ナビを頼りに車を走らせると、周りの風景が過去の記憶と徐々に重なっていく。ここに来るのは何年ぶりだろうか。
しばらく連絡を取っていなかった母から突然電話がかかってきたのは数日前のこと。近況を窺う世間話もそこそこに、母は本題を切りだす。週末にでも母の実家、私からすると祖母の家に顔を出してくれないか、と。
何でも週末に母の姉が実家に顔を出すらしい。行きたいのは山々だが、生憎予定が入っていて伺うことが出来ない。そこで、娘である私が変わりに顔を出してくれないかとのことだった。
祖母と伯母達には幼い頃世話になっていたし、久しぶりに顔を見たいと思ったので、わかったと返事をすると、母は礼を述べた後、早々に切り上げていた世間話を再び持ち出したのだった。
私の母は三姉妹の末っ子であるが、結婚は一番早かった。私が生まれた時、母の姉二人はまだ結婚もしておらず、実家で暮らしていた。父母共に働いていた為、私は事あるごとに母の実家に預けられたものだった。
祖母はもちろんのこと、二人の伯母も私のことを大層可愛がってくれたものだ。近所の夏祭りに連れて行ってくれたり、手作りの菓子を振舞ってくれたり、ことある事にお小遣いをくれたり。思い出すと、つい頬が緩む暖かい思い出だ。
それも十年以上前のこと。母が仕事を辞め、父の職場の近くに引っ越したことをきっかけに、私が預けられることはなくなった。そうこうしているうちに私は学校を卒業し、就職し、今に至るというわけだ。
祖母の家に行くのも十年、いや二十年振りになるかもしれない。小旅行のつもりで顔を出しに行くのも良いだろうと私は重い腰を上げたのだった。
田園風景の田舎道をのんびり走ると、見覚えのある瓦屋根の一軒家が見えてきた。家の隣の空きスペースに車を止めて外に出ると、長時間の運転で凝り固まった体がぴきぴきと突っ張った。体を伸ばしながら、着替えなどを詰めた鞄をトランクから取り出した。
鞄を肩に掛け、見慣れた門を潜る。チャイムを鳴らすと、少し間を置いて引き戸がガラガラと開けられた。母とよく似た女性が顔をのぞかせ、私を見てにっこりとほほ笑んだ。
「あら、潤ちゃん。久しぶりねえ。元気してた?」
「藍子伯母さん。お久しぶりです」
三姉妹の一番上、藍子伯母さんだった。
「先生やってるんだってねえ。立派になってくれて伯母さんうれしいわあ」
思い出そのままの笑顔に、ついつい頬が緩む。昔に戻ったようだ。
「あらごめんなさい、立ったまま。上がって上がって。おばあちゃんも潤ちゃんに会えるの楽しみにしてたのよ」
「はい、お邪魔します」
靴を脱いで、上がらせてもらう。藍子伯母さんの後ろをついて、昔懐かしい廊下を歩く。ぎっぎっと床が軋む音すら懐かしくてつい笑っていると、曲がり角からひょこっと誰かが顔を出した。その顔に見覚えがある。というか、毎週のように見ていた顔だ。
「……貴瀬?」
「あれ、せんせっ?」
保健室の窓を挟んで毎週見ていた顔が廊下の奥から覗いている。どうして貴瀬が?
「あら、潤ちゃん、結子と知り合いなの?」
「知り合いというか、生徒です」
「あらあら、潤ちゃんが結子の先生だったなんて、なんだか嬉しいわ」
「……藍子伯母さん、結婚してたんですか」
「あら、知らなかった? 大分前のことよ」
衝撃の事実に鞄を落としそうになり、慌てて持ち直す。全く世間は狭いものだ。
「お母さん、先生と知り合いなの?」
「そうよ。お母さんの妹の子供だから、結子とは従妹になるわね」
「そうなんだあ。ふふ、先生と従妹なんて嬉しいな」
私はこのことを素直に喜ぶべきなのか、喜ばないほうが良いのか。複雑な気持ちになりながらも「そうだね」と同意の返事をしたのだった。
広間には祖母と二人の伯母を初め、親戚が顔を並べており、十数人がなんやかんやとお喋りに花を咲かせている。初めこそは皆から質問攻めにされた私も、三十分もする頃にはすっかり蚊帳の外にいた。伯母二人以外はあまり顔を会わせたことがない。その上、顔を並べているのは母と同世代、もしくはそれより上の世代ばかり。私と貴瀬だけがずば抜けて若い世代なので、そもそも話が合わない。
湯呑に残った緑茶をちびちびと飲んでいると、藍子伯母さんの隣で居心地悪そうにしている貴瀬を見つけた。貴瀬も私と同じで、質問攻めにされた後に蚊帳の外へ追いやられたようだ。視線を落としてもじもじと居辛そうにしている。
このままじっとしているのも退屈だし、散歩にでも行こうかな。残っていた緑茶を飲み干して立ち上がると、祖母がのんびりした声で私の名前を呼んだ。
「潤ちゃん、どこかに行くの?」
「うん、ちょっと散歩にでも。久しぶりにこっちに来たし、うろうろしてくる」
「そうかい。ああ、ちょっと待って。お小遣いあげるから、好きなもの買っておいで」
財布を取りにいくために立ち上がろうとした祖母を慌てて制した。祖母の中では私はいつまでも幼い子供らしい。それは嬉しくもあり、恥ずかしくもあった。
「あはは、良いよ。もうお小遣い貰う歳でもないから」
「そうかい?」
「うん、お給料ちゃんと貰ってるから大丈夫。お小遣いは後で結子ちゃんにでもあげて」
名前を呼ばれたことに驚いたのだろう、貴瀬はびくっと顔を上げると、私を見た。
「結子ちゃんも一緒に散歩行く?」
「あ……はい、行きますっ!」
貴瀬は慌てて立ち上がると、人の間を抜けて私の隣まで駆け寄ってきた。緊張した表情に少しだけ安堵が滲んでいた。
「晩御飯までには帰ってくるんだよ。車には気をつけてね」
「はいはい。行こうか、結子ちゃん」
「はいっ」
広間を出て襖を閉める。ざわざわとした話し声が扉一枚隔てたおかげでくぐもって聞こえた。
さて、ここからどうしようかと考えていると、貴瀬がおずおずとした口調でお礼を口にした。
「ありがとう、せんせ」
「どういたしまして。それで、どうしようか」
「あれ、お散歩行かないの?」
「本当に散歩してもいいけど。行きたいの?」
「はい、おばあちゃんのところ初めてだから、色々見てみたいんです。せんせ、案内してください」
「良いけど、何もないよ? それでも良い?」
「はいっ」
こうして私と貴瀬は田舎道をぶらぶらと歩くことになったのだった。
+++
貴瀬は水色のワンピースに白いカーディガンを羽織っていて、育ちの良いお嬢様といった感じだ。足元も茶色のパンプスと、清楚な感じに纏まっている。体操服姿しか見たことがなかったので、可愛い私服を着ている姿はすごく新鮮だった。
二人並んで玄関を出たものの、わざわざ見に行くようなものがある場所でもない。記憶を辿っていくと、夏祭りが行われていた神社が頭に浮かんだ。もちろん今の時期、夏祭りなんてやってはいないが。
貴瀬に神社のことを伝えると、大きく頷いた。とりあえずそちらに向かって歩いて行ってみよう。
ざくざくとコンクリートに舗装されていない土の地面を歩いて行く。見覚えがある懐かしい景色。建物が少なく、木々や田んぼに囲まれている和やかな風景は気持ちを穏やかにさせた。
「ね、せんせっ」
「どうしたの、貴瀬」
「せんせ、さっきみたいに結子ちゃんって呼んでくれないの?」
「さっきは伯母さん達の前だったからね。別に貴瀬で良いでしょ」
「せっかくだから結子って呼んでほしいな。だってお父さんもお母さんも貴瀬なんですよ」
藍子伯母さんが彼女の母親だということは、藍子伯母さんの苗字も貴瀬だということになる。そうなると貴瀬と呼ぶのは確かにややこしいかもしれない。
「わかった、じゃあ学校以外では結子と呼ぼう」
「やったぁ。ね、私も先生のこと、学校以外では違う呼び方しても良い?」
「良いけど、なんて呼ぶの?」
貴瀬、もとい結子は首を捻って私の呼び方を考え始めた。一生懸命考えるほどでもない事だと思ったが、彼女にとっては違うらしい。
「潤お姉ちゃんだと長いしなあ。潤姉ちゃん、潤ちゃん……なんか馴れ馴れしいから、潤さんとか? でももっとフレンドリーな感じが良いし、」
「先生で良いじゃない」
「やですっ。だってせっかく先生が従姉のお姉ちゃんってわかったんだもん。お姉ちゃんって呼びたいんです」
「はいはい、好きに呼びなさい。学校では呼ばないようにね」
「はぁいっ!」
そんなことを話しているうちに、私たちは鳥居の前にたどり着く。鳥居の向こう側は木々が影を作って薄暗くなっており、幅の広い階段が続いている。これを真っ直ぐ上がっていくと、境内に続いているはずだ。
そして、鳥居の向かい側には、昔と変わらず細い川がちょろちょろと流れている。川岸には草木が生い茂り、幅は一メートル弱程の小さく浅い川だが、距離だけは長く流れている。昔は意味もなく川に沿ってのんびりと歩いたものだ。
貴瀬は鳥居をぼんやりと眺めていたが、私の視線に気付いてくるりと振り向いた。
「神社に参拝しても良いし、このまま川岸を歩いても良いし。どっちが良い?」
「じゃあ川岸を歩いて、神社は帰りに寄りたいです」
「わかった。じゃあ行こうか」
+++
川のせせらぎの音に耳を傾けながら、世間話をぽつりぽつりと繰り返す。当たり前なのだが、結子も普通の女の子だと話していて思った。数学が得意なこと、体育が苦手なこと、彼氏がいる友達のこと。楽し気に話す姿は、毎週のように保健室の窓の下で豪快なおしっこを繰り広げている姿とは全く重ならない。
すらりとした体のどこにあれだけのおしっこを溜められるのだろうと不思議に思う。人は見かけによらないなあとしみじみと思った。
意味もなく歩き、背後に鳥居が全く見えなくなった頃、結子の足取りが重くなっていることに気付いた。ぱたぱたと元気に私の隣を歩いていたのに、今は小さな歩幅でそろそろと私の少し後ろをついてきている。流石に歩き疲れたのだろうか。ヒールが低いとは言え、パンプスで長距離、しかも土の上を歩くことは、慣れない彼女にとっては酷く疲れることだったのだろう。
「結子、」
足を止めて声を掛けるが、反応はない。俯いたまま、そろそろとした足取りで私の隣を通り過ぎてゆく。
私が苗字ではなく名前で呼んだからかと思ったが、先程までは名前で呼ぶと嬉しそうに笑いながら返事をしていた。
「結子?」
もう一度名前を呼ぶと、彼女はびくっとして足を止めた。それからきょろきょろと辺りを見回し、後方にいた私に気付いた。
「ぅあ、あ、せんせっ?」
「大丈夫? ぼんやりしてるけど」
「だ、大丈夫です。ちょっと疲れただけ」
あはは、と笑う顔は白く血の気が引いている。体調が悪いのだろうか。もう一度大丈夫かと声をかけようとして、保健室から眺めるいつもの光景が脳裏に浮かんだ。
そわそわとどこか落ち着きのない態度。良く見ると、つま先がじっとしといられないかのように地面の上で動いている。もしかして。頭に一つの予想が浮かんだが、それを口にしていいのかどうか悩む。予想が間違っていれば失礼だし、正解だったところで私にはどうしてやることもできない。帰路を急ぐくらいのことだ。
「疲れたなら休憩する?」
「う、うん、ちょっと座りたいです」
当たり障りのない質問をすると、結子は頷きながら答えた。もしかしたら、本当に疲れていただけなのかもしれない。一瞬そう思ったが、すぐにそれが間違いだとわかった。
雑草に覆われ、芝生のようになった川岸に近づき、二人並んで腰を下ろした。暖かい日差しが降り注ぎ、川のせせらぎが聞こえる。都会に生きる人間にとっては癒される場所だが、彼女にとっては違ったらしい。
結子は膝を立て、体育座りの体勢で座った。
膝はゆらゆらと動いているかと思うと、ぴたりと隙間一つできないように力強く寄せられる。膝の間に何も通したくないような、もしくは何かを出したくないような様子だ。
両腕は体の横にぴたりとつけられ、手はワンピースの裾の上でぎゅうと硬く握りしめられている。まるで、どこかを握りたいのを必死に抑え込んでいるようだった。
そして、目は虚ろにどこかを見つめており、唇は何かを言いたげにふるふると震えている。言おうか言うまいか、口の中で言葉を転がしているようだ。その小さな口がもう少し大きく開かれれば、その言葉は飛び出してしまうのだろう。
自然の癒しを感じる余裕もない結子に、私の予想が正解への裏付けをされていく。
こうなったら、私から助け舟を出した方が良いのだろうか。私の予想は八割、いや九割当たっているという自信がある。もし間違っていたとしたら、謝れば良い。
よし、と私が意思を固めた時だった。
結子は弾かれたようにワンピースの裾をくしゃりと握りしめた。ぴたりと寄せられた太ももがふるふると震えている。
「せ、せんせっ、あ、あの……ぉ、おしっこっ……!」
結子の小さく開かれた口からか細い声が零れだした。
ほらやっぱり! 内心叫んだ声が外に漏れないように、私は慌てて言葉を飲み込んだ。
予想が当たっていたのは良い。けれど、そんな風に訴えかけられたところで、今すぐ苦しみを取り除いてやることなんてできない。私にできるのは帰路の道案内くらいだ。
「おばあちゃんのところまで我慢できる?」
「わ、わかんないっ。トイレ、ないんですかっ?」
言われても、ここまでの道のりでトイレなんて見ていない。途中で道を逸れたところで、こんな田舎にコンビニなんてあるはずはないし、公衆トイレのある公園なんてものはあるとは思えない。
「とりあえず戻ろう。ここでじっとしているのも辛いでしょ」
結子の手を引いて立ち上がる。立ち上がった結子はワンピースの裾をくしゃくしゃに握ったまま、そろそろと歩き始めた。色々と隠しているつもりなのだろうが、お尻がつき出され、少し前かがみの体勢になっている。真っ直ぐ立つことが辛いのだろう。
「もう、何でこんなギリギリで言うの」
「だって、トイレ無いなんて思わなくてっ」
「こんな田舎に公衆トイレなんてあるわけ、」
口にして、ふと思い出す。私が幼いころに行った神社の夏祭り。階段の横に凄い行列ができていたのを思い出す。行列の中に、今の結子のようにお尻をつき出してもじもじとしている女性の姿を見かけた覚えがある。
「神社にある、かも」
「ほ、ほんとっ?」
「多分だけど。多分」
私のぼんやりした表現に結子は少しだけ顔色を明るくする。
「神社まで我慢するっ」
「うん、頑張って」
そろそろと歩いて行く結子に、私はそう声を掛けることしかできなかった。
結子の様子は足を進めれば進めるほど悪化していく。一歩の感覚が段々狭くなり、お尻は突き出され、体は二つに折るように前かがみになっている。片手はスカートの裾に皺を寄せているが、反対の手はおしっこの溜まった膀胱を支えるようにお腹に添えられている。
「……っあぁ、んんんっ」
弾かれたように声を上げると、とうとうお腹を支えていた手が足の間に伸ばされた。水色のスカートの上から、はしたなくもおしっこの出口をぎゅうぎゅうと押さえる。
「頑張って、もうちょっとだから」
そう言いながらも、鳥居はまだまだ見えてこない。彼女のこの歩みでは、まだまだ掛かるだろう。
ぴったりと閉じた太ももの間で、彼女の右手が股間をぎゅうぎゅうと押さえる。内股で歩いている為、突き出されたお尻はふりふりと揺れている。
「せんせっ、神社まだっ?」
「もうちょっと」
何度目かのもうちょっとを伝え、私はただ結子の隣を歩く。
この様子で神社まで辿り着けるのだろうか。そして、辿り着いたところで神社にトイレはあるのだろうか。不安を胸に抱え、私は足を進めるのだった。
片手だった前押さえが両手になり、歩みは更に遅くなる。鳥居はまだ見えない。
「あぁっ、」
悲鳴と共に結子は立ち止まった。両手がぎゅうぎゅうと、股間を持ち上げるように圧迫している。ワンピースの下の太ももがふるふると震えているのが分かった。
「でちゃうっ、でちゃう……、」
「神社までもうちょっとだから頑張って」
道の真ん中、結子は両手でおしっこの出口を必死に揉みほぐしながら、お尻を振る。屈伸するように膝を曲げて、伸ばして、また曲げる。そうして膝を曲げ、しゃがみ込んだ体勢で、体を上下に揺らした。
「あっ、あっ、おしっこ、おしっこでちゃうっ」
「ほら、もうちょっとだから。頑張ろう」
「ん、あっ、あっ、も、だめっ……せんせ、ごめんなさいっ!」
謝りながら結子は震える膝で立ち上がった。かと思うと、両手で股間を抑えたまま、ばたばたと足を縺れさせながら川岸へ近づいていく。
「でちゃう、でちゃう、でちゃうっ」
水の流れるギリギリまで近付いたかと思うと、彼女は水色のワンピースをがばっと捲り上げた。ワンピースと同じ水色の下着どころか、その上でぽっこりと膨れた白いお腹すらもが丸見えになる。おしっこでぽっこりと膨れたお腹に思わずどきっとした私とは裏腹に、彼女はそんなことなど構っていられないようだった。
「んぁあっ……」
瞬間、水色の下着を突き破って、鋭い水流がぶしゅーっと吹き出した。
彼女は立ったまま、お腹をぐいっと前方へ突き出している。おしっこは彼女の前方、川の中に真っ直ぐな水流となって注がれていく。どぼどぼと水を注ぎこむ音がした。
水色のワンピースはスカート部分を全て纏めるように彼女の胸の前あたりで握りしめられている。そのおかげで、肩幅に開かれてがくがくと震える両足も、お尻を覆う水色の下着も、そして下着の股布の部分からじゅおーっと音を立てて落ちるおしっこも、全てが太陽の下に晒されていた。流れ落ちるおしっこが日差しを反射させ、きらきらと輝いている。おしっこのことを黄金水という人の気持ちが少しだけ分かった気がした。
「やっ、おしっことまんない……」
じょろじょろとおしっこを出しながら彼女は言う。
「相変わらず凄い量ねえ。我慢してた?」
彼女は恥ずかしそうに頷いた。
「いつから我慢してたの?」
「先生がお散歩誘ってくれた時、から」
「家を出る前にトイレ行かなかったの?」
「おばあちゃんのところ、トイレの場所わからなかったんだもんっ……」
誰かに聞くとか、それこそ散歩に行く前に私に聞けば、トイレの場所くらい教えたのに。聞かなかったのは我慢できると思ったからか、邪魔をしてはいけないと思ったのか。
「ううう……止まらない……」
「はいはい、全部出しちゃいなさい」
とりあえず結子のおしっこが終わって、祖母宅に戻ったら、トイレの場所を教えてあげよう。勢いよく流れ続けるおしっこを見つめながらそう思った。
たっぷり時間をかけて、結子のおしっこは終わった。下着からぴちゃぴちゃと雫が垂れ、結子はぶるっと大きく身じろぎする。
「全部出た?」
頬を赤く染め、彼女は俯いた。
ワンピースのスカート部分を握りしめたまま、お腹を引いて真っ直ぐ立つ姿勢になる。ぺたりとへこんだお腹の下で、水色の下着がぐっしょりと濡れていた。
「パンツ、どうしよう……」
「とりあえず脱いだ方が良いんじゃないかな。風邪引くし、かぶれるよ」
「はぁい……」
うう、と声を漏らしながら、彼女は水色の下着を両手でおろした。足首まで下ろした下着からそろそろと両足を抜いていく。ぐっしょりと濡れた下着はおしっこが絞れそうなほどしとどに濡れている。
財布とスマホを入れていたミニトートの中を覗くと、何かのためにと入れていたビニール袋が目についた。広げて、濡れたパンツを入れさせる。
おもらしパンツを入れたビニールの口を締め、再びミニトートにしまう。まさか鞄におもらしパンツを入れることになるとは思わなかった。
これで私たちは散歩に出る前と一見同じ姿に見えるだろう。結子が顔を赤らめていること以外は、だが。
「そわそわしてると履いてないことバレちゃうよ」
「い、言わないでくださいっ。ううう、すーすーする……」
ワンピースの前を手で抑えながら、結子はそろそろと歩き出した。スカートが捲れてしまわないように気を付けているのだろうが、そうびくびくされるとついつい意地悪がしたくなる。
気付かれないようにそーっと手を伸ばし、お尻側のスカートをぺろっと捲る。白いお尻がぷるっと太陽の元に一瞬晒されて、すぐに隠された。結子は顔を真っ赤にして、両手でワンピースの上からお尻を抑えている。
「せんせっ!!」
「はいはい、早く行くよ」
「せんせぇのばか、えっち!」
毎週、校庭の隅でおしっこしている子には言われたくない。内心思ったが、口には出さず飲み込んだ。
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初出: 2016年4月10日(pixiv) 掲載:2019年2月27日