先生、おしっこっ!帰り道編 前編

 田舎道をしばらく走り、久方ぶりに見たコンビニへ車を停める。自動ドアをくぐると、冷えた空気が一気に体を包み込み、温度差に身震いした。
 ミネラルウォーターを手に取る私の隣で、結子は紅茶のペットボトルを手に取っていた。それからお菓子のコーナーを見ていたので、何か買うのかと尋ねたが、彼女は首を振った。
 レジで会計を終え、結子がビニール袋を受け取ったところで、ふとお手洗いが目に入った。もうそろそろ高速に入るので、今済ませておいた方が良さそうだ。
「ちょっとお手洗いに行ってくるね。結子も行く?」
「ううん、大丈夫です。じゃあ、先に車に戻ってますね」
「本当に大丈夫?」
 つい口をついた問いかけに、結子は顔を顰めた。確かに気分の良い発言ではないとは思ったが、私が悪いとも思わなかった。
「大丈夫ですっ! 私、そんな子供じゃありませんっ」
 案の定、結子はぷりぷりと怒りを露わにする。
 正直、何度もピンチに陥って、何度もお漏らししていた子に言われても何の説得力もない。

 言い返したくなったが、むっとした表情を浮かべていたので言葉はそっと飲み込む。
「わかった。じゃあ、先に車戻っておいて」
 車の鍵を渡すと、結子はビニール袋をがさがさ鳴らしながら、自動ドアを通り、外へ出て行った。
 ……どうなっても知らないよ。声には出さずにその背中にそっと言葉を投げかける。当たり前だが返事はなかった。

 用を足し、店内に戻ったところで、ふと商品棚が目に入った。
 『ドライブのお供に』と大きくかかれたポップの下には、酔い止めの薬や眠気覚ましのドリンクが並んでいる。その片隅に携帯トイレと書かれた袋がひっそりと置かれていた。
 図らずも手を伸ばしかけて、先程の結子の台詞が頭を過る。彼女が大丈夫と言っていたのだから、私がこれ以上心配する必要もないか。あまり心配しすぎても、うっとおしいと思われるだろうし。

 巡る考えをかき消したのは、昨日の出来事だった。次から次へ思い出される結子の失態に、気付いた時には手が独りでに携帯トイレを掴んでいた。まあ、念のため。買ったからと言って使わなければならないわけじゃない。
 携帯トイレには500ミリリットル(2個入)と書かれている。……足りるかな。おしっこで満たされたビーカーが頭に浮かぶが、流石にあそこまでは我慢しないだろうと頭を振る。
 この際ついでだ。大きめのタオルと、女性用の下着も一緒に持ってレジへ向かった。何を想定しての買い物かは誰が見てもわかりそうなラインナップだ。湧き上がる恥ずかしさを『私が使うわけじゃないからね』と言い訳で誤魔化していると、店員は作業的にバーコードを読み取って無感情に金額を告げた。
 使わないかもしれないし、念のためだから。誰かへの言い訳を胸の中でしながら、私はお釣りと商品を受け取った。

 車に戻ると、結子は早速紅茶に口を付けていた。私が先程買った品物をさりげなく後部座席に置くと、不思議そうに目で追いかける。
「何を買ったんですか?」
「まあちょっと」
 彼女は訝しげな表情を浮かべたが、それ以上は詮索せずに再び紅茶を口にした。先ほど買ったばかりの紅茶はもう残り半分となっている。
「今から高速に乗るけど、用事はない?」
「はい、大丈夫です」
 さりげなくお手洗いを勧めたが、彼女には伝わらなかったようだ。もしくは伝わってはいるが、頑なに拒んでいるのか。
 結子は楽し気にラジオの音量を弄り、紅茶を口にする。そんなに飲んで、本当に知らないからね。私の胸中とは裏腹に、彼女はご機嫌な様子だった。

+++

 高速に乗り約二十分。
 車の速度が段々と落ちていき、前方との車の距離が狭まっていく。つい数分前までは全く見えていなかった車の背中が今は目前だ。
 しぶとくのろのろと進んでいたのも束の間、とうとう完全に停止する。
「止まっちゃいましたね」
 結子が呟きながらラジオのチャンネルを弄るがそれらしい情報は拾えない。一通りチャンネルをいじった後、彼女は電源を落とした。車の中がしんと無音になる。
 事故か、単なる渋滞か。前方にずらりと並んだ車の列にため息が漏れた。
「早く動くと良いなあ」
 前方を眺めながら、結子は残っていた紅茶を飲み干す。喉の渇きを覚えて、私もミネラルウォーターに口を付ける。彼女の空の紅茶とは裏腹に、私のミネラルウォーターはまだ八割は残っている。
「お水、飲む?」
 カーナビの下、二人の間にあるドリンクホルダーに並んだペットボトルを結子が眺めていたので、声をかける。彼女は「いえ」と小さく呟き、背もたれに体を預けた。

 どれくらい経ったか数えるのも面倒になった頃、彼女の異変に気付いた。相変わらず車はなかなか進まない。
 静かな車内で、呼吸の音が耳についた。不自然に長く息を息を吐く様子は、荒く高ぶりそうな呼吸を必死に抑えているように聞こえた。
 そっと隣を見ると、結子は背中を丸めて俯いている。白い頬は赤く染まり、伏せられた目は空を見つめている。
「大丈夫?」
 車酔いでもしたのだろうか。不安になり声をかけると、彼女は跳ねるように顔を上げ、弾かれたようにこちらを見た。
「酔った? 窓を開ける?」
「だ、大丈夫です」
「そう? 無理しないでね。なんなら後ろで寝てても良いから」
 彼女は小さく頷くと、再び視線を伏せた。
 彼女の視線の先、白いショートパンツから伸びる太股がぴたりと寄せられ、その横では両の手が手持無沙汰にそわそわと動いている。
 その様子に、ある光景が頭に浮かぶ。
 声をかけるべきかと考えたが、コンビニでの一件が私を意地悪にする。大丈夫と言ったのは他でもない彼女だ。
 前方を見たが、まだ車が動く様子はない。さて、どうしたものか。何かを握りたそうにもぞもぞと動く彼女の指を見ながら、後部座席に置いたビニールの中身の出番が近づいているのかもしれない、とひそかに感じた。

 空のペットボトルの横で、私のミネラルウォーターが残り半分程になった頃。
「……せ、せんせ」
 か細い声が聞こえた。隣を見ると、結子が涙の溜まった瞳でこちらを見ていた。
「どうしたの?」
「車、ま、まだなのかな」
「そうみたいだね。事故かなあ」
 彼女の小さな唇が何かを言いたそうに震えていた。
 太股は隙間なくぴたりと寄せられ、くねくねと擦り合わされている。両手はショートパンツの裾をぎゅっと握り、小刻みに震えていた。
「あの、せ、せんせ、」
「どうしたの?」
 意地悪とはわかっていたが、敢えて聞き返す。彼女が何を伝えようとしているか、その様子を見れば誰だってわかっただろう。
「あ、あの、ど、どうしよう、せんせ」
「だから、どうしたの?」
「う、あ、その、わたし、その、」
 彼女は口の中でもごもごと言葉を転がす。その間にも太ももは落ち着きなく擦りあわされている。

 しばし言葉を転がした後、彼女の両手が太ももの上に乗り、力強く握りしめられた。
「そ、その、わたし、お……、ぉ、お……、おしっこ、いきたくなっちゃった……」
 彼女は震えた声で言った。
「さっきコンビニでトイレ行かなかったでしょ?」
「あの時は全然大丈夫だったんです。で、でも、急に行きたくなってっ……!」
 そんなに飲むからでしょ、と言いかけて、言葉を飲み込む。落ち着きない様子は余裕がありそうには見えなかった。今、彼女を責めたところでどうしようもない。
「サービスエリアまで我慢できる?」
 彼女はどちらの返事もせず、困った顔でただこちらを見る。『我慢できないかもしれない』と、その表情が何より明確に答えを返していた。

 ぶるっと大きく身震いして、結子は肩を竦める。両手はいつの間にか太ももを強く擦っていた。
「せ、せんせぇ、どうしよ……」
 落ち着きなく太ももを擦る手が、足の間に差し入れられ、とうとうその奥をぎゅっと押さえた。
「ど、どうしよ、ぉ、おしっこっ……おしっこしたい……」
 彼女はまた大きく震えた。じっとしていられないのだろう、お尻を浮かせ、両手が下から持ち上げるようにショートパンツの股の部分を押さえる。
「や、だめ、おしっこ、おしっこしたい、」
「だからコンビニでトイレ行きなさいって言ったでしょ?」
「ごめんなさい、」
「もう我慢できない?」
 言葉を発することもつらいのか、結子はこくこくと頷く。
 体を前に倒し、体を二つに折り曲げて、両脚は休むことなく前後にもじもじと動く。その間に挟まれた両手はショートパンツの中央をぐにぐにと揉んでいた。本当に限界のようだった。

 仕方ない。
 体を乗り出して、後部座席から先程のビニール袋を取り出す。その中から携帯トイレを取り出して、封を開けた。
「そ、それ、なんですか?」
「携帯トイレ。これにおしっこしちゃいなさい」
 結子は一瞬だけ固まったが、すぐに頷いた。なんでもいいからおしっこがしたいと、表情がそう言っていた。
「あ、あ、ん、んん、はやく、はやくせんせ、」
「もうちょっとだけ我慢」
「だめ、もうだめ、でちゃう、せ、せんせ、おねがい、でちゃう、でちゃうよ、」
「はいはい、もうちょっと」
「あ、あぁっ、あ、もうむり、むり、おしっこ、おしっこでちゃうっ……」
 携帯トイレの封を開けると、縦長の青いビニール袋が二つ、そして凝固材の入った袋が二つ入っている。焦る結子の隣で、携帯トイレってこうなってるのか、なんて流暢に考えた。
「でちゃう、でちゃうよ、せんせ、おしっこでちゃうっ」
 隣で荒く息をする結子に急かされ、凝固材を一つ開ける。注ぎながら様子を伺うと、彼女は既にショートパンツのボタンを外していた。
 ショートパンツの中で、両手がぐにぐにと出口を押さえる。くしゃくしゃに顔を顰めている様子は、言葉こそないものの、もう一刻の猶予もないと強く訴えかけている。

 やっと用意ができた携帯トイレを渡すと、彼女の表情が一瞬だけ明るくなった。結子は片手で携帯トイレを持ったまま、お尻を前にずらして座席に浅く座る。
「あ、あ、あ、でちゃう、だめ、でちゃう、でちゃうっ」
 片手が下着を引き下ろし、隙間に携帯トイレが差し入れられる。瞬間、じゅおーっと野太い水音が車内に響きわたった。
「んあ、は、あぁっ……」
 携帯トイレに、おしっこが勢いよく注ぎ込まれていく。結子は目を閉じ、小さく開かれた口から吐息を漏らしていた。開放感に酔いしれているようだった。

 じょぼじょぼと注がれるおしっこの音を聞きながら、私は二つ目の携帯トイレに凝固材を注いだ。彼女のことだ。一つで足りるはずがない。
 案の定水音は収まらない。結子は手元で大きく膨れた携帯トイレに息を飲み、慌てたように体を起こした。。
「ぅあ、あ、どうしよ、いっぱいになっちゃう、」
「はいはい、もう一個どうぞ」
 二つ目を差し出すと、彼女は片手でそれを受け取った。さて、どうするのかと見ていると、結子は歯を食いしばっておしっこを止めようとする。だが、完全には止められないようで、じょろ、じょろと時折おしっこが零れ出ている。
「うぁ、あっ、あぁっ、あああ、」
 ぱんぱんに膨れた携帯トイレを片手で持ったまま、まだ何も入っていない新しい携帯トイレを素早く差し入れる。一瞬だけ途切れたおしっこの音が再び、じょぼぼぼ、と車内に流れた。
 毎度のことながら思うが、これだけ出ればさぞ気持ちいいことだろう。大きく息をつく結子の顔は快感が滲んでいて、蕩けてしまいそうだった。

 二つ目の携帯トイレもぱんぱんに膨らませ、結子は大きく息を吐いた。500ミリリットル(2個入)はあっと言う間に彼女のおしっこで満たされてしまっていた。
 一緒に買ったタオルと下着を鞄に移し、空になったビニール袋を結子に差し出した。念のためにと買ったものを、まさか本当に使う羽目になるとは。

 車の列を眺めながら、コンビニでの自分の判断を褒めていると、ばさばさばさとビニール袋が暴れる音がした。
 驚いて隣を見ると、赤い顔をした結子がビニール袋を足の間に当てている。白いビニール袋の中に、黄色いおしっこが注ぎ込まれているのがうっすらと見えた。
「うぁ、あっ、ごめんなさい、おしっこ、まだ……」
 勢いの落ち着いた水流がビニール袋を内側から叩く。我慢しすぎただろうか。せせらぎのような細い音を奏でながら、結子は細く息を吐く。
 おしっこする為に渡したんじゃないんだけど。驚きを通り越して呆れる私の隣で、結子は必死に息を潜めながら、おしっこを続ける。
「もう、それ以上は袋ないよ?」
「そんなには出ませんっ……」
 どの口が言っているのか。携帯トイレ二つをいっぱいにした後に言う言葉じゃないだろうとこっそり思った。

 小さなビニールを半分ほど満たして水音は止まった。彼女は熱く長い安堵の息を吐く。
「落ち着いた?」
 小さく頷いた結子の足下には、大きく膨れた携帯トイレが二つ。そして、足の間にはずっしりと重そうなビニール袋。
「せんせ……ありがと、ございます」
「他に言うことは?」
「あ、あんまり行きたくなくても、ちゃんとトイレに行きます……」
 本当にわかっていれば良いのだけれど。
 結子はおしっこの入ったビニール袋の口を何重にも縛ると、そろそろと床に置いた。そして、お尻を持ち上げると、ショートパンツと下着を履き直した。

このサイト上にある画像・文章の複製・転載はご遠慮ください。
初出:2016年5月12日(pixiv) 掲載:2022年7月30日

5
成人済の時々物書きです。 スカ、女攻め萌え。BLよりはNLやGLが好きです。
18歳以上ですか? ここから先は、成人向けの特殊な趣向の小説(女の子、男の子のおもらし等)を掲載しています。