甘いつながりは緩めない

 聞いていたとおり遅めに帰宅した寧々さんは、いつもよりふわふわしていた。
 ルームウェアに着替えたかと思うと、手招きして俺を呼ぶ。彼女の脱ぎ捨てた服を洗濯機に運んでからそばに行くと、彼女は隣をぽんぽんと叩く。そこに座れ、という意味らしい。
 言われたとおりに座ると、隣から勢いよく抱き着かれた。崩れかけた体勢を整えながら、彼女を受け止めれば、腕の中でふふふと楽しそうに笑っていた。
「おーりとくーんだー」
「寧々さん、酔ってる?」
「んー、酔ってるかも」
「水、飲む?」
「いらなーい。織仁くん、どーぞ?」
「いや、俺はいらないから。布団行く? 横になった方が良いんじゃない?」
「だいじょーぶ。ふふ、織仁くんだ、織仁くん」
 お酒を飲んでいるところは何度か見たけれど、ここまでぐでぐでなのは初めて見た。ゆるくてふわふわで、見ていて少し危なっかしい。今度から帰りが遅い日は、駅までは迎えに行こうと思った。
「織仁くん、織仁くん」
「はいはい」
「どこにも行かなくて良いからね。一緒にいてくれるの、すごく嬉しいからね」
「……うん。ありがと、寧々さん」
 酔っ払いには良い思い出がない。けれど、今の寧々さんを見ていると、少しだけその思い出が薄れるように感じた。

 ふにゃふにゃの寧々さんを抱きしめていると、いつの間にか彼女は俺の足の間に座っていた。俺の胸に背中を当て、こちらを見上げて、何が楽しいのか、にこにこと笑いながら俺の頬を撫で続けている。
「ほっぺたすべすべだねー」
「……それ、楽しい?」
「どうだろー」
 楽しいわけじゃないなら、なんでこんなに楽しそうな顔をしているんだろう。でも、その顔を眺めていると、胸がほわっと温かくなるのを感じた。

 お返しに彼女の頬を撫でようと手を伸ばすと、彼女は大きく口を開けて俺の指先に噛みついた。歯が当たる程度なので痛くはないけれど、まさかの反応に驚いて固まる。
「腹、減ったの?」
「んーん、おなかいっぱい」
 じゃあなんで。聞こうとしたけれど、まともな返事があるとは思えなかったので、聞かずにおいた。
 彼女は噛みついた俺の手を自分の頬へ持っていく。指先に触れた柔らかい頬を摘まむと、彼女は驚いて目を丸くする。その反応が面白くて、つい吹きだしてしまった。

 頬を突いたり突かれたり、頭を撫でられたり鼻を摘ままれたり前髪を引っ張られたり。子供のようにじゃれあいをしながら、いつからか自分の内側に意識が集中していく。
 トイレに行きたいとは結構前から思っていた。それこそ、彼女が帰ってくる前からかもしれない。ここは安全だと頭ではわかっているけれど、トイレにあまり行かないようにする癖はなかなか消えない。ついつい我慢して、そのままふにゃふにゃの彼女を家で迎えたのだった。

 様子を見てトイレに立とうと思うけれど、こうして彼女が俺に寄りかかっていては、彼女に申し出ずに動くことは出来ない。生理現象だし、恥ずかしいことではないのだから、普通に言って普通に立てば良いのだけれど、なかなか言い出すことが出来ない。
 まだ大丈夫だ、もう少しだけ我慢しようと何度思ったか。そう思えば思うだけ尿意はどんどん膨らんできていて、重くなっていく下腹部を意識せずにはいられない。
 彼女はとろんとした目でこちらを見て、相変わらず楽しそうに俺の頬を撫でたり引っ張ったりしている。痛くないのでその行為自体は全く構わないけれど、段々と自分の余裕がなくなっていくのを確かに感じた。

「寧々さん、眠くない? 目がとろんとしてるけど」
「んー、まだだいじょぶ。織仁くん、ねむい?」
「いや、俺は全然」
 何か理由を付けてどいてもらおうかと思うけれど、良い理由が思いつくわけもなく。そもそも素直に言ってしまえば余計なことを考える必要はないけれど、素直に言えたら苦労しないわけで。
「眠かったら寝て良いからねー」
 そう言いながら彼女は俺の頭を撫でる。まるっきり子ども扱いだ。どちらかと言うと、今は彼女の方が子供っぽいのだけれど。でも、言い出せずにもだもだしている俺も決して大人ではない。

 結局言い出すきっかけも作れず、彼女にここからどいてもらう良い口実も思いつかず、そのまま子供の様なじゃれ合いを続けていた。けれど時間は確実に経っていて、それに合わせて尿意は消えることなく確かに膨らんでいた。
 どうしよう、どうしよう、どうしよう。いつの間にか本当に焦りを感じていた。トイレ行きたい、おしっこしたい。他のことを考える余裕は既にない。
「織仁くん、どうかした?」
「っあ、いや、その」
 俺の足の間に座り、こちらを見上げて彼女は首を傾げる。言おうか、言ってしまおうか。喉元まで言葉が込み上げる。

 我慢の限界がじりじりと迫っているのは嫌でも感じていた。トイレ、はやく。込み上げる欲求を必死に堪えながら、考えるのはそのことばかり。トイレトイレトイレ、はやく、もう、結構やばいから、はやく。
「その、ええと、いや、あの」
 それなのに、出てくるのはそんな言葉ばかり。頭の中で呆れるほど繰り返している単語をひとつ口に出すだけなのに、上手く言葉が出てこない。
 そうしている僅かな間にも、むず痒い尿意はどんどん膨らんでいて、じっとしていることすら辛くなっていく。さり気なく体を揺すって尿意を誤魔化すけれど、それもほんのひと時のこと。

 一瞬だけ引いた波は再び大きく押し寄せて、内側から出口を抉じ開けようとする。悪寒が頭の先から足の先まで走り、ぶるっと体が震えた。
 やばい、やばい、やばい。余裕はもう欠片もない。トイレ、はやくトイレ、おしっこ。頭の中はそれだけだ。
「織仁くん?」
「あ、あの、寧々さん、俺っ……!」
 言おうとしたその時、大きな波が一気に押し寄せた。大きく膨らんだ膀胱がぶるぶると震える。中身を押し出そうと出口が内側から抉じ開けられそうになる。火照って熱くなった全身に冷たいものが走り、大きく震える。

 じわり、と出口が熱くなる。固く閉ざしているはずの出口の隙間から、熱い雫がじんわりと滲み出る。
 ああ、やばい、ほんとにやばいっ……! 全身が熱いのに寒い。どこか少しでも力が抜ければ、それだけで一気に決壊してしまうと全身が固く強張る。
 閉ざしているのに、我慢しているのに、また出口が熱く濡れる。だめ、我慢、我慢しないと。でも、もう、本当に、もう。

 全身が震える。それに合わせて、我慢限界の出口がひくひくと震える。じゅわ、と出口がまた熱く濡れた。あああ、やばいやばいやばい、ほんとにやばい。咄嗟に手が動き、柔らかいルームパンツの上から開きそうな出口をぎゅうと握った。ぐじゅ、と濡れた下着が肌に張り付くのを感じた。

「織仁くん?」
「ご、ごめんっ、俺、トイレ、にっ……!」
 乾いた口から、縺れた言葉が飛び出る。もう本当に限界だった。
 でる、おしっこでちゃう、もうこれ以上我慢できない。ズボンの上から押さえる手はぐにぐにと出口を揉んで、激しい尿意を少しでも逃がそうと抵抗を続ける。
 もう少し、ほんの少しだけ我慢。トイレはすぐそこだ、そこまで何とかして我慢しないと。ぎゅうぎゅうと子供の様に股間を押さえながら、立ち上がろうとしたけれど、それは叶わなかった。

 じっと彼女はこちらを見つめる。怖くなるくらいまっすぐな目に、心臓が跳ねた。
「ね、寧々さん……?」
 聞こえなかったのか、それとも機嫌を損ねたのか。どっちにしろ、今の状態の俺を更に混乱させるには十分すぎた。
「ご、ごめんなさい、でも、俺、ほんとに、もう限界でっ……!」
 だから、トイレに行かせて。彼女ならそれくらい言わなくてもわかってくれるはずなのに、じっとこちらを見つめるだけで何の返事もくれないし、俺の足の間からどいてもくれない。

 なんで、どうして。ほんとに、もう本当に限界なのに。座ったまま、ぎゅうぎゅうと出口を握るけれど、その間にも込み上げる尿意は収まらない。ほんのひと時、波が引く瞬間はあっても、次の瞬間には何倍にも強くなった波が押し寄せる。
 もう膀胱はぱんぱんに膨らんでいて、容量オーバーなんてとっくに超えていた。もう一滴の雫すら入らない。これ以上、ほんの少しでも注ぎ込んだら破裂してしまう。本当にそう思う程、限界だった。

「寧々さん、ごめん、トイレ行かせて、ほんとに俺、限界……!」
「げんかい?」
 ようやく返ってきた言葉に、必死に頷いて返事をする。本当の本当に我慢の限界だ。トイレ、はやくトイレ、おしっこしたい、したくてしたくてたまらない。じっとしていられず、少しでも意識を逃がそうと体が揺れた。
「ふふ、かわいーなあ、織仁くん」
「っえ、ねねさん」
「かわいーかわいー」
 彼女の手が伸びて、俺の頭をわしゃわしゃ撫でる。普段なら嬉しいけれど、今はそれどころじゃない。
「ね、寧々さん、まだ酔ってるっ?」
「酔ってないよー」
「じゃ、じゃあ、なんでっ?」
「織仁くんがかわいーから」
 自分がいっぱいいっぱいだからなのか、彼女の言葉の意図が全然理解できない。違う、俺、本当にトイレに行きたいのに、はやくいかないと本当に限界なのに。

「寧々さん、俺、ほんとにトイレっ……!」
「ちゃんと我慢してえらいね。よしよし」
「違っ、ほんとに、ほんとに限界っ、ほんとに我慢できなくなるからっ……!」
 俺の頭を撫でながら、彼女は腰を上げたかと思うと、同じ場所で俺に向き合うように座りなおす。ぺたりと正座を崩したような座り方でこちらを見上げて、楽しそうに俺の頭を撫でる。
「寧々さんっ……!」
 我慢の限界で、もう泣き出しそうだった。トイレ、おしっこ。ほかのことなんて全く考えられない。おしっこ、おしっこ、おしっこでちゃう、ほんとにでる、でちゃう。

 床には柔らかいカーペットが敷かれていて、それだけは汚してはいけないと思う。せめて、フローリングの上に。そう思うのに、絶対に駄目だと思うのに、もう限界の体は何も言うことを聞かない。
 破裂しそうな尿意に、もうどうでもいいと立ち上がろうとしたけれど、彼女の手が俺の手をゆるく握る。
「ねね、さ、だめ、ほんとに、ほんとにだめだからっ……、おねがい、トイレっ……!」
 じわり、手の中が温かくなる。我慢しているのに、ぎゅうと痛いほど押さえているのに、じわりじわりと熱い雫が零れだす。
 掴まれているどころか、添えられている程度の彼女の手なんて振りほどけばいいのに、それも出来なくて。

 じゅう、と手の中が熱く濡れる。いつの間にかルームパンツは濡れて色濃く染まっている。だめ、ぜったいだめ、だめなのに。手が、足が、全身が震える。歯の根が合わない。全身が熱い。あ、あ、だめ、だめ、だめ。がまんしないと。そんな言葉は上滑りして一瞬で消える。
 じっと彼女はこちらを見つめる。まって、だめ、ほんとうに、ああ、あ、あああぁっ……!
「ねねさ、ねねさんっ、ほんと、や、あ、だめ、でる、おしっこ、でちゃっ……、あ、ぅあ、あっ……!」
 ぶじゅう、と何かが破裂したような感覚。そして、頭が真っ白になった。何も聞こえない、何も見えない、頭の中が真っ白で何も考えられない。
 じゅうう、とくぐもった水音。必死に閉じていた出口が抉じ開けられ、野太い水流が下着の中で渦を巻く。限界を超えて膨らんでいた膀胱はやっと開いた出口に中身を送り出す。大きく口を開けた出口を熱く太い水流が駆け抜けていく。

 真っ白な頭でまず感じたのは気持ち良さだった。我慢に我慢を重ねて、やっと迎えた開放。排泄はこんなに心地よかっただろうか。強い快感に、全身が静かに震え、長い安堵の息が漏れていることに気付いた。
 いつの間にか閉じていた目を開けると、変わらずこちらを見つめる視線と目が合う。慌てて目を逸らすけれど、彼女の楽しそうな視線は変わらず真っすぐに向けられている。
 見ないでほしい、いっそ手で塞いでしまいたいと思うけれど、力が抜けた手はだらりと床に落ちて動いてくれない。じわじわとカーペットが濡れていくのを手に感じたけれど、動くことが出来なかった。

「でちゃったね」
 呟くように言われ、心臓が跳ねた。
「あ、ごっ、ごめんなさいっ……」
 落ち着かない呼吸の合間に、そう言うのがやっとだった。
 我慢できなかった。おしっこ、でちゃった。下着もズボンもびしょびしょに濡れ、床に敷かれたカーペットもどんどん濡れて色を変えていく。
 俺の足の間に座った彼女の足元もそれは例外ではなく、俺と揃いのルームウェアが濡れて色を変える。
「寧々さん、そこ、汚れる、から」
「ふふ、あったかいよ」
「ほんと、だめ、なのに。今日の寧々さん、なんか変」
「やっぱり酔ってるのかな。変?」
「変、おかしい、普通じゃない」
 足元は俺のおしっこで濡れているのに、嫌な顔もせずににこにこしているなんて絶対に変だ。おかしい。でも、少し嬉しかった。

「じゃあ、きらい?」
「き、らい、じゃない」
「ありがと」
 彼女の手が伸びて、また頭をわしゃわしゃと撫でられる。それに応えるように頭を下げれば、膝立ちになった彼女が俺の頭を抱きしめる。
「まだ出てる。いっぱい我慢したね」
「寧々さんのせい、だから」
「そうだね。ごめんね」

 着替えないといけないとか、カーペットを汚してしまったとか、カーペットって家で洗えるのかなとか、頭が少し冷静になると余計なことを色々考えだす。
「……ほんとに可愛いなあ、織仁くん」
「可愛く、ない。ほんと、どうしたの、今日」
「わかんない。なんだかご機嫌」
「自分で言うのか……」
 この後のことを考えると不安になったけれど、今はもう少しだけこうされていようと思った。

 自分でも呆れるくらい出して、やっとお腹が空っぽになるのを感じた。抱きしめられていた腕が離れ、再び彼女は俺の前にぺたりと座り込む。
 カーペットには驚くほど大きな染みが広がっていて、どれだけ出したんだと恥ずかしくなった。
「カーペット、ごめんなさい。俺が洗うから、やり方教えてもらえますか」
「だいじょーぶだよ。明日、新しいのが届くから」
「……えっ?」
 思いもよらぬ言葉に、つい間抜けな声が漏れた。

「セールで安いのがあったから買ったんだ。ボロボロだったし、ちょうど良いかなって」
「ば、ばかっ、ほんとばかっ、寧々さんのばかっ……! おれ、おれっ、汚して、ほんとに、どうしようかって……!」
 安心したせいか、涙がじんわりと滲んだ。ぐすぐす鼻を啜っていると、彼女は袖を伸ばして俺の目元を拭う。
「ほらほら泣かないで、大丈夫だから」
「寧々さん、ほんとにばか……!」
「はいはい。処分するにも一旦洗いたいから、明日、手伝ってくれる?」
 ほっとしたら涙が全然止まらず、しばらくの間、彼女に涙を拭かれながらぐすぐす泣いていた。

 二人で着替えてから、濡れたカーペットをある程度拭き取る。後は明日洗ってから処分しようという事になり、濡れた場所にタオルを乗せて、とりあえず寝ることになった。
 二人並んで布団に横になると、また頭を撫でられる。今日はいつもにも増してよく撫でられる。自分で言っていた通り、本当にご機嫌なんだろう。
「寧々さん、あんまりお酒飲まない方が良い」
「そう?」
「色々と心臓に悪い」
「ふふ、ごめんね?」
 絶対、反省しているごめんじゃない。でもそうやって楽しそうに笑って言われると、何も言えなくなる。
 会話が途切れると、ふわ、とあくびが聞こえた。目を閉じるとすぐに眠くなり、小さなあくびが漏れる。
 うとうとしていると、じわりと込み上げるものを感じた。トイレ、行っておいた方が良いかな。そう思ったけれど、睡魔の方が強く、いつの間にか眠りについていた。

+++

 目が覚めて、初めに感じたのは重い下腹部。うつらうつらしながら、それが尿意だと気付くのに時間は掛からなかった。
 目を開けると、カーテンから光が漏れていた。けれど時計を見ると、まだ早朝と言える時間だ。隣で寧々さんはまだすうすうと穏やかな寝息を立てている。
 今日は寧々さんの仕事が休みの日だし、もう少し眠っても問題はないだろうともう一度目を閉じる。

 目を閉じて布団のぬくもりを感じていたけれど、眠気はどんどん覚めていく。寝返りを打ってもう一度眠ろうとするけれど、込み上げてくる尿意がどんどん強くなっていって、むしろ意識ははっきりしていった。
 トイレに行きたいけど、もう少し布団にいたい。温かいし、隣に寧々さんが寝ている。折角心地よく寝ているのに、今、動いたら起こしてしまうかもしれない。
 せめて彼女が起きるまではこのままで。そう思うけれど、朝はやっぱり催すもので、ましてや寝る前に尿意を感じていたからか、その欲求は今の段階で結構強い。

 我慢、我慢、と寝返りを打ちながら、込み上げる欲求を誤魔化す。ぞくぞくする下半身から意識を逃そうと、両足を寄せたり交差させたりするけれど、一度意識した尿意が消えることはない。
 トイレ行きたい。おしっこしたい。目を閉じて視覚を閉ざすと、その分他の感覚が尿意を拾い上げる。眠ってしまえたら忘れられるかもしれないのに、全然眠気はない。
 ああ、トイレ行きたい。手が自然とズボンの前に行く。出口をゆるく手で塞げば、ほんの少し尿意がましになる。でもそれもほんのひと時だけという事はよくわかっていて、早くしないと大変なことになってしまう。
 流石に布団を新しく買う予定はないはずだから。いや、あったとしても絶対に駄目だ。

 しばらくそうしていたけれど、尿意はどんどん強くなっていく。おしっこ、おしっこしたい。トイレ、行きたい。目を開けるけれど、寧々さんはまだ穏やかに眠っていて、時計を見ればまだ大した時間が経っていない。
 トイレ、行ってしまおうか。もうちょっとだけ我慢して、それでも起きなかったら行ってしまおうか。そっと行けば起こさないだろう。そう思いながら、もじもじ我慢を続けるけれど、既にじっとしていることが辛いほどに強い尿意を感じていた。
 おしっこ、おしっこしたい。おしっこ、おしっこ。添える程度だった手はいつの間にかズボンの上からぐにぐにと出口を揉んで、尿意を誤魔化していた。重い下腹部を撫でると大きく膨らんでいて、その内側にたっぷりとおしっこが溜まっているのがわかる。

 一晩の間にいっぱいになった膀胱は普段の何倍にも膨らんでいる。おしっこ、おしっこしたい。もう少しだけ我慢して、それでも寧々さんが起きなかったら行く。だから、もう少しだけ。
 ひくひくする出口をぐにぐに揉んで、時折身を捩って。おしっこ、おしっこ、おしっこ。おしっこしたい、トイレトイレトイレ。もう結構きつい。そろそろ行ってしまおうか。彼女はまだ起きない。そっと起きたら、多分大丈夫だろうし。
 そっと彼女の様子を窺う。まだ目を閉じている。下腹部で、熱く温められたおしっこが早く出せと暴れる。ああ、もう、結構やばい、かも。

 むず痒い尿意に身を捩っていると、突然、大きな波が襲い掛かる。ぶるっと体が震え、ひくひくと限界を訴える出口が開きそうになるのをぐっと堪え、指先で強く塞ぐ。やばいやばいやばい、やばい、おしっこ、おしっこおしっこおしっこ、おしっこっ……!
 あぁっ、と息に交じって声が漏れる。ああもうだめ、やばい、トイレトイレトイレっ……! 起き上がろうと思った時、閉じていた彼女の瞼がゆっくりと持ち上がった。

「……おはよ、織仁くん」
「あ……あ、おはよう、寧々さん」
 起きた。もしかしたら俺が起こしたのかもしれない。でも、もうどっちでもいい。トイレトイレトイレ、おしっこ、おしっこしたいっ。他のことを押し流す勢いの猛烈な尿意に、今はただトイレに行きたいとしか考えられない。
「今、何時?」
「六時半くらい、だと思う」
「早起きしちゃったね。二度寝する?」
 そう言って彼女は俺に身を寄せる。咄嗟にズボンの前から手を離したけれど、その瞬間、爆発しそうな尿意が体の中で暴れて、またすぐに押さえてしまう。

「あ、あの、寧々さん、あの」
「……ふふふ、おしっこしたいの?」
 頷くと、彼女は楽しそうに身を寄せる。ズボンの前を押さえる俺の手に触れ、手の甲を指先で撫でた。
「私が起きるまで我慢してた?」
「だって、起こすの、良くないし」
「気にしなくて良いのに。可愛いなあ」
 手の甲を撫でながら彼女は楽しそうに笑う。触れられた部分もむず痒いけれど、それ以上に焦れた尿意が苦しくて仕方ない。押さえても、身を捩っても、何をしても誤魔化せない尿意に、息が落ち着かなくなっていく。

「もう我慢できない?」
「できない、かも」
「もうちょっとだけ頑張る?」
 そんな意地悪を言われると、何の返事も出来ない。頑張りたいと思うけれど、もう本当に限界だというのも本当で。

 何も言えずに黙っていると、彼女がふふふと笑う。俺は笑い事じゃないくらい切羽詰まっているのに。
「ね、織仁くん。私もトイレ行きたい」
「寧々さん、も?」
「うん。結構行きたい。昨日トイレ行かずに寝ちゃったから」
 そういえばトイレに行かずに寝たのは彼女も同じだった。俺と一緒くらい行きたいのかな。彼女の頬が赤く染まっているのが、寝起きだからなのかそれとも違う理由なのか考えると、なんだかどきどきした。
「ね、トイレ、連れて行って?」
 連れていくってどうやって、と思ったけれど、単純についてきてという意味みたいだった。付いていくというか、むしろ、俺も行きたくてたまらなかった。

 一緒に布団から出て、リビングを横切りトイレに歩いていく。カーペットの上に広げられたタオルを見ると、昨日の自分の失態を思い知らされる。
 立ち上がった瞬間、大きく重くなった膀胱がさらに膨らんだように感じた。一気に出口に押し寄せるおしっこの圧力に、耐えきれずズボンの上から出口をぎゅうぎゅうと揉む。
 おしっこおしっこおしっこっ、おしっこしたい、おしっこ、ほんとにおしっこしたいっ……。一分もかからない、たった数歩の距離なのに、それですらじっとしていられない。
 ズボンの前を押さえたまま、腰は引けて、みっともない格好でよちよちと歩く。そんな姿を見て、彼女は楽しそうに笑っていた。

 もう本当に出てしまいそうになりながら、何とかトイレの前に辿り着く。その瞬間、気が緩んだのか、激しい尿意が駆け巡った。
 破裂しそうな膀胱が震える。中身を吐き出そうと出口を抉じ開けようとする。じゅわ、と固く閉じた出口の隙間から熱いおしっこが零れた。
 押さえているのに、我慢してるのに。は、は、と短い呼吸を繰り返して、おしっこが出口へ押し寄せる感覚に体が身震いする。ぺたぺた足踏みを繰り返し、手で強く出口をぐにぐにと揉む。

 おしっこおしっこおしっこ、おしっこしたい、もうむり、だめ、でちゃう、おしっこでる、ほんとに、もうっ……!
「ねねさん、おれ、もうっ……!」
 切れ切れの呼吸の合間に言えば、隣で彼女も小さく足踏みをしていることに気付いた。
「先、行っても良い?」
 その言葉にどう言えば良いのかわからない。
 本当に限界で、今、我慢出来ていることが不思議なくらいなのに。でも、我慢しているのは彼女もいっしょで。でも、でも絶対俺の方が我慢してる。絶対俺の方がおしっこしたい。でも、でも、でもっ……。

 頷いたのは、見栄なのか優しさなのか。自分でもよくわからない。
 ごめんねと彼女は呟いて扉を開けた。中に入って、ズボンと下着を下ろして、便器に座って。何故か彼女は扉を閉めなかった。
 俺と彼女が向き合う形になる。ああ、俺もはやく、トイレ、おしっこ、もう、ほんとに限界で、ほんとに、ほんとにもう。

 じゅうう、と熱い音が聞こえた。ぴちゃぴちゃと飛沫が散る音。はあと彼女の熱い息。
 気持ちよさそうな水音が響く。全身に悪寒が走る。ああ、あ、あ、やばい、おしっこ、おしっこっ、あ、あ、おしっこおしっこおしっこっ……! 水音がまるで呼び水のように、俺の体を刺激する。
 でる、でるでるでる、ほんとにもう、おしっこ、おしっこ、あ、あああっ……。

 ぶじゅ、と手の中が熱くなる。全身ががくがく震える。我慢しているのに、おしっこが弾丸のように噴き出す。体を曲げて、ぐちゃぐちゃに濡れた下着とズボンの上から、必死に出口を塞ぐ。
 込み上げる圧力に尿意を超えて痛みすら感じる。おしっこおしっこおしっこっ、ほんとに、もう、もうっ……!

 前屈みの体勢で顔を上げると、とろりとした表情の彼女と目が合う。ぴちゃぴちゃと聞こえ続けるおしっこの音。俺も、俺もおしっこ、もう、もうほんとにっ……!
「ねねさ、んっ、おれ、もう、おしっこっ……!」
「じゃあ、一緒にする?」
 そう言うと、彼女は下着とズボンを膝のあたりから床に落とした。そして、裸の両足を横に大きく広げた。
 しょろしょろと彼女の足の間からおしっこが出ているのが露わになる。それ以上に、俺の目はその手前に釘付けになった。彼女のおしっこが落ちる部分、彼女の足の間でぽっかりと口を開けた、白い陶器の便器。

 返事をする余裕もなかった。ぐちゃぐちゃのズボンと下着の前をひっぱり、反対の手で性器を引っ張り出す。じゅ、じゅう、と断続的におしっこを噴き出す性器を握りながら、飛び込むように彼女に近付く。
 深く座った彼女の手前、足の間に見える白い便器の受け皿に性器の先を向ける。じゅう、じゅ、じゅ、と限界を超えたおしっこが便器に落ちる。
 あ、と安堵の声が漏れた。同時に、出口をぐわっと押し広げた太い水流が、びちゃびちゃと激しい音を立てて便器に叩きつけられた。

 あ、ああ、ああぁっ……! 気持ち良さに頭が真っ白になった。おしっこ、おしっこでてる、やばい、気持ちいい。思いっきり出せる心地よさは昨日とは全く違う。快感に膝ががくがくと震えた。
「ふふ、気持ちよさそう」
「きもち、い、やばい……」
「私も、すごく気持ち良い。癖になりそう」
 じゅうじゅう、びちゃびちゃ。二つの水音が鳴り響く。狭い個室で、密着するようにしてひとつの便器におしっこしてる。変態的な行為だと思うけれど、そんなことより全身を駆け抜ける解放感と快感が強すぎて、頭がくらくらするほどだった。

 少しすると水音は一つになる。彼女のおしっこは終わったようだけれど、俺はまだまだ出そうで。
「ふふ、おしっこ、跳ねて当たってる」
「すみません、でも、まだ止まんないから、我慢して」
「いっぱい出るね。すごいすごい」
「寧々さんもいっぱい出てた」
「だって漏れちゃうかと思うくらい我慢してたもん。おねしょしてなくて良かった」
「俺がお世話するから、おねしょしても良いのに」
 そんなくだらない会話をしながらも、全然おしっこは止まらない。俺のお腹が空っぽになるまで、俺は彼女に見つめられたままおしっこを出し続けたのだった。

このサイト上にある画像・文章の複製・転載はご遠慮ください。
初出: 2020年2月1日 (pixiv・サイト同時掲載)  掲載:2020年2月1日

11
成人済の時々物書きです。 スカ、女攻め萌え。BLよりはNLやGLが好きです。
18歳以上ですか? ここから先は、成人向けの特殊な趣向の小説(女の子、男の子のおもらし等)を掲載しています。