっそこのまま出してしまいたいと思ってしまいます。でも、そんなの駄目だと必死にストップをかけますが、それも段々と弱まっていきます。
ズボンの上から彼の手がおしっこの出口をぎゅうぎゅうと押さえます。けれど、息を吐く度、そして吸う度に、まるで飲み込んだ空気に押し出されるかのようにおしっこがじゅ、じゅわっと溢れて下着を濡らします。
もう下着はぐっしょりと濡れていました。ズボンまで湿っているようで、その上から先端を摘む指先も生温かさを感じていました。
(あ、あ、だめ、がまん、がまんっ、で、でも、でもっ……!)
嫌だと頭を振っても体を捩っても、お腹のおしっこは消えてくれません。ぎゅうぎゅうと押さえて、揉んで、出したくてたまらないおしっこを誤魔化して必死に我慢を続けますが、もう本当に限界でした。
いえ、とっくに限界は超えていたのでしょう。ただ、我慢しなくてはいけないと、その思いだけで必死に押し留めていたのでしょう。けれど、どんな容器でも満杯になってしまえば、後は溢れ出るだけです。
(で、るっ、でるでるでる、おしっこでる、でちゃう、もうむり、だめ、おしっこ、おしっこおしっこ、あ、あ、あああ、っ……!)
「っ、ん、くぁ、あ、あぁっ……!」
絞り出した悲鳴と同時に、じゅわあっとおしっこが広がります。ぎゅうと手で塞いでも、それ以上の勢いで出口は抉じ開けられて、たっぷり溜まったおしっこが噴き出しました。
「っあ、あ、あ、い、やだっ、ああぁっ……!」
「どうしたの? 何かあった?」
トナカイは後ろから聞こえた悲鳴に足を止め、くるりと首を回してこちらを向きます。けれど、彼はその視線にも気付くことが出来ませんでした。
背中を丸めて小さくなって、彼は下を向いていました。ぴたりと寄せた両足、その間に挟み込んだ手だけが見えていました。そして、溢れたおしっこが下着の内側で渦を巻くのが、ズボンへと染み込んでいくのが、そして椅子の上へと広がっていくのがよくわかりました。
じゅいいいぃぃ……。
水音が体の中に響き渡ります。そして、固い椅子に乗せたお尻がぐっしょり濡れていきます。冷えた体を熱いおしっこが温めていきます。おしっこが出る感触は今の彼にはとても心地よくてたまりません。ふわっと全身が温かくなって、強張っていた体から力が抜けていきます。
(あっ、あっ、あっ……お、しっこ、おしっこでちゃったっ……)
お腹をぱんぱんに膨らませていたおしっこがどんどん溢れ出していきます。くたりと体から力が抜けて、我慢しようとする気持ちはもう折れて、ただおしっこをすることしか出来ません。
我慢に我慢を重ねたおしっこは溶けてしまいそうに気持ち良いものでした。固く閉じていた口はゆるりと開かれて、吐き出す息には甘い声が微かに重なっていました。
熱いおしっこは寒い夜空の中で、白い湯気を立ち上らせていました。
椅子に広がったおしっこはその場所だけは収まりきらず、ぴちゃぴちゃと音を立てて足元へと落ちていきます。ブーツの外側が濡れていき、同時に足を伝ったおしっこがブーツの中へと下りていきます。
外側も内側も、ブーツは彼のおしっこで濡れてしまいました。
お腹いっぱいのおしっこはそれでも足りなかったようです。足元に水溜りが広がって、ソリの縁から聖夜の空へと落ちていきます。僅かな星と月明かりを浴びて、彼のおしっこはきらきら輝く雫となっていました。
服もブーツもソリも、そして下に広がる街並みにまで広がって、彼のおしっこはやっと止まりました。ぴちゃぴちゃと椅子から滴る水音が微かに聞こえる中、彼は座ったまま、大きく呼吸を繰り返していました。
ぐっしょり濡れたお尻とブーツ。下着もズボンもびしょびしょに濡れて肌に張り付いていました。お尻の下にも足元にも彼のおしっこがいっぱいに広がっています。
ふわりと立ち上る湯気は次第に姿を消し、温かさは夜空に奪われて、只の冷たい水へと変わっていきます。
(おしっこ、でちゃった……)
必死に出口を塞いでいた手は濡れたズボンに力なく触れていました。寒い夜空の中、濡れた衣類は冷たくなり始めていて、その感覚に彼はぶるりと身震いします。
「まあまあまあ! 大変大変! ごめんね、そんなに我慢してたなんて気付かなかったの!」
トナカイの早口に彼は何も返事が出来ず、ただ俯いていました。
「大丈夫よ、もうお仕事は終わっているのだから! ちゃんと終わらせるまで我慢して、偉かったわね」
その言葉に、俯いていた目にじわりと涙が浮かびます。冷たく濡れたズボンにぽたぽたと温かい雫が落ちていきます。
「ご、ごめんなさいっ……」
「大丈夫、もう大丈夫よ! すぐにニコラウス様のところに戻りましょう! 温かいシャワーを浴びて着替えてしまえば、何も問題ないわ! さあさあさあ! 急いで帰るわよ!」
そう言うと、トナカイは再び夜空を駆け始めました。その速さと言ったら、プレゼントを配っていた時より早いかもしれません。座っていても気を抜いたら振り落とされそうで、濡れて悴んだ手で慌てて手綱を握りました。
ソリが揺れる度に、おしっこの水溜まりがあちらへこちらへと揺れて広がります。時々、ソリの縁からぴちゃぴちゃと輝く雫となって落ちていきます。その様子を見て、何とかしたいと思っても、今の彼にはどうすることも出来ませんでした。
予定より早く戻ってきたソリをニコラウス様は温かく出迎えてくれました。トナカイが早口に状況を説明する中、見習いの彼はおずおずとソリから降ります。雪を踏むブーツの中で、冷たいおしっこがぐじゅ、と広がるのはとても気持ち悪い感触でした。
建物から漏れる明かりが彼を照らします。赤いズボンは中央と後ろ側が濡れて色を変えていました。両手で何とか隠しますが、トナカイにもニコラウス様にも全て知られている以上、意味はありません。
「ごめんなさい……、おしっこ、が、がまん、できません、でした……」
彼が震える声で謝ると、ニコラウス様は大きな手で彼の頭をぽんぽんと撫でました。そして全てを包み込むように優しく見つめて、よく頑張ったねととても優しい声で言いました。
その瞬間、彼の両方の目からは大粒の涙が零れだします。震えていた口が大きく開いて、わんわんと声を上げて泣き出してしまいました。大丈夫大丈夫と繰り返すニコラウス様とトナカイに連れられて、サンタの役割を終えたひとりの男の子は家の中へと入っていきます。
それから彼はシャワーを浴びて、乾いたパジャマに着替えて、温かなベッドにもぐり込みました。その頃には涙は落ち着いていました。
疲れ果てた男の子はあっという間に眠りにつきました。その枕元にプレゼントが置かれたことに気付くのは、翌朝のことでしょう。きっと、彼がプレゼントを届けた子どもたちと同じように、満面の笑みを浮かべるに違いありません。
こうしてサンタさんのお仕事は無事に終わりました。
聖夜は見習いにも優しく、雲一つない快晴でした。ただし、ごく一部の場所では雨が降ったとか降らなかったとか。
+++
別の展開 その1
(あ、あ、あ、で、ちゃ、あっ、おしっこっ、おしっこおしっこ、おしっこぉっ……!)
ばたばた両足を動かして、ぎゅうぎゅう指で押さえて、必死におしっこを我慢しますが、それももう限界です。彼のお腹はおしっこでいっぱいいっぱい。僅かな隙間もありません。破裂してしまいそうなお腹は、中身をぎゅううっと出口へと押し出そうとします。
「っん、く、ぁあっ……」
ぶるり、と体が震えて。
(む、りっ、でる、おしっこ、もうむり、でる、でるっ、おしっこ、おしっこっ、でるっ、もうむり、むりぃっ……!)
じゅわあ、と指先が温かくなって。
「あ、あ、あ、だめ、だめだめだめ、あ、ああ、あぁっ……!」
ぶわっ、とおしっこの温かさが広がった瞬間、彼はソリの低い椅子から立ちあがりました。
「あ、こら! 急に立ち上がったら危ないわよ! どうしたの?」
トナカイの早口はもう彼には聞こえていませんでした。
「あ、あ、あ、あぁぁっ……!」
(でる、でるでるでる、おしっこ、おしっこでるっ、おしっこっ……!)
膝はがくがくと震えています。もつれた足が向かうのは、空っぽになったソリの荷台。
震える足が荷台の端ぎりぎりへと近付くと、両手が勢いよく彼のズボンを引きずり下ろしました。下着も一緒に下ろしたようで、露わになったその部分は寒さで縮こまっています。その先端からぽたぽたと水滴が落ちて、下着へと落ちました。
(あっ、あっ、あ、ああっ、あぁぁっ……!)
遮るものが無くなったその部分を悴んだ手で掴み、前へと向けました。その先は暗い夜空。
「っ、あ、あぁ……」
ぶしいぃぃぃぃぃ!
彼が甘い声を漏らすと同時に、露わになった出口から我慢に我慢を重ねたおしっこが勢いよく噴き出しました。野太い水流を遮るものは無く、ソリから真っ暗な夜空へと降り注いでいきます。僅かな星と月明かりによって、飛び散る雫がきらきらと輝いていました。
「は、あぁぁぁっ……!」
(おしっこ、おしっこでたっ、やっとできたぁっ……!)
ぽかんと空いた彼の口から安堵の息と声が吐き出されました。
静かな夜空に水音が響き渡ります。彼は肩で息をしながら、目を細めていました。涙が浮いた目で見る夜空は滲んでいて、とても輝いて見えました。
お腹で温められたおしっこは白い湯気をもくもくと上げながら、ソリから下の町々へと落ちていきます。サンタの決まり事として、ソリから物を落としてはいけませんというものがありますが、今の彼の頭には全くありません。
「ふああぁぁ……」
(おしっこ、やっとできたっ……。気持ちいいっ……!)
その感覚は気持ち良くて、気持ち良すぎて、ぐちゃぐちゃだった頭の中は真っ白です。ただただ気持ち良さしかありません。まあまあまあ! とトナカイが甲高い声を上げているのも全く聞こえていません。
全身、解放感という名の快感に満たされて、とろりと溶けてしまいそうな体を支えていることが精一杯でした。
お腹をいっぱいに膨らませていたおしっこはたっぷりと時間を掛けて、やっと出し終えることが出来ました。お腹が空っぽになり、最後の一滴を出し終えると、ぶるりと体が身震いします。
温かなおしっこは全て彼の体から出ていって、夜空に冷やされた体だけが残りました。
はあ、と安堵と快感の溜め息を漏らしながら、彼は我に返りました。
自分が今どこにいるのか、どういう状況なのか、そして何をしたのか。全て思い出すと、すっかり冷たくなった頬が一気に熱くなりました。
すぐ前には深い夜空が広がり、下には僅かな明かりが照らす街並みが広がっています。
「終わったかしら?」
「わあぁぁっ!」
声を掛けられて、彼は飛び上がりそうな程に驚きました。そのままソリから落ちそうになりながらも、慌てて後ずさります。
肩越しに振り向くと、トナカイがもの言いたげにじっとりと見つめていました。気付けばソリは夜空の真ん中でぴたりと停車していました。
「さあさあさあ、終わったなら椅子に戻りなさいな。はやくニコラウス様のところに戻らないと」
「は、はいっ……!」
トナカイ以上の早口で返事をすると、彼は手を動かして、先端から垂れた雫を振り落としました。それから下着を戻します。その中央はぐっしょりと濡れていて、肌に触れるとひやりと冷たかったのですが、着替えなんてありません。
仕方なくズボンも履き直して、そのまま椅子へと戻ります。お尻が椅子につくと、下着が余計に張り付いて気持ち悪くありましたが、我慢するしかありませんでした。
「ココアの飲み過ぎね。それと、途中でトイレ休憩を取ってあげるべきだったわ。気が利かなくてごめんなさい」
「い、いえ……、その、我慢できなくてすみません……」
「まあまあまあ、プレゼントの箱でも落としていたら大問題だけれど、おしっこなら大丈夫じゃないかしら。どこかで雨がちょっと降った程度よ、きっと。気にしなくて大丈夫。
さあさあさあ! お風呂に入ってベッドに入ったら、明日は私達もパーティーよ! はやく戻らないと!」
トナカイはそう早口に言うと、再び夜空を駆けていきます。その言葉に更に頬を赤らめながら、彼は居心地悪く椅子に座っていました。
こうしてサンタさんのお仕事は無事に終わりました。
聖夜は見習いにも優しく、雲一つない快晴でした。ただし、ごく一部の場所では雨が降ったとか降らなかったとか。
別の展開 その2はこちら
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初出: 2022年12月20日(pixiv・サイト同時掲載) 掲載:2022年12月20日