先生、おしっこっ! 前編

 チャイムが鳴る。4時間目終了の合図だ。

 ここ、保健室は1階にあり、運動場に面しているため、窓からは運動場の様子がよく見える。運動場では女子生徒達が使っていたハードルを片付けていた。ここに誰も来なかったということは、怪我をした生徒はいなかったということだ。平和で結構。
 さて、昼食にしようかなと机を片付けながら、何となくもう一度窓の外に目をやる。すると、思ったより近くに女子生徒が一人いるのが見えて驚いた。

 セミロングの黒髪、赤いカチューシャを付けた彼女は窓のすぐ外を行ったり来たりしている。不安げな顔であたりをきょろきょろと見回し、そして彼女は真下に姿を消した。しゃがみ込んだようだ。
 体育で使ったボールでも探しているのだろうか。こちらには何も来ていないよ、と教えようと思い、私は窓を開けた。そして、下を見て、声を上げそうになった。
 窓の下は校舎を囲うように芝生になっていて、芝生と運動場の境には1メートル弱の高さの植え込みがある。彼女は植え込みと校舎の間、私が開けた窓の下からやや左に寄ったあたりにしゃがみ込んでいた――えんじ色のハーフパンツと薄ピンク色の下着をおろして。窓に体の右側を、植え込みに体の左側を向けているので、私の位置からは彼女の体の正面がよく見えた。
 彼女は窓が開いたことに驚いたのだろう、小さな悲鳴と共に弾かれたように顔を上げ、同時に下着とハーフパンツを持ち上げた。
「ど、どうしたの?」
「あっ、あの、あのっ」
 もじもじと体をくねらせ、上下に揺らしながら、彼女は私を見ていた。太ももはぴたりと閉じられ、両手はハーフパンツと下着を持ち上げたときのまま、ハーフパンツのウエスト部分をぎゅうと握り締めている。
 その姿はどう見ても。

 私が答えを導き出すより先に、彼女は口を開いた。
「あのっ、わたしっ……ぉ、おしっこっ……!」
 お手洗い、もしくはトイレという言葉が返ってくるかと思いきや、予想以上に直接的な表現だった。
 授業中、我慢していたのだろう。それはわかる。けれど、彼女がここで用を足すに至った訳がわからない。校舎に戻ればいくらでもトイレはあるだろうに。現に、この保健室の二つ隣はトイレだし、更衣室の隣にもトイレがある。そこまで我慢できないほどにまで切羽詰っているのだろうか。
「ごめんなさい、せんせ、も、でちゃうっ……!」
「あ、ちょっとっ!」
 がばっと一気にハーフパンツと下着が下ろされる。間髪を入れず、彼女の足の間から太い水流が飛び出した。間一髪といったところだったようだ。
 水流はしゅーっと鋭い水音を響かせながら地面に当たり、びちゃびちゃびちゃと下品な音を立てる。彼女の足元の芝生はおしっこを吸い込み、ぐんぐん色を変えていく。
「んん、はぁっ……」
 熱いため息を漏らし、彼女はうっとりした表情を浮かべていた。虚空を見つめる目はとろんと快感に溶けている。大層気持ちが良いのだろうと見ていてわかった。
 どれだけ我慢していたのだろうか、おしっこは止まる様子を見せずに、じょろじょろと気持ち良く流れ続けている。太い水流はじゅーと音を立てて勢いよく地面に当たり、雫をまき散らし、水たまりに泡を浮かべる。

 たっぷり時間をかけ、彼女のおしっこは勢いを弱めてその水流を細くしていき、やがては水滴に変わった。ぴちゃ、ぴちゃと水たまりに雫が落ちる音がする。はっ、はっと彼女の荒い呼吸の音も聞こえた。
 机の上に置いていたティッシュを差し出すと、彼女は白い頬をぽっと染めて「ありがとうございます」と呟いた。おしっこを吹き出していた出口を拭いたティッシュは、ごみ箱を差し出してその中に捨てさせる。
 下着とハーフパンツを上げ、彼女は立ち上がった。すらりと整った体型だ。無駄な肉がついておらず、今どきの子らしく足がすらりと長い。肩のゼッケンには『貴瀬』と書かれていた。

 足元は見事と言いたくなる程の水たまりが広がっていた。細い体躯に、よくもまあこれだけのおしっこを溜め込んだものだ。思わず感心して水たまりを眺めていると、彼女は小さな声で呟いた。
「その……、ごめんなさい」
 私に謝る道理はないのだが、彼女としては謝らざるを得ないのだろう。
「トイレまで我慢できなかったの?」
 聞くと、彼女は小さく頷いた。
「今日は朝から移動教室ばかりで、その後体育で、トイレに行くタイミングがなくて……」
 恥ずかしそうに彼女は自分がここでおしっこを済ますに至った経緯を語る。
「更衣室の隣にトイレあるでしょう? そこで済ませなかったの?」
「あそこのトイレ、工事中なんです。だから使えなくて、校舎に戻るのも間に合わなさそうで、その、ごめんなさい」
 そう言えば更衣室横のトイレは古くなっているので工事中だと先日会議で聞いたような気がした。
「まあ、これからは気を付けて。我慢しすぎは体にも悪いからね」
「はい、ありがとうございます。あの、内緒にしてくださいね」
「はいはい」
 彼女は頭を下げると、ぱたぱたと去っていった。その顔は恥ずかしそうであり、どこかすっきりとしていた。そりゃ、これだけ出せばすっきりもするだろう。窓の下に広がった水たまりをもう一度眺めて、そう思った。

+++

 4時間目終了のチャイム。

 窓の外を見ると、女子生徒達がハードルを片付けている。どこかで見た光景だなと思い、自分が1週間前に見た光景と同じだと思い出した。
 1週間前と言うと、あの貴瀬という女子生徒が窓の下で見事なおしっこを繰り広げた日だ。あれは本当に見事だった。ということは、今ハードルを片付けているのは貴瀬のクラスらしい。
 そう言えば今朝の職員会議で、更衣室横のトイレの工事が終わったと通達があった。これで彼女ももうあんな思いをすることはないだろう。良かったね、と心の中で彼女に言葉を贈ると、コンコンとノックの音が聞こえた。扉の方を見るが、誰かが入ってくる気配はない。首を傾げていると、もう一度コンコンと、今度は先ほどより強く叩く音がした。もしかしてと窓の方へ目をやると、予想は見事的中していた。

 黒いセミロングに赤いカチューシャ。窓を叩いているのは、間違いなく貴瀬だ。彼女が苦悶の表情を浮かべていることに、一瞬嫌な予感が過る。トイレの工事は終わったと聞いているが。
 窓を開けると、彼女は泣き出しそうな顔でその場に立っていた。
 と言っても位置が変わっていないだけで、両足は忙しなくステップを踏んでいる。両手は行き場がないようにハーフパンツの裾をしきりに握っていた。先週よりも切羽詰まっているようだった。
「せ、せんせっ……」
「更衣室のトイレ、工事終わったんじゃないの?」
「終わったけどっ、1個しかないからみんな並んでてっ……!」
 もじもじそわそわ。太ももはぴたりと寄せられ擦り合わされ、つま先は交互に地面を踏んでいる。
「も、だめっ……! せ、せんせ、おしっこしても良いっ?」
 ここはトイレじゃないよと言いたかったが、彼女の様子はそう言うのが憚られる程だった。
「もう……。わかった、早く済ませなさい」
 そもそも、ここでおしっこするのに私に許可を取る必要があるのか。彼女なりの気遣いなのかもしれないが。ひっそり窓の下で用を済まして立ち去らないあたり、真面目で不器用な子なのだろう。

 彼女は苦悶の顔を一瞬だけ明るくして、すぐに顰めた。ハーフパンツのすそを触っていた手が弾かれたようにズボンの中央を握り、ぎゅうぎゅうと揉む。お尻をつき出し、ぺたぺたと足踏みをする姿はカルガモみたいで可愛らしいなと思った。
 片手で股間を握りしめ、反対の手でハーフパンツのウエストに手をかけ、一気にずり降ろす。お尻だけが出た中途半端な体勢。そのまま腰を下ろそうとする彼女を見て、ほんの少し意地悪がしたくなった。
「立ったままおしっこしてごらん?」
「ええっ!?」
 お尻を曝け出した中腰のまま、彼女は目を見開いて私を見た。涙が零れんばかりに目尻に溜まっている。よっぽど辛いのだろう。
「た、立ったままって、ど、どうやって……」
「下を全部脱がないと駄目かな。そのまますると掛かっちゃうね」
「えっ、あぁっ、せんせ、いじわるっ……!」
 足踏みのペースが早くなる。あっ、あっ、と声にならない悲鳴を漏らしながら、彼女は縋るように私を見ていた。片手は痛いのではないかと言うほどズボンの中央をぐにぐにと揉んでいる。押さえているだけではもう我慢できないようだ。

 からかいすぎた事を感じ、冗談だよと言おうとした。が、私は思わず言葉を飲み込んだ。
 彼女は迷うように視線を彷徨わせると、がばっとハーフパンツと水色の下着を足首まで下ろした。かと思うと、忙しなくステップを踏む爪先と地面の間を無理矢理潜らせる。
 両足から解放されたハーフパンツと下着を胸に抱きしめて、彼女は私を見た。
「せ、せんせ、脱いだよっ。ぉ、おしっこ、しても良いっ?」
 下半身裸でお尻を突き出し、ばたばたと激しく足踏みをしながら彼女は言った。泣きそうに震えた声だった。
 まさか本当に脱ぐとは思わなかった。呆気に取られる私を置いて、彼女は体を震わせる。左手は胸の前で脱いだハーフパンツと下着を強く握りしめ、右手は宙を彷徨っている。かと思うと、小さな悲鳴と共に、剥き出しになっているおしっこの出口をぎゅうと押さえつけた。
「あぁっ、せんせ、ごめんなさいっ……、ぉ、おしっこっ、おしっこでちゃうっ」
 出口を押さえていた右手がそこを離れ、震えている足同士が距離を取る。瞬間、ばたばたばた、と雫が地面を打つ。一瞬の間をおいて、肩幅に開かれた足の間に、じゃあーっと太い水流が降り注いだ。
 高い位置から落ちるおしっこは滝のようだ。彼女の足の間から地面に太く真っ直ぐに落ちる黄金の滝。着地点でばらまかれた雫が彼女の白い靴下を汚す。
 蛇口を勢いよく捻ったときのような、ぶしゅーっという音が響き渡る。それに混ざって、ばちゃばちゃと水流が水面を叩き付ける音がした。自らが作った水たまりに現在進行形で水分を注ぎ足している音だ。注ぐなんて生温いものではなく、まさに叩きつけているのだが。
「あ、あ、ごめんなさいっ……」
 彼女が謝罪を口にする頃、やっと水流は細くなった。吐息混じりに謝罪を繰り返す彼女のおしっこは、ぴちゃ、ぴちゃと雫が落ちる音と共にやっと終わりを迎えた。
 足元に広がった水たまりはまあ、見事なものだ。先週より大きいのではないか。

 涙を浮かべた彼女がこちらを見ていた。ティッシュを差し出すと、頭を下げながら数枚抜き出し、股間を拭う。私が差し出したゴミ箱にティッシュを捨てると、よろよろと下着とハーフパンツを履いた。下着は中央が色濃くなっているように見えた。少し漏らしたみたいだ。
「せんせ、ごめんなさい。我慢できなかった」
 別に我慢しろとは一言も言っていない。そこを謝るくらいなら、授業を抜け出してでもトイレに行きなさい。言い掛けた言葉は溜め息とともに飲み込んだ。
「それにしても、たくさん出したね。気持ちよかったでしょ」
「普段はこんなにおしっこしないんですよっ。今日は朝から我慢してたから……」
「計ったら1リットルくらいあったりして」
「わっ、わたし、そんなにおしっこしませんっ。今日は仕方なかったんですっ」
「はいはい」
 彼女は声を荒らげて怒るが、真っ赤に染まった頬と足下に広がる水たまりのせいでちっとも怖くない。
 内緒にして下さいね、と言いながら彼女は駆けていく。先程までの泣きそうな顔からは考えられないようなすっきりした顔をしていた。
 全く、たくさん出したものだと水たまりを見て改めて思う。1リットルまでは行かなくても、ペットボトルの500ミリリットルよりは多そうだな、なんて。彼女の背中を眺めながら、意味のないことを考えた。

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初出: 2016年4月5日(pixiv) 掲載:2019年2月22日

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成人済の時々物書きです。 スカ、女攻め萌え。BLよりはNLやGLが好きです。
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